梅毒やHIVと診断されたら、どこかに報告される?:医師は保健所に届け出る義務がある(感染症法)。でも梅毒とHIVの届出の用紙に、患者さんの名前や住所を書く欄はない。クラミジアや淋菌は、決められた医療機関が人数を報告するしくみ
性感染症と診断されたら、自分の名前がどこかに報告されるの?——感染症法では、梅毒やHIVなどを診断した医師は、保健所に届け出る義務があります。でも、厚生労働省が定める梅毒とHIV(後天性免疫不全症候群)の発生届の様式には、医師の名前や医療機関の欄はあっても、患者さんの名前や住所を書く欄はありません。書くのは性別、年齢、病型、感染経路、感染した地域などです。クラミジア、淋菌、性器ヘルペス、尖圭コンジローマは、指定された医療機関が数を報告する「定点報告」です。

プレ男梅毒って、診断されたら保健所に報告されるって聞いたんだ。名前とか会社に知られたらどうしよう……。それがこわくて検査に行けない。

メル美実際には、どんなことが報告されるんだろう。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、性感染症と診断されたら、どこかに報告されるのかの話です。厚生労働省が定める「梅毒発生届」「後天性免疫不全症候群発生届(HIV感染症を含む)」の様式と、「感染症法に基づく医師の届出ハンドブック」をもとにまとめました。報告がこわくて検査を先のばしにするのが、いちばんもったいないです。
医師には、届け出る義務がある
厚生労働省の「感染症法に基づく医師の届出ハンドブック」によると、
- 医師は、決められた感染症の患者を診断したら、保健所に届け出る義務があります(感染症法第12条)
- 届出は、感染の広がりを防ぐための調査や対策のスタートになり、感染症の発生状況として公表されて、予防・診断・治療に役立てられます
- 梅毒など、周囲への感染の広がりを防ぐ必要がある感染症は、すべての医師が届け出る(全数把握)ことになっています

届出は、どこでどれくらい感染が広がっているかを知り、対策に生かすためのものです。梅毒やHIVの届出の用紙には、患者さんの名前や住所の欄はありません。安心して検査を受けてください。
梅毒の届出で書くこと
厚生労働省の「梅毒発生届」の様式で、医師が書くのは、
- 医師の名前と、医療機関の名前・所在地・電話番号
- 患者さんの性別と、診断したときの年齢
- 病型(第1期・第2期・晩期・先天梅毒・症状のない梅毒)、HIVとの合併の有無
- 感染の原因・経路(性的接触〈性交・口〉、同性間・異性間)、直近6か月の性風俗産業の従事歴・利用歴
- 感染したと考えられる地域(都道府県・市区町村、国外など)、過去の治療歴
- 症状、診断の方法、妊娠の有無、診断した日など
様式に「氏名」が出てくるのは「医師の氏名」だけで、患者さんの名前や住所を書く欄はありません。
性風俗の従事歴・利用歴などのデータは、梅毒の届出と性風俗のデータにまとめています。
HIVの届出で書くこと
厚生労働省の「後天性免疫不全症候群発生届(HIV感染症を含む)」の様式も、医師の名前と医療機関のほか、患者さんの性別、診断時の症状やCD4値、感染経路、感染したと考えられる地域、国籍などを書くもので、患者さんの名前を書く欄はありません。
日本のHIVの報告の数字は、数字で見る日本のHIV(2025年)にまとめています。

プレ男名前は書かれないんだ。性別や年齢、どこで感染したか、みたいな情報なんだね。
クラミジアや淋菌は「定点報告」
- 性器クラミジア、淋菌感染症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマは、都道府県が指定した決められた医療機関(定点)が、患者の数などを報告するしくみです
- 指定された医療機関以外では、届け出る必要はありません
(数字の見方は、数字で見る日本の性感染症(2024年)を見てください)
(更新)厚生労働省の届出様式(定点)の「別記様式6−4 感染症発生動向調査(STD定点)」は月報で、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の4つについて、男女別・年齢階級別(0歳、1〜4歳、5歳ごと〜70歳以上)の人数と合計を書く様式です。調査期間と医療機関名の欄はありますが、患者さんの名前などを書く欄はありません。
保健所から連絡が来ることはある?
- 厚生労働省のハンドブックは、氏名などを届け出る感染症の場合は、保健所から患者に連絡がある可能性があるので、医師が事前に伝えておくよう求めています
- 梅毒やHIVの届出の様式には患者さんの名前の欄はありませんが、届出のあと、内容の確認などのために保健所から医療機関に連絡があることはあります
(更新)感染症法第15条(e-Govで2026年10月12日閲覧)では、都道府県知事は、感染症の発生の予防や、発生の状況・原因を明らかにするために必要があると認めるときは、職員に、五類感染症などの患者やその他の関係者に質問させ、必要な調査をさせることができると定めています(積極的疫学調査)。梅毒やHIVは五類感染症のため、この条文にもとづいて保健所から質問や調査があることはありえますが、実際にどのくらい本人に連絡が来るかは、自治体の運用によるもので、確認していません。
会社や家族に知られる?
- 届出は保健所への報告で、会社や家族に知らせるものではありません
- 医療費の通知などで受診したことが家族にわかるのが心配なときは、受診先や保険者に相談しましょう。保健所の無料・匿名の検査もあります(東京で、匿名・無料でHIVと梅毒の検査)
まとめ
- 梅毒やHIVを診断した医師には、保健所に届け出る義務がある
- でも、梅毒とHIVの届出の用紙に、患者さんの名前や住所の欄はない
- 書くのは、性別、年齢、病型、感染経路、感染した地域など
- クラミジア・淋菌・ヘルペス・コンジローマは、決められた医療機関が人数を報告するしくみ
- 届出がこわくて検査を先のばしにしないで
参考文献
- 厚生労働省. 梅毒発生届(別記様式5-17、PDF). https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/pdf/01-05-11-3-b.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 厚生労働省. 後天性免疫不全症候群発生届(HIV感染症を含む)(別記様式5-9、PDF). https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/pdf/01-05-07-3-b.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 厚生労働省. 感染症法に基づく医師の届出ハンドブック(PDF、日本性感染症学会ウェブサイト掲載). https://jssti.jp/pdf/kansen_handbook.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 厚生労働省. 感染症法に基づく医師の届出のお願い 届出様式(定点). https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001681369.pdf (閲覧日:2026年10月12日)
- 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第15条(e-Gov法令検索). https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000114 (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
