
メル美先月、健康診断で胸のレントゲンを撮ったんだけど、そのあと妊娠がわかったの。赤ちゃんに影響があったらどうしよう……。

プレ男おなかのCTだったら、もっと心配だよね。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、妊娠中、または妊娠に気づかずにレントゲンやCTを受けたときの話です。日本医学放射線学会の「画像診断ガイドライン」の「妊娠中のCT・MRIは胎児に影響を及ぼすか?」(2026年8月公開、9月更新)、日本放射線技術学会の「妊娠と医療での放射線について」、環境省の「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」をもとにまとめました。
まず知っておきたいこと
日本放射線技術学会によると(国際放射線防護委員会(ICRP)の「妊娠と医療放射線」の要旨)、
- 赤ちゃんの線量が100ミリグレイ以下では、放射線の被ばくを理由に妊娠中絶をする医学的な正当性はありません
- ふつうのX線検査の多くで、この100ミリグレイを超えることは極めてまれです(一部の放射線治療などはのぞく)
- 赤ちゃんがX線の範囲に入らない検査(お母さんの胸・頭や首・手足のレントゲンなど)では、撮影する部分だけにX線をあてるので、赤ちゃんはほとんど被ばくしません
- 妊娠に気づかないような妊娠のごく初めの被ばくでは、赤ちゃんへの影響は極めて低いことがわかっています
日本放射線技術学会は、以前、妊娠に気づかずにおなかのCTを受けて中絶した例が報道され、中絶に値する被ばくではなかったと評価されたことを紹介し、こうした不幸な例をなくしたいとしています。

ふつうのレントゲンやCTの検査で、赤ちゃんに影響が出る線量になることはまずありません。ひとりで悩まず、検査を受けた医療機関や妊婦健診で、どんな検査だったかを伝えて相談してください。
時期と線量
日本医学放射線学会の画像診断ガイドラインによると、
- 赤ちゃんへの放射線の影響は、被ばくの時期と線量によって決まります
- 受精後1〜2週までに被ばくした場合、受精卵は流産するか、完全に修復されるかのどちらかで、奇形のリスクにはなりません
- 妊娠4〜10週(体の器官ができる時期)では奇形、妊娠10〜27週(とくに17週まで)(脳ができる時期)では中枢神経の障害が起こる可能性がありますが、そのしきい値は100ミリグレイとされています
- 日本の『産婦人科診療ガイドライン―産科編2023』や米国産婦人科学会(ACOG)は、安全を見込んで50ミリグレイを許容できる線量としています
環境省の資料でも、ICRPの2007年勧告として、奇形については100ミリグレイ前後に本当のしきい値があると判断され、100ミリグレイを十分に下回る線量では奇形のリスクは考えなくてよいとされています。
CTは?
日本医学放射線学会の画像診断ガイドラインによると、
- 撮影の範囲・回数・条件を適切に管理したCTの被ばくは、赤ちゃんの奇形の発生率を上げません
- ふつうの条件での1回のCTで、50ミリグレイに達することはなく、奇形などは問題になりません
- 頭や胸のCTでは、赤ちゃんは撮影の範囲に入らないので、ほとんど被ばくしません
- 小児がんのリスクは、わずかに上がる可能性があるという研究と、上がらなかったという研究があります。米国放射線学会(ACR)の推定では、おなかのCT(赤ちゃんの線量約20ミリグレイ)で約0.8%の上昇で、99%以上は影響を受けないため、このくらいのリスクは無視してよいと考えられています
- ただし、おなかや骨盤のCTを何回も撮ると50ミリグレイを超える可能性があるので、妊娠中は避ける必要があります

プレ男胸のレントゲンなら、赤ちゃんはほとんど被ばくしないんだね。おなかのCTでも、1回なら奇形が増える線量にはならないんだ。
MRIと造影剤は?
日本医学放射線学会の画像診断ガイドラインによると、
- MRI(造影剤なし)が赤ちゃんに有害だという報告はありません
- CTのヨード造影剤が赤ちゃんに有害だという報告もありません
- MRIのガドリニウム造影剤は、安全性がまだ確立していないので、より慎重に判断します
- 治療方針を決めるのに必要で、より安全な代わりの検査がなく、出産まで待てないときは、説明を受けたうえで、造影もふくめてCT・MRIを受けることができます
- 授乳中に造影剤を使っても、赤ちゃんへの害の報告はなく、特別な理由がなければ授乳を止める必要はないとされています
検査と関係なく起こること
ガイドラインは、説明のときに、検査と関係なく、流産・早産(15%)、奇形(3%)、発達障害(4%)、精神発育の遅れ(1%)が起こりうることも伝えることが大切だとしています。
検査を受けるときは
まとめ
- ふつうのレントゲンやCTで、赤ちゃんの奇形などが起こる100ミリグレイを超えることは極めてまれ
- 胸・頭・手足のレントゲンやCTでは、赤ちゃんはほとんど被ばくしない
- 受精後1〜2週の被ばくは、奇形のリスクにならない
- 1回のCTで、安全を見込んだ50ミリグレイに達することはない
- 100ミリグレイ未満の被ばくは、妊娠中絶の理由にすべきではない(ICRP)
- 気になるときは、検査を受けた医療機関や妊婦健診で相談を
参考文献
- 日本医学放射線学会. 画像診断ガイドライン:①FQ 妊娠中のCT・MRIは胎児に影響を及ぼすか? ②FQ 造影剤投与は胎児に影響を及ぼすか? ③FQ 造影剤投与後の授乳は可能か?(公開日:2026年8月9日、最終更新日:2026年9月18日). https://jrs-gl.radiology.jp/articles/2982/ (閲覧日:2026年10月10日)
- 公益社団法人日本放射線技術学会. 妊娠と医療での放射線について. https://www.jsrt.or.jp/data/citizen/housya/housya-05/ (閲覧日:2026年10月10日)
- 環境省. 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料 第6章 健康管理Q&A(QA38・QA39)(PDF). https://www.env.go.jp/content/900412844.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。