
メル美樋口一葉って、前の五千円札の人だよね。『たけくらべ』って、どんなお話なの?

プレ男名前は知ってるけど、昔の言葉で難しそう…。
こんにちは、Dr. Taro です。 「大人の教養」の愛憎の歴史と文学シリーズ、今回は樋口一葉『たけくらべ』です。
樋口一葉ってどんな人?

樋口一葉。出典:国立国会図書館「近代日本人の肖像」(https://www.ndl.go.jp/portrait/ )
国立国会図書館の「近代日本人の肖像」によると、
- 1872年(明治5年)、東京生まれ。本名は奈津(なつ)
- 父が亡くなり、家族の生活を支えることになります。半井桃水(なからいとうすい)に弟子入りして小説を書きはじめました
- 生活が苦しく、下谷区龍泉寺町(今の台東区竜泉)で、荒物や駄菓子を売る店を開いていた時期もあります。このあたりが、『たけくらべ』の舞台です
- 『大つごもり』(1894年)、『にごりえ』『たけくらべ』(1895年)などを書き、日記も残しました
- 1896年(明治29年)、肺結核のため、貧しさのなかで亡くなりました。24歳でした

メル美24歳で亡くなったんだ…。しかも、自分が暮らした町が舞台なんだね。
どんなお話?
- 舞台は、吉原遊郭のそばの町、大音寺前。物語は「廻れば大門の見返り柳いと長けれど」という、吉原の入り口の描写から始まります
- 主人公の美登利(みどり)は、大黒屋の寮に住む少女。姉は吉原で全盛の遊女で、美登利もまわりからちやほやされています。明るく、気の強い子です
- もうひとりは、寺の息子の信如(しんにょ)。おとなしく勉強好きで、やがてはお坊さんになることが決まっています
- 2人は同じ学校に通い、ひそかに意識しあっているのに、うまく言葉をかわせないまま、すれちがっていきます
名場面:雨の日の紅い布切れ
- 雨の日、信如は美登利の住む大黒屋の寮の門の前で、下駄の鼻緒を切ってしまいます
- 家の中からそれを見た美登利は、「切れを遣つても宜う御座んすか(布切れをあげてもいい?)」と母にたずね、友禅ちりめんの布切れを持って飛び出します。でも、相手が信如だと気づいたとたん、顔が赤くなり、胸がどきどきして、声をかけられません
- 美登利は布切れを門の外へ投げて、家にもどります。信如は、雨にぬれた紅入りの友禅が足もとに散っているのを見ながら、手に取ることができず、羽織のひもで鼻緒をしばって立ち去ります

プレ男好きなのに、布切れひとつ受け取れない…。切ない!
最後の朝の水仙
- 物語の終わり、美登利は急におとなしくなり、まわりの子と遊ばなくなります。大人の女性として、姉と同じ道へ進むことが近づいたことが、ほのめかされています
- そんなある霜の朝、美登利の家の格子門の外から、水仙の造花がさし入れられていました。だれが置いたのかはわかりません。でも美登利は、なぜかなつかしい気持ちで、それを一輪ざしに飾ります
- あとで聞いた話では、その翌日は、信如がお坊さんになるための学校へ旅立つ日でした

メル美水仙を置いたのは、きっと…。何も言わないまま、それぞれの道へ行っちゃうんだね。

『たけくらべ』は、24歳で亡くなった樋口一葉が、自分の暮らした町を舞台に書いた物語です。青空文庫で、無料で読むことができます。
「たけくらべ」の歴史的な価値
文壇の大御所が「まことの詩人」と絶賛
- 「たけくらべ」は、はじめ雑誌『文学界』にとぎれとぎれに連載された作品でした。それが、当時の一流文芸雑誌『文芸倶楽部』に一括で掲載されると、文壇の大御所だった森鷗外や幸田露伴が大絶賛し、一葉は一躍、有名な女性作家になりました(台東区立一葉記念館)
- 鷗外は、自分が出していた雑誌『めさまし草』で、露伴・斎藤緑雨と3人で新作を批評する「三人冗語」を連載していました。若い作家たちがおそれるほど辛口の批評で知られていましたが、「たけくらべ」には「此人にまことの詩人といふ称をおくることを惜しまざるなり」(この人に「本当の詩人」という呼び名を送ることを惜しまない)と書きました
- 台東区の文化ガイドは、女性作家の活躍がめずらしかった当時、鷗外は性別にとらわれない批評をしたと紹介しています。鷗外は「三人冗語」に一葉を加えようと、弟を何度も誘いに行かせたほどでしたが、一葉は断りました。一葉が病気でたおれたときには、医師を往診に行かせています
一葉自身の暮らしから生まれた物語
- 国立国会図書館によると、一葉は父の死後、一家の生活を支えるため小説を書き、生活が苦しく、下谷区龍泉寺町で荒物や駄菓子を売る店を開いた時期もありました。「たけくらべ」の舞台は、この竜泉(今の台東区)です
- 一葉は肺結核のため、貧しさのなかで亡くなりました
120年以上、読みつがれる
- 一葉記念館は、「たけくらべ」を「発表から120余年を経た現在も読み継がれる不朽の名作」とし、絵画、映画、児童書、漫画など、さまざまな形に広がってきたことを紹介しています
- 台東区立一葉記念館は1961年(昭和36年)に開館しました
デートで話すなら
- 「雨の日の紅い布切れ」と「最後の水仙」は、言葉にしない恋の名場面として話しやすいエピソードです
- 台東区竜泉には、台東区立一葉記念館があります(台東区竜泉3-18-4、9時〜16時30分・入館は16時まで、月曜休館、大人300円)。吉原の歴史は、吉原の歴史の記事もどうぞ
まとめ
- 樋口一葉は、1872〜1896年。生活を支えながら小説を書き、24歳で亡くなった
- 『たけくらべ』は、吉原のそばの町で育つ美登利と、寺の息子信如の初恋の物語
- 名場面は、雨の日の紅い友禅の布切れと、最後の朝の水仙の造花
- 青空文庫で読める
- あわせて読みたい:樋口一葉『にごりえ』、与謝野晶子『みだれ髪』、高村光太郎『智恵子抄』
参考文献
- 国立国会図書館. 樋口一葉|近代日本人の肖像. https://www.ndl.go.jp/portrait/datas/315 (閲覧日:2026年9月29日)
- 樋口一葉. たけくらべ(初出「文学界」1895〜1896年). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000064/files/56041_54765.html (閲覧日:2026年9月29日)
- 台東区立一葉記念館. 利用案内. https://www.taitogeibun.net/ichiyo/riyou/ (閲覧日:2026年9月29日)
- 台東区. 一葉記念館 企画展「たけくらべ」入門 開催のお知らせ. https://www.city.taito.lg.jp/event/kanko/takekurabe.html (閲覧日:2026年10月2日)
- 台東区. 台東文化ガイドブック 台東区ゆかりの巨匠たち 森鴎外(三人冗語と樋口一葉). https://www.culture.city.taito.lg.jp/bunkatanbou/topics/famous_persons/ogai/japanese/page_03.html (閲覧日:2026年10月2日)
- 国立国会図書館. 近代日本人の肖像「樋口一葉」. https://www.ndl.go.jp/portrait/datas/315 (閲覧日:2026年10月2日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。