
メル美樋口一葉って、『たけくらべ』の作者だよね。『にごりえ』も有名なんだって。

プレ男「にごりえ」って、にごった入り江?どんな話なんだろう。
今回は、樋口一葉の短編『にごりえ』です。青空文庫の原文(底本:新潮文庫『にごりえ・たけくらべ』)で読みました。最後は悲しい結末をむかえる作品です。
作品と作家
| 作品 | 『にごりえ』 |
| 作者 | 樋口一葉(1872年5月2日〜1896年11月23日) |
| 初出 | 「文芸倶楽部」1895年(明治28年)9月号 |
| 構成 | 一〜八の8つの章 |
| 舞台 | 新しくひらけた町(新開)の、銘酒屋「菊の井」と、町はずれの長屋 |
- 銘酒屋は、表に「御料理」の看板をかかげ、棚に酒の瓶をならべて、女たちが店先で男の客をよびこむ店として描かれています
お力:菊の井の売れっ子
- 「おい木村さん信さん寄つてお出よ」——物語は、店先で客をよびとめるお力の声から始まります
- お力は菊の井でいちばんの人気者。気前よく祝儀をまきちらし、陽気にふるまいます
- なかまのお高は、お力に源七のことを話します。源七はかつてのなじみ客で、いまは落ちぶれてしまった男。お力は「それは昔しの夢がたりさ」と、もう忘れたと言います
結城朝之助にだけ見せた本音
- ある雨の日、お力は通りがかった山高帽子の30歳くらいの男を、袂にすがって店へよびこみます。男は結城朝之助。「自分は道楽者」と名のりながら、どこかまじめなところのある人でした
- 朝之助は週に2、3度通うようになり、お力も、3日来ないと手紙を出すほどになります
- ある夜、お力は朝之助に、自分の本音を打ち明けます。「泥の中の蓮とやら、悪業に染まらぬ女子があらば、繁昌どころか見に来る人もあるまじ」
- 「可愛いの、いとしいの、見初ましたのと出鱈目のお世辞をも言はねばならず」。ほんとうは、九尺二間の長屋でも、決まった夫にそって身を固めたいと思うこともある。でも、それができない——
- お力は紅の手ぬぐいを顔におしあてて、しばらく泣きつづけ、それから「気違ひは親ゆづりで、折ふし起るのでござります」と、さびしく笑いました

プレ男いつも陽気なお力が、ほんとうはこんなにつらかったなんて…。
源七とお初と太吉郎
- 町はずれの細い路地、九尺二間の長屋に、もと布団屋だった源七が、妻のお初(28か29歳)と、息子の太吉郎と暮らしています。源七は、いまは落ちぶれた身の上です
- 源七は仕事にも身が入らず、去年の盆にお力とそろいの浴衣で蔵前へお参りしたことを思い出しては、横になってばかり
- ある夕方、太吉郎が「菊の井の鬼姉さんがくれた」と、上等なカステラの袋をかかえて帰ってきます。お初は顔色を変え、お菓子を捨ててしまいます
- それを見た源七は怒り、お初に離縁を言いわたします。お初は「モウいひませぬ、モウいひませぬ」と泣いてあやまりますが——

メル美いちばんかわいそうなのは、お初さんと太吉郎くんかもしれない…。
盆のあとの、2つの棺
- 最後の章は、こう始まります。「魂祭り過ぎて幾日、まだ盆提燈のかげ薄淋しき頃、新開の町を出し棺二つあり」
- 1つは駕籠で、1つはかつがれて。駕籠は菊の井の隠居所から、しのびやかに出ていきました
- 町の人のうわさはさまざまです。「とんだ運のわるいつまらぬ奴に見込れて可愛さうな事をした」という人。「イヤあれは得心づくだ」という人。2人がお寺の山で立ち話をしていたのを見た、という人も
- 一葉は、何があったのかをはっきりとは書きません。「諸説みだれて取止めたる事なけれど」と書き、お寺の山からときどき人魂のような光るものが飛ぶのを見た人がいる、という一文で物語を閉じます

樋口一葉の『にごりえ』は、1895年(明治28年)9月の「文芸倶楽部」に発表されました。一葉はその翌年、1896年11月23日に亡くなっています。
まとめ
- 『にごりえ』は、樋口一葉の短編。1895年(明治28年)9月「文芸倶楽部」初出
- 新開地の銘酒屋「菊の井」の売れっ子お力は、客の前では陽気。でも結城朝之助にだけ「出鱈目のお世辞をも言はねばならず」と本音を打ち明けた
- お力のかつてのなじみで、いまは落ちぶれた源七と、妻お初、息子太吉郎の暮らしも描かれる
- 盆のあと、町から2つの棺が出ていく。何があったかは、うわさとしてしか語られない
- 一葉の作品は『たけくらべ』、『十三夜』、明治の初恋小説は伊藤左千夫『野菊の墓』、明治の恋の文学は泉鏡花『外科室』、時代の背景は吉原の歴史もどうぞ
参考文献
- 樋口一葉. にごりえ(初出:「文芸倶楽部」1895年9月号。底本:にごりえ・たけくらべ、新潮文庫). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000064/card56042.html (閲覧日:2026年10月5日)
- 青空文庫. 作家別作品リスト:樋口一葉(生年・没年). https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person64.html (閲覧日:2026年10月5日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。