
プレ男タトゥーって、針で皮膚に色を入れるでしょ。お医者さんじゃないとやっちゃいけないの?

メル美それが争われて、最高裁まで行ったんだって。決定の原文を読んでみよう。
今回は、タトゥーと医師法です。医師法(昭和23年法律第201号)の条文をe-Gov法令検索で、最高裁判所第二小法廷 令和2年9月16日決定(平成30年(あ)第1790号)を裁判所ウェブサイトの原文で確認しました。この記事は法律についての一般的な情報で、タトゥーを入れることをすすめたり、反対したりするものではありません。
条文:医師でなければ「医業」をしてはならない
- 医師法17条:「医師でなければ、医業をなしてはならない。」
- 違反すると、3年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方(31条1項1号)。医師やそれに似た名前を使っていたときは、罰金の上限が200万円になります(31条2項)
- 「医業」とは、医行為を業として(くりかえし)おこなうことだと解されています。問題は、タトゥーが「医行為」にあたるかどうかでした
事件のあらまし(決定より)
- 医師ではない被告人が、平成26年7月から平成27年3月までのあいだ、大阪府吹田市のタトゥーショップで、4回にわたり、3人に、針をつけた用具で皮膚に色素を注入したとして、医師法17条違反に問われました
| 裁判 | 結論 | 医行為の考え方 |
|---|---|---|
| 第1審 | 有罪・罰金15万円 | 医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為。タトゥーは皮膚障害などのおそれがあるので医行為 |
| 控訴審(原判決) | 無罪 | 「医療及び保健指導に属する行為」のうち、医師が行うのでなければ危害のおそれがある行為。タトゥーは危害のおそれはあるが、医療に属する行為ではない |
| 最高裁(令和2年9月16日) | 検察官の上告を棄却(無罪が確定) | 控訴審の考え方を「正当」とした。裁判官全員一致 |
最高裁の判断
医行為とは
- 医師法は、医療と保健指導を医師の職分と定め、国家試験や免許の制度で、高い知識と技能をもつ医師が医療をおこなうことを担保し、無資格者の医業を禁じている(1条・17条など)
- だから17条は、医療と保健指導を、無資格者がおこなうことで生じる保健衛生上の危険をふせぐための規定だ
- したがって医行為とは、「医療及び保健指導に属する行為のうち、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」だ、としました
どうやって判断するか
- 同じ方法・作用の行為でも、目的や、行う人と相手の関係、具体的な状況で、医療に属するかどうかは変わりうる
- そこで、行為の方法や作用だけでなく、「その目的、行為者と相手方との関係、当該行為が行われる際の具体的な状況、実情や社会における受け止め方等をも考慮した上で、社会通念に照らして判断する」としました
タトゥーはどうか
- タトゥーは、「装飾的ないし象徴的な要素や美術的な意義がある社会的な風俗」として受け止められ、医療に属する行為とは考えられてこなかった
- 医学とは異質の、美術などの知識と技能が必要で、医師免許をとる過程でそれを身につけることは予定されていない
- 歴史的にも、長いあいだ医師免許のない彫り師がおこなってきた実情があり、医師が独占しておこなう事態は想定しがたい
- だから、社会通念に照らして医療に属する行為とは認めがたく、医行為にはあたらないとしました
- そして、タトゥーにともなう保健衛生上の危険は、「医師に独占的に行わせること以外の方法により防止するほかない」と述べています

プレ男危険がない、って言ったわけじゃないんだね。

メル美そう。危険のおそれはあるけど、医師法で医師だけにやらせる、という方法で防ぐ行為ではない、という判断なんだ。
草野耕一裁判官の補足意見
- 医療とのかかわりを要件にしない解釈をとると、タトゥーを業としておこなう人は、日本から消える可能性が高い。しかし、タトゥーを体にほどこすことは「古来我が国の習俗として行われてきた」
- 反道徳的と考える人や、一部の反社会的勢力が利用してきた事実もあるが、美術的な価値や、信条・情念を象徴する意義を認める人もいる。公共の場で見せることの是非は議論の余地があるとしても、施術への需要そのものを否定すべき理由はない
- 保健衛生上の危険をふせぐための合理的な規制が必要なら、「新たな立法によってこれを行うべきである」
- そして最後に、タトゥーは体を傷つける行為なので、「施術の内容や方法等によっては傷害罪が成立し得る」と、誤解がないよう付け加えています
知っておきたいこと
- この決定は、タトゥーについて、医師法17条の医行為にあたらないとしたものです。目的や状況がちがう行為は、それぞれ社会通念で判断されます。眉やアイラインに色素を入れるアートメイクについては、アートメイクの記事で紹介しています
- 補足意見のとおり、施術の内容や方法によっては、傷害罪の問題になることもあります

最高裁は、医行為とは医療及び保健指導に属する行為のうち、医師でなければ保健衛生上の危害を生じるおそれのある行為だとし、タトゥーはこれにあたらないとしました。危険がないと言ったのではなく、医師に独占させる以外の方法で防ぐほかない、としています。
まとめ
- 医師法17条:医師でなければ医業をしてはならない。違反は3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科も)
- 最高裁(令和2年9月16日決定):医行為とは「医療及び保健指導に属する行為」のうち、医師でなければ保健衛生上の危害のおそれがある行為
- タトゥーは、装飾的・象徴的・美術的な社会的な風俗で、医行為ではない。彫り師の無罪が確定(第1審は罰金15万円)
- 危険は、医師に独占させる以外の方法で防ぐほかない。補足意見は、必要なら新たな立法で、と述べ、傷害罪が成立しうることも付け加えた
参考文献
- 医師法(昭和23年法律第201号)第1条・第17条・第31条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000201 (閲覧日:2026年10月12日)
- 最高裁判所第二小法廷 令和2年9月16日決定(平成30年(あ)第1790号 医師法違反被告事件). 裁判所ウェブサイト. https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-89717.pdf (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。