
プレ男「経立」って、なんて読むの?妖怪の名前?

メル美『遠野物語』に出てくる、山のおそろしい獣のことだよ。「ふったち」と読まれるの。原文を読んでみよう。
この記事は、柳田國男『遠野物語』(1910年)を、青空文庫の本文(底本:岩波文庫『遠野物語・山の人生』)で読んで紹介するものです。本文中の「」の言葉と話の番号は、青空文庫の本文によります。「経立」の読み「ふったち」は、青空文庫の本文のふりがなによります。
「恐ろしきものなり」(36話)
猿の経立、御犬の経立は恐ろしきものなり。御犬とは狼のことなり。
- 『遠野物語』は、猿の経立と御犬の経立を、恐ろしいものとして語ります。「御犬」とは狼のことです
- 山口の村に近い岩山・二ツ石山。ある雨の日、小学校から帰る子どもが見ると、ところどころの岩の上に御犬がうずくまっていました。やがて、首を下から押しあげるようにして、かわるがわる吠えた
- 正面から見れば「生まれ立ての馬の子ほど」に見え、うしろから見れば意外に小さかった、といいます
- 「御犬のうなる声ほど物凄く恐ろしきものはなし」
遠野の狼の話(37〜42話)
- 37話:境木峠と和山峠のあいだで、駄賃馬を追う者は、しばしば狼にあいました。ある時、二、三百ばかりの狼が追ってきて、その足音は山もどよむほど。馬も人も一か所に集まって火をたきましたが、狼は火をおどりこえてくる。ついに馬の綱をといて張りめぐらすと、落とし穴とでも思ったのか、中には飛びこまず、夜が明けるまで遠まきにして吠えていた
- 38話:酔って御犬の声をまねした爺さんのあとを、狼が吠えながらついてきた。夜どおし家をめぐって吠え、夜が明けると、馬屋の土台の下を掘って入り、7頭の馬をことごとく食い殺していた
- 40話:「草の長さ三寸あれば狼は身を隠す」。草木の色がうつるにつれて、狼の毛の色も季節ごとに変わっていく
- 41話:秋の暮れ、向かいの峯から何百とも知れぬ狼が群れて走ってくるのを見て、木の梢にのぼると、その下をおびただしい足音が走りすぎていった。そのころから、遠野郷には狼がとても少なくなった、といいます
- 42話:萱刈りの人々が、岩穴で狼の子を3匹見つけ、2匹を殺して1匹を持ちかえると、その日から、狼はその村の衆の馬だけをおそうようになりました。狼狩りで雌狼が飛びかかり、力自慢の男・鉄は、上羽織を巻いた腕を狼の口につっこみます。狼はその場で死にましたが、鉄も腕の骨をかみくだかれ、まもなく亡くなりました

プレ男子どもを殺された村の馬だけをねらうなんて…。狼にも、わかってたんだ。
猿の経立(44〜47話)
- 44話:炭焼きの男が、昼に小屋で寝ころんで笛を吹いていると、小屋の入口の垂菰をかかげる者がいる。見れば猿の経立でした。おそろしくて起きなおると、ゆっくり向こうへ走っていった
- 45話:「猿の経立はよく人に似て」、里の女の人をさらっていくことが多い、と語られます。そして——
松脂を毛に塗り砂をその上につけておる故、毛皮は鎧のごとく鉄砲の弾も通らず。
- 松脂を毛にぬり、その上に砂をつけているので、毛皮は鎧のようで、鉄砲の弾も通らない
- 46話:六角牛山で、鹿をうとうと鹿笛(オキ)を吹いた男のもとへ、猿の経立が、本物の鹿だと思ったのか、地竹を手でわけながら、大きな口をあけて峯のほうから下りてきました。肝をつぶして笛をやめると、それて谷のほうへ走っていった
- 47話:この地方では、子どもをおどす言葉に「六角牛の猿の経立が来るぞ」というのがふつうでした。この山には猿が多く、緒の滝を見にいくと、崖の木の梢にたくさんいて、人を見ると逃げながら木の実などを投げていく、といいます

メル美「鉄砲の弾も通らない」って、山の人たちにとって、ほんとうにこわい存在だったんだね。
山の暮らしと、おそろしい獣
- 36〜47話には、狼や猿だけでなく、雪の日に熊と取っくみあって谷川に落ちた男の話(43話)もならびます
- 『遠野物語』は、こうした獣の話を、だれがどこで出あったかとともに書きとめています。山で暮らし、山を越えて行き来する人々が、何をおそれていたのかが伝わってきます
- 遠野の山の怪異は、河童、山男、家の神オシラサマもどうぞ

柳田國男の『遠野物語』45話は、猿の経立について、松脂を毛にぬって砂をつけているので、毛皮は鎧のようで鉄砲の弾も通らない、と語っています。
まとめ
- 『遠野物語』36話:「猿の経立、御犬の経立は恐ろしきものなり」。御犬とは狼
- 二ツ石山の岩の上で吠えた御犬は「生まれ立ての馬の子ほど」
- 二、三百の狼の群れ、馬屋の下を掘った狼、子を殺された村だけをおそう狼(37〜42話)
- 猿の経立は人によく似て、松脂と砂で固めた毛皮は鉄砲の弾も通らない(45話)
- 鹿笛に寄ってくる猿の経立、子どもをおどす「六角牛の猿の経立が来るぞ」(46・47話)
参考文献
- 柳田國男. 遠野物語(底本:『遠野物語・山の人生』岩波文庫). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001566/card52504.html (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
