
プレ男『夫婦善哉』って、大阪の夫婦の話でしょ?「めおとぜんざい」って食べ物の名前なの?

メル美そう、最後に出てくるお店の名前なんだ。そこまでが、なかなか大変な道のりなんだよ。
今回は、織田作之助の小説『夫婦善哉(めおとぜんざい)』です。青空文庫の原文(底本:ちくま日本文学全集『織田作之助』筑摩書房。初出は『海風』)で読みました。作品の末尾には「昭和十五年八月」とあります。
※この話には、夫婦げんかでの暴力や、命を絶とうとする場面がえがかれています。
一銭天婦羅屋の娘、蝶子
- 蝶子は、借金取りがいつも出入りする路地で、一銭天婦羅を揚げる種吉と、しっかり者のお辰のあいだに生まれました
- 女中奉公に出たものの、冬の朝、店先をそうじする娘の手があかぎれて血がにじんでいるのを見た種吉は、そのまま連れもどします
- 蝶子は17歳で北新地の芸者に。声自慢で、どんなお座敷でも思いきり声をはりあげる、陽気な「はっさい(お転婆)」でした
若旦那・柳吉と「うまいもん屋」
- なじみの客の維康柳吉は、化粧品問屋の若旦那。31歳で、妻も4歳の子もいる人でした
- 柳吉は「うまいもんは何といっても南に限る」と言い、蝶子を一流の店ではなく、安くてうまい店へつれて歩きます。作品には、しる市のどじょう汁、出雲屋のまむし、たこ梅のたこ、正弁丹吾亭の関東煮、自由軒のライスカレーなど、大阪の店の名前がつぎつぎ出てきます
- 「ど、ど、ど、どや、うまいやろが」という柳吉の講釈を聞きながら食べると、なるほどうまかった、と書かれています

メル美高級なお店じゃなくて、安くてうまい店めぐり。こういうデート、ちょっといいね。
駆け落ちと、ヤトナ芸者
- 柳吉は父親から勘当され、蝶子と駆け落ちします。東京で集金し、熱海に行ったところで関東大震災にあい、二人は大阪へ逃げ帰りました
- 二人は黒門市場の路地裏の2階で暮らしはじめます。働かない柳吉のかわりに、蝶子は宴会や婚礼に出張する臨時雇いの芸者「ヤトナ」になって稼ぎました
- 夜中に帰ると、柳吉は二昼夜かけて山椒昆布を煮ていて、「どや、ええ按配に煮えて来よったやろ」。蝶子はそんな柳吉に、ひそかに恋しさを感じながらも、口では「なんや、まだたいてるのんか」と言うのでした
- 柳吉は20歳の蝶子を「おばはん」とよぶようになります
貯めては、使われる
- 蝶子はチラシをとじて家計簿をつけ、ヤトナのもうけを貯金します。ところが柳吉は、その貯金をすっかりおろして遊んでしまいます
- 帰ってきた柳吉を、蝶子は突きたおして頭をたたきますが、ひとりで自由軒のライスカレーを食べていると、ふと甘い気持ちがわいて、帰って「阿呆んだら」とくちびるを寄せるのでした
- そのあとも、二人は剃刀屋、関東煮屋「蝶柳」、果物屋と店を開いては、柳吉の遊びや病気で手放すことをくりかえします

プレ男柳吉、ダメすぎる…。蝶子はなんで別れないんだろう。
「天下晴れての夫婦」を夢見て
- 蝶子の願いは、柳吉を一人前にして、柳吉の父親に「えらい女だ」と認めてもらい、天下晴れての夫婦になることでした
- 柳吉が重い病気で入院したとき、見舞いに来た柳吉の妹は、「姉はんの苦労はお父さんもこの頃よう知ったはりまっせ」と言います。蝶子は、それを本当だと思いたかったのでした
- 芸者時代の友だちに助けられて開いた「サロン蝶柳」は繁盛します。柳吉の父親が危篤になったとき、蝶子は二人分の紋付をこしらえて知らせを待ちました
- ところが柳吉は、父の死を電話で伝え、「お前は来ん方がええ。来たら都合悪い」と言います。追いつめられた蝶子は、命を絶とうとして、助けられました
法善寺の「めおとぜんざい」
- 柳吉はしばらく姿を消しましたが、ひょっこり帰ってきて、「どや、なんぞ、う、う、うまいもん食いに行こか」
- 二人は、法善寺境内の「めおとぜんざい」へ。ぜんざいをたのむと、一人に二杯ずつ運ばれてきます
- 柳吉は、「一杯山盛にするより、ちょっとずつ二杯にする方が沢山はいってるように見えるやろ」と講釈します。蝶子は「一人より女夫の方がええいうことでっしゃろ」と返しました
- そして二人は浄瑠璃にこりだし、素人の大会で、柳吉は蝶子の三味線で語って二等賞。景品の大きな座ぶとんは、蝶子が毎日使いました

『夫婦善哉』の最後、法善寺の「めおとぜんざい」では一人に二杯ずつぜんざいが出てきます。蝶子は「一人より女夫の方がええいうことでっしゃろ」と言っています。
まとめ
- 『夫婦善哉』は、織田作之助の小説(末尾に「昭和十五年八月」)
- 元芸者の蝶子と、妻子のある若旦那柳吉が駆け落ち。柳吉は勘当され、蝶子はヤトナ芸者で稼ぐ
- 剃刀屋・関東煮屋・果物屋・カフェと店を開くが、柳吉は遊んでお金を使いはたし、蝶子はそのたびに折檻し、それでも別れない
- 大阪のうまいもん屋の名前がつぎつぎ出てくる
- 最後は法善寺の「めおとぜんざい」。「一人より女夫の方がええ」
- 大阪の男女の物語は谷崎潤一郎『春琴抄』、明治の恋は樋口一葉『たけくらべ』、尾崎紅葉『金色夜叉』もどうぞ
- 物語の中のことでも、つらい気持ちが続くときは、ひとりでかかえこまずにこころの相談先へ
参考文献
- 織田作之助. 夫婦善哉(底本:ちくま日本文学全集『織田作之助』筑摩書房). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000040/card545.html (閲覧日:2026年10月12日)
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