目次
この記事の要点
- 自分で選んだ石を身につけて気持ちが落ち着くなら、それは神社のお守りと同じ、自分を支える工夫のひとつ。このサイトは否定しない
- 境目は石そのものではなく、売り方にある。「霊感などで不安をあおり、この契約が必要不可欠だと告げる」勧誘は、法律で取り消しの対象になっている
- 霊感などを使った勧誘で結んだ契約は、消費者契約法で、追認できる時から3年、契約から10年まで取り消せる。寄附も、不当寄附勧誘防止法で取り消せることがある。困ったら消費者ホットライン188へ
お気に入りの石が、心を支えることもある
天然石のブレスレットを手首につける。好きな色の石をデスクに置く。大事な日には、お守りのように石をポケットに入れる。
それで気持ちが少し落ち着いたり、前向きになれたりするなら、それはあなたを支えている工夫です。神社のお守りを持ち歩くのと、心の中でしていることは近いと思います。
石に不思議な力があるかどうかを、このサイトでは判断しません。それは確かめようのないことだからです。このサイトが大切にしている物差しは、ひとつだけです。
それは、あなたの不安を軽くしているか。それとも、新しい不安を植えつけているか。
この物差しで見ると、同じ「石」でも、まったくちがう二つのものが見えてきます。
境目は、石ではなく「売り方」にある
パワーストーンと霊感商法の境目は、石の種類や値段の高さだけでは決まりません。どう売られたかで決まります。
法律は、この境目を、かなりはっきり書いています。
消費者契約法は、事業者が次のような勧誘をして、消費者が困惑して契約したときは、その契約を取り消すことができると定めています(第4条第3項第8号、要約)。
- 霊感その他の、合理的に実証することが難しい特別な能力による知見として
- 本人や親族の生命、身体、財産などの重要なことについて
- そのままでは重大な不利益を避けられないと不安をあおる、または、すでに抱いている不安につけこんで
- その不利益を避けるためには、この契約がどうしても必要だと告げる
この4つを、パワーストーンを買う場面にあてはめてみます。
| 自分を支えるお守りとしての石 | 霊感商法のおそれがある売り方 | |
|---|---|---|
| きっかけ | 自分で見て、気に入って選ぶ | 「あなたには悪いものがついている」と言われる |
| 言われること | 石の色や由来の説明 | 「このままでは家族が病気になる」「事故にあう」 |
| 買う理由 | 好きだから、気分が上がるから | 「この石を買わないと不幸は避けられない」 |
| 値段 | 最初にわかり、自分で決められる | 高額で、あとから「浄化料」「追加の石」などが重なる |
| 買ったあと | 気持ちが軽くなる | 「まだ足りない」と言われ、不安が増える |
右の列の言葉がそろってきたら、それはもう「お守り」ではなく、不安を売る商売の形をしています。
消費者契約法で取り消せる期間
霊感などによる勧誘を理由とする取消しは、ほかの取消しより期間が長く定められています(消費者契約法 第7条)。
| ふつうの取消し(4条) | 霊感などによる勧誘(4条3項8号) | |
|---|---|---|
| 追認をすることができる時から | 1年 | 3年 |
| 契約をした時から | 5年 | 10年 |
「追認をすることができる時」とは、おおまかに言うと、困惑した状態から抜け出して、取り消せることに気づける状態になった時のことです。
この霊感などに関する取消しの範囲の拡大と、期間の延長は、2022年の法改正で行われ、2023年1月5日から施行されています(消費者庁『令和5年版消費者白書』)。
お金を「寄附」として求められたとき
霊感などを使ったお金の求め方は、商品の売買とは限りません。「お布施」「献金」「祈祷料」として、寄附の形で求められることもあります。
2022年12月に成立した不当寄附勧誘防止法(法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律、令和4年法律第105号)は、法人などが寄附を勧誘するときに、消費者契約法と同じような霊感による勧誘などを禁止しています(第4条第6号)。
そして、その勧誘で困惑して寄附をした人は、その寄附を取り消すことができます(第8条)。霊感による勧誘が理由のときは、追認をすることができる時から3年、寄附をした時から10年が期間です(第9条)。
この法律は、一部の規定を除いて2023年1月5日に施行され、同年6月1日にすべての規定が施行されました(消費者庁『令和5年版消費者白書』)。
家に来た販売員から買ったときは、クーリング・オフも
自宅に来た販売員や、呼び出された先で買わされたときなど、訪問販売にあたる場合は、特定商取引法のクーリング・オフも使えます。契約の内容を書いた書面を受け取った日から数えて8日以内なら、理由を問わず申込みを撤回したり、契約を解除したりできます(特定商取引法 第9条)。
困ったときは、ひとりで抱えないで
霊感商法の被害にあった人は、自分を責めがちです。「どうしてあんな話を信じてしまったのか」と。
けれど、不安をあおる勧誘は、人がいちばん弱っているときに近づいてきます。家族の病気、仕事の失敗、大切な人との別れ。誰でも、そういうときには、すがるものがほしくなります。だまされた人が弱かったのではなく、弱っているときを狙う売り方が問題なのです。
- 消費者ホットライン「188」:近くの消費生活センターや相談窓口を案内してもらえます
- 証拠を残す:契約書、領収書、パンフレット、言われたことのメモ、メッセージのやりとり
- 家族や友人に話す:「誰にも言うな」と口止めされたときほど、誰かに話してください
占いサイトでのトラブルは「占いサイトのトラブル」、消費者契約法で取り消せるほかの勧誘については「消費者契約法で取り消せる契約」にまとめています。
そして、病気の不安につけこまれたときは、とくに注意してください。「この石があれば治る」「病院の薬はやめなさい」と言われても、治療はやめないでください。石やお守りを心の支えにしながら、治療を続けることはできます。どちらかを選ぶ必要はありません。
科学で言えること、言えないこと
最後に、この記事の立ち位置を整理しておきます。
- 言えること:どんな勧誘が法律で取り消しの対象になるか、いつまで取り消せるか、どこに相談できるか。これは条文や公的な資料で確かめられる
- 言えないこと:石に不思議な力があるかどうか。これは確かめようのない話で、このサイトでは判断しない。そして、何を心の支えにするかは、あなたが決める意味や価値の話
お気に入りの石が、あなたの不安を軽くしてくれるなら、大切にしてください。もし、石を持つたびに不安が増えていくなら、それはその石があなたを支えていないサインかもしれません。
まとめ
- 自分で選んだ石で気持ちが落ち着くなら、それはお守りと同じ、自分を支える工夫
- 境目は売り方。霊感などで不安をあおり、「この契約が必要不可欠」と告げる勧誘は、消費者契約法で取り消せる
- 霊感などによる勧誘の取消しは、追認できる時から3年、契約から10年(2023年1月5日施行の改正)
- 寄附の形でも、不当寄附勧誘防止法で取り消せることがある。訪問販売ならクーリング・オフ(8日)も
- 困ったら消費者ホットライン188。治療はやめない
参考文献
- 消費者契約法(平成12年法律第61号)第4条第3項第8号・第7条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000061 (閲覧日:2026年10月13日)
- 法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(令和4年法律第105号)第4条・第8条・第9条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/504AC0000000105 (閲覧日:2026年10月13日)
- 特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)第9条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057 (閲覧日:2026年10月13日)
- 消費者庁『令和5年版消費者白書』第2部第1章第2節(1)消費者契約法・国民生活センター法の改正、不当寄附勧誘防止法の成立及び施行. https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2023/white_paper_204.html (閲覧日:2026年10月13日)
- 消費者庁「消費者ホットライン」. https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/ (閲覧日:2026年10月13日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。