大人の教養An Evening of Culture

第一幕Act I — Love & Letters

芥川龍之介『藪の中』山科の藪で見つかった男の死骸。「殺したのはわたしです」と言ったのは、盗人と、妻と、そして巫女の口を借りた死んだ夫本人。三人の話は、どれも食いちがう

No.1192026年10月12日

芥川龍之介の短編『藪の中』(1922年1月『新潮』初出)。山科の駅路から離れた藪の中で、若狭の侍・金沢の武弘の死骸が見つかります。検非違使に問われた木樵り・旅法師・放免・媼の証言のあと、三人の当事者が語ります。盗人の多襄丸は「あの男を殺したのはわたしです」。清水寺に来た妻・真砂は「夫の胸へ小刀を刺し通しました」。巫女の口を借りた武弘の死霊は「一突きにおれの胸へ刺した」。三つの話はどれも食いちがい、だれの話が本当かは書かれていません。青空文庫の本文で、7つの語りを順にたどります。

目次
  1. 7つの語り
  2. 証人たちの話
  3. 多襄丸の白状:「二十三合目に」
  4. 女の懺悔:「殺せ。」
  5. 死霊の物語:「一突きにおれの胸へ」
  6. 食いちがう3つの話
  7. まとめ

プレ男「藪の中」って、芥川龍之介の小説の題名なんだよね?

メル美そう。3人がそれぞれ「自分が殺した」って言う、ふしぎな話なの。

今回は、芥川龍之介の短編『藪の中』です。青空文庫の本文(底本:ちくま文庫『芥川龍之介全集4』)で読みました。初出は『新潮』1922年(大正11年)1月、本文の末尾には「(大正十年十二月)」とあります。本文中の「」の言葉は、青空文庫の本文からの引用です。

※この作品には、殺人、性暴力、自ら命を絶とうとする場面がえがかれています。

7つの語り

『藪の中』には、地の文がありません。検非違使(都の治安を守る役人)に問われた人々の証言と、当事者の告白が、7つ並んでいるだけです。

語り手 語ること
1 木樵り 死骸を見つけた
2 旅法師 きのう、男と馬に乗った女を見た
3 放免 盗人の多襄丸を捕らえた
4 媼 死んだ男と娘のこと
5 多襄丸の白状 「あの男を殺したのはわたしです」
6 清水寺に来れる女の懺悔 夫を小刀で刺した
7 巫女の口を借りたる死霊の物語 自分で胸を刺した

証人たちの話

多襄丸の白状:「二十三合目に」

プレ男盗人は、正々堂々と斬りあって殺した、って言ってるんだね。

女の懺悔:「殺せ。」

死霊の物語:「一突きにおれの胸へ」

メル美盗人は「斬った」、妻は「刺した」、夫は「自分で刺した」。そして、最後に小刀を抜いたのはだれ?

食いちがう3つの話

多襄丸 真砂(妻) 武弘(死霊)
殺したのは 多襄丸(太刀で) 真砂(小刀で) 武弘自身(小刀で)
女が言ったこと どちらか一人死んでくれ (夫に)お命を頂かせて下さい あの人を殺して下さい
女のその後 いなくなった 死にきれなかった 藪の奥へ逃げた

『藪の中』には地の文がなく、7つの証言と告白が並ぶだけです。多襄丸・真砂・武弘の死霊の3人は、それぞれちがう形で武弘の死を語り、どれが本当かは本文に書かれていません。

まとめ


参考文献

  1. 芥川龍之介. 藪の中(底本:『芥川龍之介全集4』ちくま文庫、筑摩書房). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/card179.html (閲覧日:2026年10月12日)

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