テストステロン補充療法とは?男性更年期(LOH症候群)の診断の目安と、子どもを望む人が知っておきたい「精子が減る」副作用
疲れやすい、やる気が出ない、性欲が落ちた。男性ホルモン(テストステロン)の低下による「LOH症候群(男性更年期障害)」と、その治療のテストステロン補充療法について、国内の診療の手引き(2022年)をもとにまとめました。子どもを望む人は、精子が作られにくくなる副作用に注意が必要です。

プレ男最近、疲れやすいし、やる気も出ないんだよね…。テストステロンを打つと元気になるって聞いたけど。

メル美男性にも更年期があるんだよね。でも、ホルモンの注射って副作用はないのかな?
こんにちは、Dr. Taro です。 「メンズメディカル」から、テストステロン(男性ホルモン)の補充療法の話です。日本泌尿器科学会と日本メンズヘルス医学会の「LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き」(2022年12月)と、米国泌尿器科学会のガイドラインをもとにまとめました。
LOH症候群(男性更年期障害)とは
- 男性ホルモンのテストステロンが低下して、心や体にさまざまな症状が出る状態を、LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)といいます。いわゆる男性更年期障害です
- 手引きがあげる主な症状は、全身のだるさ、性欲の低下、筋力の低下、ED、気分の落ちこみやイライラ、眠れないことなどです
- 手引きによると、中高年で働く男性のおよそ1割が更年期障害に苦しんでいるという調査(2021年)もあります

プレ男1割もいるんだ。年のせいだとあきらめなくていいんだね。
診断の目安
2022年の手引きでは、次の2つがそろうことを、診断の目安にしています。
- 男性更年期の症状がある
- 血液検査で、総テストステロンが250ng/dL以下、またはフリーテストステロンが7.5pg/mL(未満)
- ただし、血液中のテストステロンの値と症状の強さは、必ずしも一致しないことが知られています。そのため手引きは、基準値以上でも症状がある人では、補充療法が効く可能性があるとしています
- 米国泌尿器科学会は、総テストステロン300ng/dL未満を目安にしています(基準は学会によって少しずつ違います)
補充療法の方法
手引きによると、日本で使える主な方法は次のとおりです。
| 方法 | 使い方 | 保険 |
|---|---|---|
| テストステロン(エナント酸エステル)の注射 | 医療機関で、2〜4週間ごとに筋肉注射 | 医療機関での注射が一般的な方法 |
| 男性ホルモンの軟膏(第1類医薬品) | 陰嚢やあごの下、おなかなどの皮膚に、1日1〜2回ぬる | 自由診療・薬局で購入 |
| hCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)の注射 | 精巣を刺激してテストステロンを増やす。子どもを望む人などに使う | 多くは自由診療 |
- 保険の扱い:監修医(Dr. Taro)によると、血液検査でテストステロンの低下を確かめるなどして診断がついた場合は、保険診療で治療を受けられることが多いと考えられます。一方、筋肉をつけたいなどの目的では、自費診療になります
いちばん大事な注意:子どもを望む人は「精子が減る」
- 体の外からテストステロンを入れると、脳が「もう十分ある」と判断して、精巣に「作れ」という指令(ゴナドトロピン)を出さなくなります。その結果、精子が作られにくくなります
- 手引きによると、健康な男性にテストステロンを30か月投与した研究では、95.2%が無精子症か、精子がとても少ない状態になりました。多くはやめると回復しましたが、回復しなかった人もいます
- 米国泌尿器科学会は、子どもをつくろうとしている男性には、テストステロンを投与すべきではないと強くすすめています
- 手引きも、治療を始める前に、子どもを望むかどうかを確認する必要があるとしています。子どもを望む人には、精子を作る力を保ちやすいhCGなどの方法が選ばれることがあります

メル美元気になりたくて打ったら、子どもができにくくなることもあるんだ…。

テストステロンの補充は、精子が作られにくくなることがあります。子どもを望むなら、始める前に必ず医師に伝えてください。
ほかの副作用・受けられない人
- 多血症(血液が濃くなる):手引きは、定期的な血液検査での確認が必要としています。注射のほうが起こりやすいという報告があります
- 睡眠時無呼吸が悪くなることがあります
- 前立腺がん・男性の乳がんがある人は、受けられません(禁忌)。始める前に、PSA(前立腺がんの検査)などを調べます
- 心臓や血管への影響については、はっきりした結論は出ていません。手引きは、始めて1年以内は慎重に様子を見るとしています
筋トレ目的の自己流の使用は危険
- 筋肉をつけるために、男性ホルモンやその仲間の薬(アナボリックステロイド)を自己流で使う人もいます。こうした使い方でも、精子が作られにくくなることが報告されています
- テストステロンは、医師の診察と血液検査のもとで使う薬です
まとめ
- テストステロンの低下で症状が出る状態が、LOH症候群(男性更年期障害)
- 診断の目安は、症状に加えて総テストステロン250ng/dL以下など(2022年の手引き)。ただし値と症状は一致しないこともある
- 治療は、注射(2〜4週ごと)や軟膏など
- 子どもを望む人は要注意。補充療法で精子が作られにくくなることがあり、米国泌尿器科学会は投与しないよう強くすすめている
- 多血症・睡眠時無呼吸などの副作用があり、前立腺がんなどがある人は受けられない
参考文献
- 日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会. LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き(2022年12月). https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/44_loh.pdf (閲覧日:2026年9月28日)
- Mulhall JP, et al. Evaluation and Management of Testosterone Deficiency: AUA Guideline. J Urol. 2018. https://www.auajournals.org/doi/10.1016/j.juro.2018.03.115 (閲覧日:2026年9月28日)
- Desai A, et al. Understanding and managing the suppression of spermatogenesis caused by testosterone replacement therapy (TRT) and anabolic–androgenic steroids (AAS). Ther Adv Urol. 2022. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9243576/ (閲覧日:2026年9月28日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。