
メル美「蛇性の婬」って、題名がもう妖しいね。どんな話なの?

プレ男美しい女の人に、どこまでも追いかけられる男の話らしいよ。
今回は、上田秋成の『雨月物語』巻之四「蛇性の婬」(じゃせいのいん)です。青空文庫の「現代語訳 雨月物語」(上田秋成著、鵜月洋訳。底本:角川文庫『改訂 雨月物語 現代語訳付き』)で読みました。本文中の「」の言葉は、この現代語訳からの引用です。
雨やどりの出会い
- 紀伊の国三輪が崎の網元・大宅の竹助には、三人の子がいました。次男の豊雄は、やさしい性格で風流なことばかり好み、働く気がありません。父は、好きにさせておこうと、新宮の神官のもとへ学問に通わせていました
- 9月の末、急な雨で漁師の家に雨やどりしていると、「この軒下をちょっとお貸し下さい」と、20歳にもならないあでやかな女性が、14、5歳の召使の少女をつれて入ってきます
- 「まるでこの世の人とは思えないほどの美しさ」に、豊雄は心が宙にまいあがるようでした。女性は「新宮の辺で、県の真女児(あがたのまなご)の家はどこか、とおたずね下さいませ」と言い、豊雄の傘を借りて帰っていきます
夢と同じ屋敷、そして太刀
- 豊雄は、その夜、真女児の大きな屋敷をたずねて契る夢を見ます
- 翌日、新宮でたずね歩くと、きのうの少女まろやに出会い、案内された屋敷は、門も家も、すだれを深くたらしたようすも、夢で見たのと寸分ちがわないものでした
- 真女児は身の上を語ります。都の生まれで、この国の国守の下役・県の何がしの妻になったが、夫は病で亡くなり、頼る人もいない。「これから後の私の生涯をささげて、あなたのおそばにお仕え申しあげたい」
- 豊雄は喜びながらも、親がかりの身で返事にとまどいますが、ついに承知します。真女児は、亡き夫が宝にしていたという金銀で飾った太刀をさしだしました
太刀は、盗まれた宝物だった
- 翌朝、兄の太郎は、豊雄の枕もとの太刀を見とがめます。「漁師の家には不似合だよ」
- しかも太郎によれば、国守の下役に県という人がいたとは聞いたことがない。そして近ごろ、都の大臣が権現様(神社)に奉納した宝物が、宝蔵から紛失していたのです
- 父は青くなり、家のために訴え出ることにしました。豊雄は捕らえられ、役所で取り調べを受けます

プレ男プレゼントが盗品だった!?それで捕まるなんて…。
廃屋と、雷鳴
- 役人が豊雄をつれて真女児の屋敷へ行くと、門の柱はくさり、瓦は落ちて、とても人が住む家ではありません。近所の人は、3年ほど前からだれも住んでいないと言います
- 中へ入ると、表座敷から不気味ななまぐさい風が吹きつけます。床には塵が3cmほどもつもり、鼠の糞の中に、古い几帳を立てて、花のように美しい女が一人すわっていました
- 大胆な武士が捕らえようとした瞬間、地も裂けるかと思うほどの大雷。顔をあげると、女の姿は消え、床には権現から盗まれた宝物が残されていました
- 豊雄は、盗品を持っていた罪はまぬかれず牢に入れられ、百日ほどで許されて、大和の姉の嫁ぎ先に身を寄せます
大和で、ふたたび
- 翌年の2月、初瀬寺の門前町の姉の店に、都の人らしい美しい女性が少女をつれてやってきます。真女児とまろやでした
- 「あっ、おそろしい」とかくれる豊雄に、真女児は言います。「私がもし妖怪などであったならば、こんな人出の多いところへ、しかもそのうえこんなのどかな昼日中に、どうしておめおめとあらわれることができるでしょうか。ごらん下さい。私の衣服には縫目があります。日にむかえば影もあります」
- 屋敷を荒れはてたように見せたのは隣の老人と相談したこと、雷はまろやのたくらみ、宝物は前の夫がしたこと——そう涙ながらに語る真女児に、姉夫婦も心をうたれ、二人は結婚します。豊雄も、しだいにわだかまりがとけていきました
吉野の老人
- 3月、一家で吉野へ花見に行きます。真女児は人ごみや長い道中は持病が出るとしぶりましたが、みなにすすめられて同行しました
- 宮滝のほとりで、白髪の老人が二人をじっと見つめ、低い声で言います。「ふとどきなやつだ。この邪神め。なんで人をたぶらかすのだ」
- すると、真女児とまろやはおどりあがって激流に飛びこみ、水が大空にわきあがって、黒雲が空をおおいました
- 老人は、大和神社の神官・当麻の酒人。「この邪神は年を経た蛇である」。そして、豊雄にこう言いました。「そなたもまたあの畜生が化けた美人に魅惑されて、男らしいしっかりした精神をうしなっている。今後は男らしく雄々しい勇気をふるいおこして、うわついた心をおしずめなさい」

メル美正体は、年を経た蛇!でも老人は、豊雄の心のほうにも問題がある、って言っているんだね。
新婚の夜の声
- 紀州に帰った豊雄は、宮中に仕えていた美しい富子と結婚します。ところが2日目の夜、酔ってたわむれた豊雄に答えた富子の声は、「姿こそかわっているが、まさしく真女児の声」でした
- 「前世からこうなるときまった因縁がある」「無理に私を遠ざけようとなさるならば……あなたの血を峰から谷へそそぎおとしてみせましょう」——屏風のうしろからは、まろやもあらわれます
- 祈祷にやってきた鞍馬寺の法師が寝室の戸をあけると、戸口いっぱいの、雪よりも白い大蛇の頭が。目は鏡のよう、角は枯れ木のよう、1mあまりの口をあけて赤い舌を出していました。法師は逃げだしましたが、毒気にあたって死んでしまいます
道成寺の「蛇が塚」
- 豊雄は、もう人の力を借りまい、と覚悟を決め、「この富子の命だけは助けてほしい。そのうえで私をどこへなりと連れていくがいい」と真女児に言います
- 舅は、道成寺の法海和尚から、芥子の香のしみこんだ袈裟をもらってきました。豊雄はそれを、すきを見て女の頭からかぶせ、力いっぱい押しふせます。「ああ、苦しい。お前は、どうしてこんなにつれないのだ」
- 和尚が袈裟をとると、気を失った富子の上に、1mあまりの白い蛇がとぐろを巻いていました。屏風のうしろから出てきた30cmほどの小蛇とともに、和尚は鉄鉢に封じこめ、道成寺の本堂の前に深く埋めます
- いまも道成寺には「蛇が塚」が残っている、と物語は伝えます。富子はこれがもとで病にかかって亡くなり、豊雄は無事に生きのびた、と結ばれています

「蛇性の婬」の真女児は、年を経た白い蛇でした。吉野の老人は、豊雄に「男らしく雄々しい勇気をふるいおこして、うわついた心をおしずめなさい」とさとしています。
まとめ
- 「蛇性の婬」は、上田秋成『雨月物語』巻之四の一編。舞台は紀伊と大和
- 雨やどりで出会った美女真女児に、豊雄は傘を貸し、契りのしるしに太刀をもらう
- 太刀は盗まれた宝物。屋敷は廃屋、真女児は雷鳴とともに消える
- 大和で再会し結婚するが、吉野の神官は「年を経た蛇」と見やぶる
- 新しい妻・富子にのりうつった真女児を、道成寺の法海和尚の袈裟で封じ、「蛇が塚」に
- 同じ『雨月物語』の青頭巾、吉備津の釜、人ならぬ美女の話は雪女もどうぞ
参考文献
- 上田秋成(鵜月洋訳). 現代語訳 雨月物語(底本:角川文庫『改訂 雨月物語 現代語訳付き』KADOKAWA). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001271/card60609.html (閲覧日:2026年10月12日)
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