
メル美海外では、妊娠中に百日せきのワクチンを打つって聞いたの。日本ではどうなってるのかな。

プレ男赤ちゃんの百日せきって、そんなに危ないんだ。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、日本の妊婦と百日せきワクチンの話です。日本産科婦人科学会が医師向けに出した文書(2025年4月25日)をもとにまとめました。英国などの状況は、妊娠中の予防接種の記事にまとめています。
赤ちゃんの百日せきが増えている
日本産科婦人科学会の文書によると、
- 百日せきは、2018年から五類感染症の全数把握の対象になっていて、2024年以降、報告数が再び増えています
- とくに乳児の重症例が増え、マクロライド系の抗菌薬が効きにくい百日せき菌も増えています
- 日本では、赤ちゃんへの百日せきを含むワクチンの定期接種は生後2か月からです。でも、ワクチンを打つ前の赤ちゃんの感染が多く、その重症化が問題になっています
2025年は大きな流行に
国立健康危機管理研究機構の「病原微生物検出情報(IASR)」2026年1月号の「2025年における届出ガイドラインに則った国内百日咳の疫学のまとめ」によると、
- 2025年は、第1〜44週(11月5日時点)で8万3,793例の届出があり、2024年の同じ時期(2,656例)の32倍でした
- 年齢は10〜19歳が52%ともっとも多く、次いで5〜9歳が24%でした
- 重症になりやすい赤ちゃんでは、2019年とくらべて、生後0〜5か月で1.9倍、生後6〜11か月で3.7倍にふえました。届出の時点で確認された死亡4例のうち、2例は生後6か月未満でした
- 感染経路がわかった例では、きょうだい(74%)、母親(12%)、父親(9%)と、家庭の中での感染がほとんどでした
- IASRは、赤ちゃんや妊婦のまわりにいる人は、長引くせきがあれば百日せきを疑って、早めに受診し、感染を防ぐ行動をとることが求められるとしています
「母子免疫」ワクチンとは
- 妊娠中のお母さんがワクチンを打つと、抗体が赤ちゃんに移り、生まれた赤ちゃんを守ることができます。これを「母子免疫」といいます
- 学会の文書によると、オーストラリアや欧米では、妊娠後期の妊婦にTdapというワクチンを打って、赤ちゃんの重症化を防ぐことがすすめられています

プレ男お母さんのワクチンで、赤ちゃんを守るしくみなんだね。RSウイルスでも同じしくみがあるって聞いた。
RSウイルスの母子免疫ワクチンについては、RSウイルスの母子免疫ワクチンの記事を見てください。
日本の状況(2025年4月の学会の文書)
日本産科婦人科学会の文書によると、
- 日本では、Tdapは承認・販売されていません。個人輸入する方法はありますが、副反応が起きたときの対応など課題が多く、日本での母子免疫ワクチンは進んでいません
- 日本で定期接種に使われてきた3種混合ワクチン(DTaP)は、添付文書上、妊婦への皮下接種が可能です。厚生労働省の研究班により、妊婦への接種の安全性と、赤ちゃんへの抗体の移行が確認されています
- そのため、Tdapが使えない日本では、DTaPの活用が、母子免疫の現実的な代わりの方法として考えられています
- ただし、妊婦へのDTaPの接種で、赤ちゃんの百日せきの重症化を防ぐ効果は、現時点では証明されていないことに注意が必要です
(更新)国立健康危機管理研究機構のIASR「百日咳の予防接種」(2026年1月号)で確認しました。海外で妊婦に使われる成人用3種混合ワクチン(Tdap)は日本では製造販売承認されておらず、日本ではDPTを使い、妊娠28週以降の妊婦を対象に臨床試験が行われているとされています。妊婦への接種は、定期接種ではなく任意接種として行われつつある段階で、妊婦の家族への接種は、国の審議会で整理された案のひとつとして挙げられています

日本では、妊婦向けの百日せきワクチンの体制はまだ整っていません。気になるときは主治医と相談を。赤ちゃんのまわりの大人がせきをしているときは、近づかない工夫も大切です。
まわりの大人のこと
- 学会の文書によると、乳児の百日せきの感染源の多くは、家族や医療従事者です。日本環境感染学会は、産科病棟や新生児をケアするスタッフなどに、百日せきを含むワクチンの接種をすすめています
- 家族も、せきが続くときは赤ちゃんに近づかない、早めに受診するなどの工夫が大切です
(更新)国立健康危機管理研究機構のIASR(2026年1月号)によると、生後6か月未満の百日せきの届出では、感染源の多くが家族、とくにきょうだい(兄・姉)でした。2020年1月の国の審議会(ワクチン評価に関する小委員会)では、乳児の重症化を防ぐための6つの案の1つとして「妊婦の家族への追加接種」が整理されましたが、IASRの時点で導入されたのは接種開始を生後2か月に早めたことで、就学前・11〜12歳・妊婦への追加接種は任意接種として行われつつあり、家族への接種は国の制度にはなっていません。
赤ちゃんの定期接種を忘れずに
- 赤ちゃんの百日せきを含むワクチンの定期接種は生後2か月からです。遅れずに受けましょう
まとめ
- 日本では2024年以降、百日せきが再び増え、乳児の重症例や薬の効きにくい菌も
- 欧米では妊婦にTdapを打つ母子免疫がすすめられているが、日本ではTdapは承認・販売されていない
- 日本で妊婦に打てる3種混合ワクチン(DTaP)の活用が考えられているが、重症化予防の効果はまだ証明されていない(2025年4月時点)
- 接種を希望するときは主治医と相談。赤ちゃんの定期接種は生後2か月から
参考文献
- 日本産科婦人科学会. 乳児の百日咳予防を目的とした百日咳ワクチンの母子免疫と医療従事者への接種について(2025年4月25日、PDF). https://www.jsog.or.jp/news/pdf/infection07.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 日本産科婦人科学会. 女性を脅かす感染症(更新日時:2026年3月24日). https://www.jsog.or.jp/citizen/7042/ (閲覧日:2026年10月10日)
- 国立健康危機管理研究機構. 百日咳の予防接種(IASR Vol.47 p3-4: 2026年1月号). https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/pathogens/vol47/551/551r01.html (閲覧日:2026年10月10日)
- 立花佳弘ほか. 2025年における届出ガイドラインに則った国内百日咳の疫学のまとめ(IASR Vol.47 p5-7: 2026年1月号). https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/pathogens/vol47/551/551r03.html (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。