
プレ男短い怪談って、すぐ読めるのにぞくっとするよね。

メル美田中貢太郎には、数百字くらいの短い話もたくさんあるの。今回は2つ紹介するね。
今回は、田中貢太郎の短い怪談、「鬼火を追う武士」(おにびをおうぶし)と「炭取り」(すみとり)を、青空文庫の本文で読みました。本文中の「」の言葉は、青空文庫の本文からの引用です。
鬼火を追う武士
底本は春陽文庫『怪奇・伝奇時代小説選集3 新怪談集』、底本の親本は改造社『新怪談集 物語篇』(1938年)です。
- 鶴岡の城下の話です。ある夜ふけ、ひとりの武士が田んぼ道を通っていると、焔のない火玉が、ふうわりと目の前を通りました
- 焔のない火玉は鬼火だと聞いていた武士は、興味半分にあとをつけていきます。火玉は、人の歩くくらいの速さで、ふうわりふうわりと飛んでいました
- 武士は、ふとその火玉を斬ってみたくなりました。足を早めて近づくと、火玉は、ものにおどろいたように、ものすごい速さで飛びだします。武士も走って追いかけました
- 火玉の先に、一軒の小さな農家が見えました。火玉は、いきなりその家の小窓のなかへ飛びこんでしまいます
- 武士が小窓の下に立つと、家のなかから声がしました。「どうしたの、お婆さん、お婆さん、そんなにうなされて」
- しわがれた女の声が答えます。「あァ、怖かった、怖かった。わしは、この煩いでは、とても助からん思って、今、娘の処へ暇乞いに往って、帰っておると、お武家さんが見つけて、斬りに来たから、一所懸命になって逃げて来た」

プレ男鬼火の正体は、娘さんにお別れを言いにいったお婆さんの魂だったんだ…。斬らなくてよかった!
炭取り
底本は学研M文庫『伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典』、底本の親本は改造社『日本怪談全集』(1934年)です。
- 母親を亡くした子どもが、ある夜、ふと目をさましました。部屋は二階で、そばには父親をはじめ二、三人が寝ていました
- すると、梯子段をみしみしと鳴らして、だれかが上がってきて、障子をすうっとあけて入ってきました。それは、亡くなった母親でした
- 子どもが「おっ母さんが来たな」と思って見ていると、母親は、入口の火鉢や炭取りをよせてあるところを通って、子どもの枕もとのほうへ来ようとします
- そのひょうしに、着物の裾が炭取りにかかると、炭取りはぐるりと左から右に動いて、置き場所が変わりました
- そのとき、祖父をはじめ、そばに寝ていた人たちは、みないっしょにうなされた、と物語は結ばれます

メル美『遠野物語』の、炭取りがくるくるまわった話に似てるね。お母さん、子どものことが心配で来たのかな。

田中貢太郎の「鬼火を追う武士」で、武士が追った火玉の正体は、娘のもとへ別れを告げにいって帰る途中のお婆さんでした。「炭取り」では、亡くなった母親の裾にふれた炭取りが、ぐるりと動きます。
まとめ
- 「鬼火を追う武士」:鶴岡の城下、夜の田んぼ道で焔のない火玉を追った武士
- 火玉は農家の小窓へ。うなされていたお婆さんは「娘の処へ暇乞いに往って」帰るところだった
- 「炭取り」:母親を亡くした子どもの枕もとへ、亡くなった母親が
- 裾にふれた炭取りがぐるりと動き、寝ていた人たちはいっしょにうなされた
- 『遠野物語』の炭取の話、田中貢太郎の狐と狸、義猫の塚もどうぞ
参考文献
- 田中貢太郎. 鬼火を追う武士(底本:『怪奇・伝奇時代小説選集3 新怪談集』春陽文庫). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000154/card42269.html (閲覧日:2026年10月12日)
- 田中貢太郎. 炭取り(底本:『伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典』学研M文庫). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000154/card45592.html (閲覧日:2026年10月12日)
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