
メル美森鷗外の『雁(がん)』って、東大の近くの「無縁坂」が舞台なんだって。

プレ男『舞姫』の鷗外だよね。こんどはどんな恋の話?
今回は、森鷗外の小説『雁』です。青空文庫の原文(底本:新潮文庫『雁』)で読みました。
作品について
| 作品 | 『雁』 |
| 作者 | 森鷗外 |
| 発表 | 「スバル」に1911年(明治44年)9月から1913年(大正2年)5月まで連載。最後の3章(弐拾弐〜弐拾肆)は、1915年(大正4年)5月、籾山書店の単行本で |
| 時代 | 明治13年の出来事、と語り手が書いている |
| 語り手 | 「僕」。東京大学の鉄門の向かいの下宿「上条」で、主人公と壁ひとつへだてて住んでいた学生 |
| 舞台 | 本郷の無縁坂、上野の不忍池 |
- 語り手は、話の半分は岡田と親しくしていて見たこと、もう半分は岡田が去ったあとに、お玉と知りあって聞いたことだ、と最後に書いています
岡田と、窓の女
- 主人公の岡田は、語り手より1学年下の学生(下宿「上条」に住むのは、たいてい医科大学の学生だった、と書かれています)。顔立ちがよく、毎日の散歩の道すじは決まっていて、さびしい無縁坂をおりて不忍池のほうへ歩いていきます
- ある9月の夕方、無縁坂で、湯帰りの女が寂しい家に入るのを見かけます。2日ほどして、その家の前を通ると、窓の万年青(おもと)の鉢のうしろから、白い顔が浮かびあがって、岡田にほほえんでいました
- それからは、通るたびに女の顔を見るようになり、2週間ほどたったある夕方、岡田は思わず帽子をとって会釈します。すると女の白い顔がさっと赤くそまり、さびしいほほえみがはなやかな笑顔になりました

プレ男言葉はかわさないのに、会釈だけでドキドキする感じ…!
お玉と末造
- 窓の女はお玉。もとは大学の小使い(用務員)で、いまは高利貸しをしている末造に、かこわれて暮らしていました。末造には妻も子もいました
- お玉は、窓の前を通る岡田に、だんだん心をよせていきます
「きょうこそ」と決めた日
- ある日、末造が出かけて留守になるとわかったお玉は、女中の梅を実家に帰して、岡田に声をかけようと心を決め、家の前で待っていました
- ところがその日、語り手の下宿の夕食に、語り手がどうしても苦手な青魚(鯖)の味噌煮が出ます。「焼いたのなら随分食うが、味噌煮は閉口だ」
- 語り手は夕食をやめて外へ出ることにし、岡田をさそいます。岡田は、その夜に語り手へ話そうと思っていたことがありました。卒業を待たずに、ヨーロッパへ洋行することに決まったのです
不忍池の雁
- 2人が不忍池に来ると、友人の石原がいて、池の雁を指さします。「あれまで石がとどくか」
- 岡田はためらいます。「あれはもう寝るのだろう。石を投げつけるのはかわいそうだ」。でも石原にけしかけられ、「それなら僕が逃がしてやる」と石を投げると、1羽の雁が首をぐたりとたれました
- 暗くなってから石原が池に入って雁をとり、3人は、交番の前を通らないといけない帰り道、雁を岡田の外套の下にかくして歩きます
坂の中ほどの女
- 無縁坂の四辻の交番を通りすぎたとき、語り手は、坂の中ほどに立って、こちらを見ている女に気づきます。お玉でした
- 岡田の顔はひときわ赤くなり、帽子にさりげなく手をかけます。お玉の顔は石のようにかたまり、美しい目の底には、言いようのないものがありました
- 2人は石原といっしょで、岡田はお玉に声をかけることができませんでした。語り手がもう一度ふり返ったとき、もう女の姿は見えませんでした
- 翌日、語り手が大学から帰ると、岡田はもう下宿にいませんでした
「一本の釘から大事件が」
- 鷗外は書いています。「一本の釘から大事件が生ずるように、青魚の煮肴が上条の夕食の饌に上ったために、岡田とお玉とは永遠に相見ることを得ずにしまった」
- 語り手は、物語を書きおえて指を折ってかぞえると、もう35年がたっていた、と結んでいます

メル美鯖の味噌煮ひとつで、運命がかわっちゃうなんて…。せつない!

森鷗外の『雁』は、「スバル」に1911年から連載されました。語り手は、下宿の夕食に出た鯖の味噌煮のせいで、岡田とお玉は永遠に会えなくなった、と書いています。
まとめ
- 『雁』は、森鷗外の小説。1911年から「スバル」に連載、1915年に単行本
- 明治13年、学生の岡田と、無縁坂の窓の女お玉は、会釈だけをかわす仲に
- お玉が声をかけようと決めた日、語り手が鯖の味噌煮をきらって岡田を外へさそった
- 岡田は洋行が決まっていた。不忍池で投げた石が雁にあたり、帰り道は石原といっしょ
- 坂の中ほどで待つお玉に、岡田は声をかけられず、翌日には下宿を去った
- 鷗外の作品は『舞姫』、明治の恋の文学は『不如帰』、『野菊の墓』、田山花袋『蒲団』もどうぞ
参考文献
- 森鴎外. 雁(初出:「スバル」1911年9月〜1913年5月。弐拾弐〜弐拾肆は籾山書店『雁』1915年5月。底本:雁、新潮文庫). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000129/card45224.html (閲覧日:2026年10月5日)
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