
メル美『舞姫』って、教科書で読んだけど「豊太郎ひどい!」って思った記憶しかないかも。

プレ男オレは文語でむずかしくて、話がよくわからなかった…。どんな話だったっけ?
こんにちは、Dr. Taro です。 「大人の教養」の愛憎の歴史と文学シリーズ、今回は森鷗外『舞姫』です。青空文庫で全文を読むことができます。
森鷗外ってどんな人?

森鷗外(軍医の軍服姿)。出典:国立国会図書館「近代日本人の肖像」(https://www.ndl.go.jp/portrait/ )
国立国会図書館の「近代日本人の肖像」によると、
- 1862年(文久2年)生まれ、1922年(大正11年)没。父は津和野藩の医師
- 東京大学医学部を卒業して軍医になり、明治17〜21年(1884〜1888年)にドイツに留学。のちに陸軍軍医総監という軍医の最高の地位につきました
- 仕事のかたわら、小説家・評論家・翻訳家として活躍。代表作に『舞姫』(1890)、『うたかたの記』、『雁』、『阿部一族』、『山椒大夫』などがあります

メル美お医者さんで、しかもドイツ留学の経験があるんだ。『舞姫』もドイツが舞台だよね。
どんなお話?
『舞姫』は、1890年(明治23年)1月、雑誌『國民之友』に発表されました。主人公が帰国の船の中で、ドイツでのできごとを思い出す形で語られます。
ベルリンでの出会い
- 主人公の太田豊太郎は、大学の法学部をいつも一番の成績で出たエリート官僚。官長の命令でベルリンに留学します
- ある夕方、古い教会の前で泣いていた少女エリスを助けます。エリスは、十分な教育を受けられず、15歳から踊り子として働く貧しい娘でした
- 豊太郎が本を貸し、エリスは言葉や文字を覚えて、2人は師弟のように、そして恋人のようになっていきます
免官と、母の死
- 同郷の日本人が、豊太郎が「芝居に出入りして女優と交わっている」と官長に告げ口し、豊太郎は官職を解かれてしまいます(免官)
- 同じころ、故郷の母が亡くなった知らせが届きます
- 行き場をなくした豊太郎を、エリスが救い、2人は一緒に暮らしはじめます。やがてエリスは身ごもります

プレ男仕事もお母さんも失って、そばにいてくれたのがエリスだったんだ…。
親友・相沢と、大臣
- 親友の相沢謙吉が、大臣(天方伯)の秘書官としてベルリンにやってきます。相沢は豊太郎に、エリスとの関係を断ち、才能を示して名誉を取りもどせとすすめます
- 大臣から「一緒に日本へ帰らないか」と問われた豊太郎は、ここで断れば国も名誉も失うと思い、「承はり侍り(うけたまわりました)」と答えてしまいます
- 「帰ってエリスに何と言おう」——豊太郎は、心が乱れたまま雪の夜の街を歩き、倒れてしまいます
エリスの叫び
- 豊太郎が寝こんでいる間に、相沢から、豊太郎が帰国を約束したことを聞かされたエリスは、「我豊太郎ぬし、かくまでに我をば欺き玉ひしか(豊太郎さま、ここまで私をだましていらしたのですか)」と叫んで倒れます
- エリスは心を病み、医師からは「治る見込みはない」と告げられます。子どものためのおむつだけを手放さず、見ては泣くのでした
- 豊太郎は、相沢と相談して、エリスの母にわずかな生活費を渡し、生まれてくる子どものことを頼んで、大臣とともに日本へ帰ります
最後の一文
嗚呼、相沢謙吉が如き良友は世にまた得がたかるべし。されど我脳裡に一点の彼を憎むこゝろ今日までも残れりけり。
(ああ、相沢謙吉のような良い友は、世の中にまたと得がたいだろう。けれども、私の頭の中には、ひとかけらの彼を憎む心が、今日までも残っているのだ。)
- 自分を出世の道にもどしてくれた恩人でありながら、エリスとの別れを決定づけた人でもある相沢。豊太郎の感謝と憎しみが入りまじった一文で、物語は終わります

メル美決めたのは自分なのに、相沢を憎む気持ちが残ってる…。豊太郎の弱さが、いちばん人間らしいのかも。
大人になって読むと
- 学生のころは「豊太郎はひどい」で終わっていた人も、大人になると、仕事か恋か、家や国の期待、断れない弱さなど、豊太郎の迷いに自分を重ねるかもしれません
- 一方で、妊娠したエリスを置いて帰るという結末は、今読んでも重いものです。責任のとり方を考えさせられる物語でもあります

『舞姫』は、1890年に発表された森鷗外の小説です。ベルリンの踊り子エリスと、出世を選んだ豊太郎の物語で、青空文庫で読めます。
まとめ
- 森鷗外は軍医で小説家。1884〜1888年にドイツ留学
- 『舞姫』は1890年発表。ベルリンが舞台
- 豊太郎は免官と母の死のあと、踊り子エリスと暮らし、エリスは身ごもる
- 親友相沢のすすめで、帰国と出世を選ぶ。エリスは「かくまでに我をば欺き玉ひしか」と叫んで倒れる
- 最後は、相沢への感謝と憎しみの一文。鷗外のもう1つの恋の物語は『雁』
参考文献
- 国立国会図書館. 森鴎外|近代日本人の肖像. https://www.ndl.go.jp/portrait/datas/342 (閲覧日:2026年9月29日)
- 森鴎外. 舞姫(初出「國民之友」1890年1月). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000129/card2078.html (閲覧日:2026年9月29日)
- 国立国会図書館. 近代日本人の肖像「森鴎外」. https://www.ndl.go.jp/portrait/datas/342 (閲覧日:2026年10月2日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。