
プレ男なんでも願いがかなう蝦蟆!いいなあ、ぼくもお願いしたい。

メル美うーん、この話を読んだら、そうは思えなくなるかも…。
今回は、岡本綺堂の戯曲『青蛙神』(せいあじん)です。青空文庫の本文(底本:学研M文庫『伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集』)で読みました。『舞台』1931年(昭和6年)7月号〜8月号に掲載され、本文末には「未上演」とあります。本文中の「」の言葉は、青空文庫の本文からの引用です。
※この作品には、人が亡くなる場面が出てきます。
第一幕 十五夜の客
- 時は「現代」。大連の市外の村はずれにある、李中行の農家。陰暦8月15日の夕暮れ、一家は月を祭ります。妻の柳、印刷工場で働く娘の阿香、町の本屋に奉公する息子の中二。阿香は、同じ工場の高田圭吉と心を通わせていました
- 戸をたたいたのは、3年前の雨の晩に泊めてやった旅の男。「三年後の八月十五夜の晩には、必ず再びたずねて来ますから」と小さな箱を預けていったのです
- ところが、箱は鉄のように重く、夫婦二人がかりでも持ちあがりません。男は打ちあけます。3年前も箱が急に重くなって動かせなくなり、病気といつわって逗留していたのだ、と
- 箱の中に祭ってあるのは、「三本足の青い蝦蟆」。江南の地方で祭られる「青蛙神」で、「青蛙神に酒と肉とを供えて祈祷すれば、どんな願いでも屹と成就するのです」
祈りの文句
- 李は、せがれの嫁取りも、娘の縁づけも考えると、まとまったお金がほしい、と頼みこみます。妻の柳は、気味がわるいと袖を引きますが、李は聞きません
- 男が呪文をとなえて箱をあけると、青い蝦蟆が跳びだして、卓のまん中にうずくまりました。李は月に供えた酒と肉をそなえ、土間にひざまずいて、だれにも聞こえないように祈ります
- すると、あれほど重かった箱が、元のように軽くなりました。男は喜んで、夜のうちに去っていきます
- その夜、月が黒い雲にかくれ、ランプが消えた暗闇に、三本足の青い蝦蟆が鬼火のように光ってあらわれ、消えました。中二と高田は「幻覚」だと笑います

プレ男お父さんは、何をお願いしたんだろう…。
第二幕 四千両
- 5日後。刈り入れの忙しい時期なのに、李は煙管をくわえて、のらくらしています。「何事も自然に判ることだ」
- そこへ高田がかけこみます。阿香が工場の機械に巻きこまれ、病院へ運ばれた。まもなく、阿香は亡くなりました
- 工場の事務員は、規定の弔慰金を出すと言います。中二によれば、その額は3,200円。こちらのお金に直すと「四千両」
- 李はよろめき、水をくれと言い、そして打ちあけます。「どうぞここ一月のうちに八千両の金をわたくしにお授け下さいと……」。5日目に、ちょうど半分の四千両が授かった。娘の命とひきかえに
- 「そこで、残りの四千両——それを授けられる時には、又ひとりの生贄を取られることになるだろう。……さあ、今度はだれの番だ……」
第三幕 雨の夜
- それから15日後、小雨の降る宵。旅の男が二人、つぎつぎに「一晩泊めてほしい」とたずねてきますが、李は追いかえします。あの男を泊めたから、こんなことになったのだ
- 李は高田に言います。ゆうべも三本足の青い蝦蟆が出た。つかまえて、紙袋に入れて遠い野原に捨ててきた
- 弔慰金を銀行に預けようという中二の話を、李は聞きません。金貨や銀貨にかえて、瓶に入れて土間に埋めてあるのだ
- その夜ふけ、さっきの男たちが窓を破って忍びこみ、瓶を掘りだします。気づいた中二が取りおさえようとしたとき、男のピストルが鳴り、中二は脇腹を撃たれました
「今度もやっぱり四千両だ」
- 中二は、高田に頼みます。自分は傷害保険に入っていて、受取人は父の名前になっている。保険が3,000円、貯蓄銀行の預金が200円——「それぎりです」。中二は、そのまま息をひきとりました
- 「両方あわせて三千二百円か」「娘が死んだときに貰ったのも三千二百円だったね」
- 「そうだ、そうだ。今度もやっぱり四千両だ、四千両だ……」「妹が四千両……。兄が四千両……。八千両でとうとう子供ふたりの命を売ってしまったのだ」
- 土間の隅に、また三本足の青い蝦蟆が青く光ってあらわれます。李は金貨や銀貨を投げつけ、「息子をかえせ、娘を返せ」とピストルを手にしますが、もみあうはずみに、自分の胸を撃ってしまいました
- 戸をたたく音。入ってきたのは、第一幕の旅の男でした。「おお、やっぱりここにいましたか。私はこれを探しに来たのです」。男は呪文をとなえて蝦蟆を箱にもどし、ひょうぜんと去っていきます。「青蛙神……青蛙神……」——幕

メル美願いは、たしかにかなった。でも、いちばん大切なものとひきかえに…。

『青蛙神』の李中行は、青蛙神に「八千両」を祈ります。娘の弔慰金が四千両、息子の保険金と預金が四千両。李は「八千両でとうとう子供ふたりの命を売ってしまったのだ」と嘆きます。
まとめ
- 『青蛙神』は岡本綺堂の三幕の戯曲。『舞台』1931年7月〜8月号掲載、未上演
- 大連の市外の農家。十五夜の晩、旅の男の箱から跳びだした三本足の青い蝦蟆
- 「酒と肉とを供えて祈祷すれば、どんな願いでも屹と成就する」——李は「八千両」を祈る
- 5日後、娘の阿香が工場の事故で亡くなり、弔慰金は四千両
- 15日後、息子の中二が強盗に撃たれ、保険金と預金で、また四千両
- 「八千両でとうとう子供ふたりの命を売ってしまったのだ」
- 綺堂の五色蟹、兜、穴もどうぞ
参考文献
- 岡本綺堂. 青蛙神(底本:『伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集』学研M文庫、学習研究社). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000082/card48024.html (閲覧日:2026年10月12日)
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