針刺し事故でHIVが心配なとき(医療・介護で働く人へ):予防内服をしなくても感染の確率は約0.3%。まず流水と石けんで洗う(しぼり出しや消毒は不要)。予防内服はできるだけ早く、72時間以内に。予防内服は労災の対象
医療や介護の現場で、針刺しなどでHIVの血液にふれてしまったら——国立健康危機管理研究機構エイズ治療・研究開発センター(ACC)の手引き(2024年)によると、HIVはB型・C型肝炎ウイルスとくらべて感染力がとても弱く、予防内服をしなくても針刺し事故での感染の確率は約0.3%、粘膜にふれた場合は約0.09%とされています。まず、多量の流水と石けんで洗います。傷口から血をしぼり出したり、消毒薬を使ったりすることは効果が証明されておらず、すすめられていません。予防内服は72時間以内、できるだけ早く始めます。予防内服は2010年から労災保険の対象です。

メル美看護師の友だちが、採血のあとに針を自分の指に刺しちゃったんだって。患者さんがHIVかもしれなくて、すごく不安みたい。

プレ男そんなとき、まず何をすればいいんだろう。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、医療や介護の現場での針刺し事故で、HIVが心配なときの話です。国立健康危機管理研究機構エイズ治療・研究開発センター(ACC)の「抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き」の「曝露前・曝露後の予防内服(oPEP/nPEP/PrEP)」(2024年10月21日更新)をもとにまとめました。性行為などのあとのPEPについてはPEP(HIVの曝露後予防)とは?を見てください。
感染の確率は高くない
ACCの手引きによると、
- HIVはB型・C型肝炎ウイルスとくらべて、感染力がとても弱いことがわかっています
- 予防内服をまったくしなかった場合の感染の確率は、針刺し事故で約0.3%(0.2〜0.5%)、粘膜にふれた場合で約0.09%とされています。傷のない皮膚にふれた場合は、ほぼゼロに近いと考えられています
- 予防内服(複数の薬を組み合わせる方法)が行われるようになってから、仕事でHIVに感染した例はほとんど起きていないとされています

針刺し事故でHIVに感染する確率は高くありません。あわてず、まず流水と石けんで洗って、すぐに責任者や担当の部署に連絡してください。予防内服は、早く始めるほど効果が期待できます。
まずすること:流水と石けんで洗う
ACCの手引きによると、
- 刺したところ・ふれたところを、多量の流水と石けんで洗います(目や粘膜の場合は大量の流水)
- 傷口から血をしぼり出すことや、消毒薬を使うことは、効果が証明されておらず、予防内服を始めるまでの大切な時間を失うため、すすめられていません
予防内服は72時間以内、できるだけ早く
ACCの手引きによると、
- 予防内服は72時間以内に始めることが条件ですが、できるだけ早く始めるべきとされています
- リスクが高いと考えられる場合は、相手(曝露源)のHIV検査の結果を待たずに、本人の判断で予防内服を始めてよいとされています
- 予防内服は、ふつう28日間続けます
- 各医療機関で、すぐに予防内服を始められる体制を決めておき、近くのエイズ治療拠点病院と事前に相談しておくことが望ましいとされています

プレ男血をしぼり出したり消毒したりするより、まず洗って、早く予防内服を始めるのが大事なんだね。
その後の検査
ACCの手引きによると、事故のあとは、事故のとき・6週後・12週後・6か月後に、HIV(とほかの血液でうつる感染症)の検査や血液の検査を受けることがすすめられています。抗原と抗体を調べる第4世代の検査を使う場合は、事故のとき・6週後・4か月後に短くすることもできるとされています。
労災と、プライバシー
ACCの手引きによると、
- 予防内服は、2010年の厚生労働省の通知により、労災保険の給付の対象になりました
- 曝露事故は、本人にとって大きな精神的な負担になるため、検査や薬の処方、報告などでは、プライバシーに十分な配慮が必要とされています
B型肝炎の予防については、B型肝炎ワクチンを見てください。
(更新)研究班の「抗HIV治療ガイドライン」(2026年3月)の「医療従事者におけるHIVの曝露対策」の項によると、針刺しなどでの感染の確率は、HIVが約0.3%であるのにくらべ、B型肝炎ウイルスは相手がHBe抗原陽性の場合で約40%、HBe抗体陽性の場合で約10%とはるかに高く、C型肝炎ウイルスは約0.2%とHIVとほぼ同じとされています。B型・C型肝炎の対応(ワクチン、免疫グロブリン、検査のスケジュール)は確認していません。
(更新)同じガイドライン(2026年3月版)の曝露対策の項では、相手(曝露源)が治療中で血液中のHIVが検出限界未満の場合は感染のリスクは非常に低いとして、曝露の経路や量、相手の服薬の状況などを考えて、予防内服を始めないか、始めても早めにやめるかを、本人の意向を十分に尊重して個別に決める(SDM:共有意思決定)としています。また、2025年に改訂された米国CDCのガイドラインでは、4〜6週の検査は原則不要、経過をみる期間は6か月から12週に短縮、12週の検査にHIV-RNA検査を加えるなどの変更があったと紹介しています。本文の「6週後・12週後・6か月後」(ACCの手引き)とはちがうため、日本でどちらにそって検査をするかは確認していません。
まとめ
- HIVの感染力は弱く、予防内服なしでも針刺しでの感染確率は約0.3%
- まず流水と石けんで洗う。しぼり出しや消毒はすすめられない
- 予防内服は72時間以内、できるだけ早く。リスクが高ければ相手の結果を待たずに始めてよい
- 事故のあと6週・12週・6か月などで検査
- 予防内服は労災の対象。プライバシーにも配慮を
参考文献
- 国立健康危機管理研究機構 エイズ治療・研究開発センター(ACC). 抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き:曝露前・曝露後の予防内服(oPEP/nPEP/PrEP)(Last updated: 2024-10-21). https://www.acc.jihs.go.jp/medics/treatment/handbook/part3/sec03.html (閲覧日:2026年10月10日)
- HIV感染症および血友病におけるチーム医療の構築と医療水準の向上を目指した研究班. 抗HIV治療ガイドライン(2026年3月) 医療従事者におけるHIVの曝露対策 要約. https://hiv-guidelines.jp/2026/part16-1.htm (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
