
メル美「神隠し」って、人がふっと消えてしまうことだよね。『遠野物語』にも出てくるの?

プレ男消えた人が、何十年もたって帰ってくる話があるんだって…。
この記事は、柳田國男『遠野物語』(1910年)を、青空文庫の本文(底本:岩波文庫『遠野物語・山の人生』)で読んで紹介するものです。本文中の「」の言葉と話の番号は、青空文庫の本文によります。「寒戸」の読み「さむと」は、本文のふりがなによります。
寒戸の婆(8話)
黄昏に女や子供の家の外に出ている者はよく神隠しにあうことは他の国々と同じ。
- 『遠野物語』8話は、黄昏に家の外にいる女や子どもが神隠しにあうのは、ほかの国々と同じだ、と書きだします
- 松崎村の寒戸(さむと)というところの家で、若い娘が、梨の木の下に草履をぬいだまま、行くえ知れずになりました
- 30年あまりがすぎたある日、親類や知り合いがその家に集まっているところへ、「きわめて老いさらぼいて」、その女が帰ってきました
- どうして帰ってきたのかとたずねると、「人々に逢いたかりし故帰りしなり」。そして、「さらばまた行かん」と、ふたたびあとをとどめず、すがたを消しました
- その日は、風のはげしく吹く日でした
されば遠野郷の人は、今でも風の騒がしき日には、きょうはサムトの婆が帰って来そうな日なりという。

プレ男「人々に逢いたかったから帰ってきた」…。こわいより、せつないね。風の強い日に思いだされるっていうのも。
年々さらわれる(31話)
- 31話は、遠野郷の家の子女で、「異人」にさらわれていく者が年々多くある、ことに女に多い、と短く記しています
白望の山の不思議(33〜35話)
- 33話:白望(しろみ)の山に泊まると、深夜にあたりが薄明るくなることがある。谷の向こうで大木を切りたおす音や、歌の声が聞こえることもある
- 5月に萱を刈りにいくと、遠くに、桐の花が咲きみちて紫の雲がたなびくような山が見えるが、ついにそのあたりに近づくことはできない
- 茸とりに入った者が、山奥で金の樋と金の杓を見つけましたが、とても重くて持ち帰れない。また来ようと木の皮をはいで目印にしたのに、次の日、人々と行っても、その木のありかすら見つからなかった
- 34話:無人の地「長者屋敷」で炭を焼いていた者の小屋の垂菰をかかげて、なかをのぞく者がいた。髪を長く二つにわけて垂らした女だった。このあたりでは、深夜に女のさけび声を聞くこともめずらしくない
- 35話:佐々木氏の祖父の弟が、白望で茸とりに泊まった夜、谷の向こうの大きな森の前を、女が走っていくのを見た。中空を走るように思われた。「待てちゃア」と二声ばかりさけぶのを聞いた、といいます
淵の底の機織り(54話)
- 川井村の長者の奉公人が、淵の上の山で木を切っていて、斧を水中に落としてしまいました。主人の物なので、淵に入ってさがすと、水の底で物音がする
- たどっていくと、岩のかげに家があり、奥で美しい娘が機を織っていました。斧はその機に立てかけてあった
- 返してほしいと言って、ふりむいた娘の顔を見ると、2、3年前に亡くなった主人の娘でした。娘は言います。斧は返すが、わたしがここにいることを人に言うな。そのお礼に、奉公しなくてすむようにしてやろう
- その後、男はふしぎに博奕に勝ちつづけて金がたまり、奉公をやめました。ところが、ある日ふと昔のことを思いだし、連れの者に話してしまう。うわさは近郷に広まり、その頃から男の家はふたたびかたむいて、また昔の主人に奉公することになりました
- 主人は、何を思ったのか、その淵に何荷ともなく熱湯をそそぎいれたが、何の効き目もなかった、と結ばれます

メル美亡くなったはずの娘が、淵の底で機を織っていた…。「人に言うな」って約束、昔話によく出てくるね。

柳田國男の『遠野物語』8話で、30年あまりのちに帰ってきた寒戸の娘は「人々に逢いたかりし故帰りしなり」と言い、ふたたびすがたを消しました。遠野郷の人は、風のさわがしい日には「サムトの婆が帰って来そうな日」と言う、と記されています。
まとめ
- 『遠野物語』8話:梨の木の下に草履をぬいで消えた娘が、30年あまりのち、老いて帰ってきた
- 「人々に逢いたかりし故帰りしなり」。風のさわがしい日は「サムトの婆が帰って来そうな日」
- 31話:「異人」にさらわれる者が年々多い
- 33〜35話:夜中に薄明るくなる白望の山、金の樋と金の杓、谷の向こうを走る女
- 54話:淵の底で機を織る亡き主人の娘と、「人に言うな」の約束
- 『遠野物語』の幽霊の話、狐、マヨイガもどうぞ
参考文献
- 柳田國男. 遠野物語(底本:『遠野物語・山の人生』岩波文庫). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001566/card52504.html (閲覧日:2026年10月12日)
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