
メル美「死人の手」…。題名だけでもこわいね。

プレ男でも、最後まで読むと、ちょっとちがう気持ちになる話らしいよ。
今回は、田中貢太郎の怪談「死人の手」(しにんのて)です。青空文庫の本文(底本:桃源社『日本怪談全集』、底本の親本:改造社『日本怪談全集』1934年)で読みました。本文中の「」の言葉は、青空文庫の本文からの引用です。
隣の老人から聞いた話
- 語り手の「私」が少年のころ、棒術の稽古をつけてくれた隣家の老人から聞いた話です。老人が自分で知っている話なのか、何かの書物にあった話なのかはわからない、と前置きされています
峠の一軒家
- 秋の夕暮れ、谷ぞいの道を登る旅人。早く山を越えて向こうの村に着きたいと急ぎますが、峠の近くで日が暮れてしまいます
- 暗い道を手さぐりで登ると、火の光が見えて、板葺きの家がありました。主人らしい男が、炉に火を焚いています
- 泊めてほしいとたのむと、主人は言いました。「ちょうど好い処へ来た、私はちょっと下の村まで往って来ねばならんから、留守居をしておくれ」
- 「実は今日夕方、女房が病気で死んだから、下の村にいる親類へ知らして来たいと思うたが」
屏風のかげの亡骸
- 主人の背後には、二枚折りの小さな屏風を逆さに立てたかげに、蒲団をかけて寝ている人。亡くなった女房でした
- 主人は、亡骸の枕もとに供えた枕団子のあまりを出してくれますが、旅人はとても口にする気になれず、下の村でたくさん食べてきたから、と断ります
- 主人は松明に火をつけて出ていき、足音はしだいに遠ざかって、聞こえなくなりました

プレ男知らない家で、亡くなった人とふたりきり…。それはこわい。
蒼白い手
- 旅人の目は、見まいとしても亡骸のほうへ向いてしまいます。風が出て、裏で何かがかたかたと鳴る。「こんなことでどうする、男じゃないか」と自分をはげまします
- そのときでした。亡骸の顔のあるほうから、「蒼白い痩せこけた一本の手」がすうっと出て、枕もとの団子をひとつつかんで引っこんだのです
- 旅人はふらふらと縁側に出て腰をかけます。すると今度は、「冷たい氷のような毛もくじゃらな手」が縁の下から出て、旅人の右の足をつまみました。旅人は気を失いました
主人がもどって
- 「おい、おい、どうした」——下の村から、主人が二人の男をつれてもどってきました
- 旅人が、蒼い手が出て団子をとった、と話すと、主人は「判った」という顔をしました
- 主人が亡骸の蒲団をまくると、そこには、亡くなった母親の胸にだきついて眠る、4つばかりの子ども。片手に何かをにぎっていました
- 「小供が母親が死んだと云っても、どうしても聞かずにいっしょに寝ると云うから、寝さしてあった」「執ったなりに、喫わずに持っている」——主人は悲しそうな声で言いました

メル美お母さんのそばからはなれない子どもだったんだ…。団子を食べずに、にぎったまま。
縁の下の手
- 「縁側に腰をかけると、冷たい毛もくじゃらの手が足にかかりました」。主人はさびしい笑い声をたてて、縁側の簀子をはがしました。「これだ、これだ」
- 暗がりで、10匹ほどの子猿が、坊主頭を見せてがさがさとさわいでいた——物語はここで終わります

田中貢太郎の「死人の手」で、亡骸から出た蒼白い手は、母親にだきついて眠っていた4つばかりの子どもの手でした。子どもは団子を食べずに、にぎったままだったと主人は語ります。
まとめ
- 「死人の手」は田中貢太郎の怪談
- 峠の一軒家で、女房を亡くした主人にたのまれ、旅人が留守居をする
- 亡骸のほうから蒼白い手が出て、枕団子をつかむ。縁の下からは毛むくじゃらの手
- 正体は、母親にだきついて眠る4つばかりの子どもと、縁の下の子猿たち
- 子どもは団子を「喫わずに持っている」
- 田中貢太郎の累物語、おいてけ堀、岡本綺堂の影もどうぞ
参考文献
- 田中貢太郎. 死人の手(底本:『日本怪談全集』桃源社). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000154/card42324.html (閲覧日:2026年10月12日)
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