
プレ男「青頭巾」って、青いずきんのこと?かわいい題名だけど…。

メル美じつは、人を食べる鬼になったお坊さんの話なの。かなりこわいよ。
今回は、上田秋成の『雨月物語』巻之五「青頭巾」(あおずきん)です。青空文庫の「現代語訳 雨月物語」(上田秋成著、鵜月洋訳。底本:角川文庫『改訂 雨月物語 現代語訳付き』)で読みました。本文中の「」の言葉は、この現代語訳からの引用です。
※この話には、人の肉を食べる場面がえがかれています。
「山の鬼がきたぞ」
- 昔、快庵禅師という徳の高い禅僧がいました。美濃の国の寺で夏の修行を終え、秋は奥羽で過ごそうと東へ向かい、下野の国富田の里に着きます
- 日が暮れて、大きな家に一夜の宿をたのむと、畑から帰った男たちが「山の鬼がきたぞ。みんな出てこい」とわめき、女や子どもは泣きさけんでかくれました
- 出てきた主人が見ると、紺染めの頭巾をかぶり、破れた墨染めの衣を着た、五十近い老僧です。主人は笑ってわび、快庵を手厚くもてなしました
鬼になった住職
主人は、わけをこう話しました。
- この里の上の山に寺があり、学問も修行も深いと評判の住職がいました
- 去年の春、住職は越の国から12、3歳ぐらいの童子をつれて帰り、身のまわりの世話をさせていました。その子の姿が上品で美しいのを深く寵愛し、長年つとめてきた修行も、いつしかおこたりがちになっていったのです
- ことしの4月ごろ、その子は病にたおれ、国府の医者にみせたかいもなく、亡くなってしまいます
- 住職は悲しみのあまり、亡骸を焼くことも葬ることもせず、顔に顔をつけ、手に手を組んで幾日も過ごし、ついに気が狂って、「その肉が腐爛するのをおしんで、肉を食い骨をしゃぶって、とうとうすっかり食いつくしてしまった」のでした
- 寺の人々は「住職は鬼になってしまわれた」と逃げだし、住職はそれから夜ごと里に下りて人を襲い、墓をあばいて屍肉を食うようになったといいます

プレ男悲しみのあまり、鬼になってしまう…。人間がいちばんこわいのかもしれない。
「心をゆるめれば妖魔となり」
- 快庵は言います。その僧が鬼になったのも、ひとすじに思いこんだらどこまでもつらぬく強い性質のためだ。「心をゆるめれば妖魔となり、心をひきしめて仏に仕えれば仏になることができる」というのは、この僧がよい例だ
- そして、この鬼を教えみちびいて、もとの善い心にかえらせることができれば、今夜のもてなしへの恩返しになるだろう、と決意しました
鬼の寺の一夜
- 次の日の夕方、快庵は荒れはてた山寺をたずねます。楼門にはいばら、本堂には蜘蛛の巣。やせこけた僧が出てきて、「一粒の食糧もない。早く里に下られよ」と言いますが、快庵はだまって堂に上がり、僧のそばに座りました
- 真夜中、月が明るく照らすころ、あるじの僧が寝間から出てきて、なにかをあわただしくさがしはじめます。「くそ坊主め、どこへ隠れたのだろうか。たしかここにいたはずだが」
- 僧は快庵の前を何度も走りすぎますが、快庵の姿が見えないのです。本堂へかけ、庭をおどりくるい、ついに疲れてたおれました
- 朝になり、酔いがさめたように見まわした僧は、快庵がもとの場所に座っているのを見て、ぼうぜんとします。快庵は言いました。「もしひもじくいらっしゃるならば、拙僧の肉を食って腹をいっぱいにされるがよい」
- 僧は、生き仏のような人を、鬼のくらんだ目では見ることができなかったのだ、と頭をたれました
青い頭巾と、二句の言葉
- 快庵は、縁側の前の平らな石の上に僧をすわらせ、自分のかぶっていた紺染めの頭巾をぬいで、僧の頭にかぶせました
- そして、証道歌の二句をさずけます
江月照松風吹 永夜清宵何所為
- 「入江を月が照らし、松に風が吹く。秋の夜長の清らかな宵は、何のためにあるのか」——その真意を、この場を去らずにじっくり考えよ。わかったとき、もともと身にそなわっていた仏の心にめぐりあえるだろう、と教えて、快庵は山を下りました
1年後
- 翌年の冬、快庵は奥州からの帰りにふたたび富田の里を通ります。鬼はあれから一度も山を下りてこなかったけれど、こわくてだれも山に登っていない、と主人は言いました
- 快庵が山寺に登ると、荻やすすきが人の背丈よりも高く茂り、建物はくちはてていました。あの縁側のあたりをさがすと、影のようにやせ細った人が、ひげも髪もぼうぼうのまま、草の中で、蚊のなくほどの細い声で、何かをつぶやいていました
- 耳をすますと、それは「江月照松風吹 永夜清宵何所為」——あの二句でした
- 快庵は禅杖をとりなおし、「作麼生、なんの所為ぞ」と一喝して、その頭を打ちすえます。すると、氷が朝日にとけるように、その姿はたちまち消え、あとには青頭巾と骨だけが、草の上に残されていました
- 物語は、里の人々が寺を直して快庵を住職にむかえ、曹洞宗の寺をひらいた、それが大平山大中寺として、いまも栄えている、と結ばれます

メル美1年間、ずっと同じ言葉をとなえつづけていたんだね。こわいけど、最後は救いのある話だ。

「青頭巾」の快庵禅師は、鬼となった住職に自分の青い頭巾をかぶせ、証道歌の二句をさずけます。1年後、その二句をとなえつづけていた住職は、一喝とともに消え、青頭巾と骨だけが残りました。
まとめ
- 「青頭巾」は、上田秋成『雨月物語』巻之五の一編。舞台は下野の国富田
- 山寺の住職は、寵愛した童子を亡くし、悲しみのあまり亡骸を食べて鬼になった
- 旅の禅僧快庵は、鬼の寺に一晩泊まる。鬼には快庵の姿が見えない
- 快庵は紺染めの頭巾をかぶせ、「江月照松風吹 永夜清宵何所為」の二句をさずける
- 1年後、二句をとなえつづける住職を一喝すると、青頭巾と骨だけが残った
- 同じ『雨月物語』の吉備津の釜、浅茅が宿、人を食う鬼の話は小泉八雲の食人鬼もどうぞ
参考文献
- 上田秋成(鵜月洋訳). 現代語訳 雨月物語(底本:角川文庫『改訂 雨月物語 現代語訳付き』KADOKAWA). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001271/card60609.html (閲覧日:2026年10月12日)
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