
メル美猫又って、年をとった猫が化けた妖怪だよね。いつごろからある話なんだろう。

プレ男えっ、あの『徒然草』に猫又が出てくるの?
こんにちは、Dr. Taro です。 日本の妖怪、今回は猫又(ねこまた)です。兼好法師の『徒然草』第89段に、猫又のうわさと、それにおびえた法師の夜道の話があります。青空文庫で読める佐藤春夫の現代語訳(初出は1937年)で、段の流れを順に見ていきます。
プロフィール(『徒然草』第89段より)
| 名前 | 猫又(ねこまた) |
| すむ場所 | うわさでは「奥山」。ただし「山でなくても、この辺にも」という声も |
| なりたち | 「猫の年功を経たものが猫又に成り上がる」といわれる |
| こわいところ | 「人を食う」「人を取る」とうわさされる |
| この段の正体 | 法師の飼い犬 |
うわさ:「奥山に、人を食う猫又がいる」
- 段はうわさ話から始まります。ある人が「奥山に猫又というものがあって、人を食う」と言うと、別の人が「山でなくても、この辺にも、年をとった猫が猫又に成り上がって人を取ることはある」と言いました
- この話を聞いていたのが、何阿弥陀仏(なにあみだぶつ)とかいう、連歌をする法師です。法師は行願寺(ぎょうがんじ)の近くに住んでいました。訳者の注によると、行願寺はもとは京の一条北・油小路の東にあり、いまは中京区寺町通竹屋町に移っています
- 法師は、自分はひとりで出歩く身だから、用心しなければと思いました

メル美「山の奥の話」だと思っていたら、「この辺にもいる」って言われると急にこわくなるね。
夜道で、ついに「猫又」が
- ある日、法師は連歌の会で夜ふかしをして、ただひとりで帰ることになりました
- 小川のはたを通りかかったとき、うわさに聞いていた猫又が、法師の足もとへふと寄ってきたかと思うと、すぐさまかきのぼり、首のあたりに食いつこうとしました
- 法師は肝をつぶして、防ぐ力もなくなり、足も立たず小川へ転げ落ちます。そして「助けてくれ、猫又だ、助けてくれ」と叫びました
駆けつけた人たちが見たもの
- 叫び声を聞いて、あたりの家々の人が松明(たいまつ)をつけて駆けつけました。見ると、近所の顔見知りの坊さんです
- 「これはどうなさった」と川の中から抱き起こすと、連歌の賭物(かけもの)としてもらってきた扇や小箱などを懐に入れていたのが、水につかってしまっていました
- 法師はあやうく命は助かったらしいという様子で、ようやく家に帰りつきます

プレ男で、結局その猫又はどうなったの?
オチ:飛びついたのは、飼い犬だった
- 段の最後の一文はこうです。飼い犬が、暗やみの中でも主人(あるじ)だとわかって、飛びついたのだった
- うわさを聞いて「用心しなければ」と思っていたからこそ、暗い夜道で足もとに寄ってきた自分の犬が、猫又に見えてしまったわけです

メル美犬はご主人に会えてうれしくて飛びついただけなのに…。でも、夜道でいきなり首のあたりに来られたら、わたしも叫ぶかも。
この段の読みどころ
- 段の前半はうわさ(「奥山に」「この辺にも」)、後半は夜道の出来事、そして最後の一文で正体が明かされる、という順になっています
- 「猫又」はこの段の中で、うわさの中にしか出てきません。法師に飛びついたのは犬で、本物の猫又は一度も姿を見せていないのです
- 小泉八雲の「貉」(のっぺらぼう)が「本当に化け物がいた」こわさなら、こちらは「うわさを信じたこわさ」の話だといえます

『徒然草』第89段では、「年をとった猫が猫又になって人を取る」といううわさを聞いた法師が、夜道で足もとに飛びついてきたものを猫又だと思いこみます。正体は、暗やみでも主人に気づいた飼い犬でした。
まとめ
- 猫又は、『徒然草』第89段に出てくる。うわさでは奥山にいて人を食う、年をとった猫が猫又に成り上がるとも
- 行願寺の近くに住む連歌の法師が、夜ふけの帰り道、小川のはたで足もとに寄ってきたものに首をねらわれ、小川に転げ落ちる
- 「猫又だ、助けてくれ」の叫びで近所の人が松明を持って駆けつけ、賭物の扇や小箱は水びたしに
- 正体は、暗やみでも主人に気づいて飛びついた飼い犬
- 猫の出てくる怪談なら、田中貢太郎の「義猫の塚」もどうぞ
参考文献
- 兼好法師(佐藤春夫訳). 現代語訳 徒然草 第八十九段(底本:現代語訳 徒然草、河出文庫、河出書房新社、2004年。初出:現代語譯國文學全集 第十九卷 徒然草・方丈記、非凡閣、1937年). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/002238/card61411.html (閲覧日:2026年10月22日)
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