幽々奇譚A Nocturnal Field Guide

YōkaiNo.142

日本の妖怪不知火(しらぬい)夏の終わりの真夜中、八代海の沖に、だれがともしたのかわからない火が並んで明滅する。明治・大正の井上円了は「潮の打ち合う光」と考え、令和の高校生は「空気のレンズ」で光が曲がる蜃気楼の一種と観測した

旧暦8月1日(八朔)のころ、熊本の八代海(不知火海)の沖にあらわれる、ふしぎな火の列「不知火」。妖怪研究で知られる井上円了は『おばけの正体』(1914年)で、海に出て火の正体を見に行った小学校長の話と、潮が打ち合って光るという説を紹介しました。一方、熊本県立宇土高校の生徒たちは、宇城市不知火町の永尾神社から深夜の海を観測し、日本気象学会のジュニアセッションで、光が気温差で曲がる「異常屈折」の現象だと報告しています。昔と今の「正体さがし」を、原文で読みます。

2026年10月22日

目次
  1. プロフィール
  2. 井上円了の「正体さがし」(1914年)
  3. 令和の高校生の観測
  4. 昔と今、何がちがった?
  5. 見に行くときは
  6. まとめ

メル美熊本の海には、夜中に正体のわからない火が並ぶ「不知火」っていう現象があるんだって。

プレ男「しらぬい」って、「知らない火」ってこと?それ、鬼火とか人魂のなかま?

こんにちは、Dr. Taro です。 日本の妖怪、今回は海にあらわれるふしぎな火、不知火(しらぬい)です。明治・大正に妖怪を研究した井上円了の『おばけの正体』(大正3年・1914年。青空文庫)と、令和の高校生が日本気象学会のジュニアセッションで発表した観測の予稿を、読みくらべます。

プロフィール

名前 不知火(しらぬい)。宇土高校の予稿では「不知火現象」
あらわれる場所 熊本県の八代海(不知火海)。観測は宇城市不知火町の永尾神社から
あらわれる時期 八朔(はっさく、旧暦の8月1日)の前後の、真夜中
見え方 1つの光が分かれたり、つながって横長に見えたりする。ゆらいで明滅する光が2列に並ぶ(宇土高校の観測)
正体(いまの報告) 気温の異なる空気の中を通る光が曲がる「異常屈折」による、蜃気楼の一種。光源は、昔は漁火、いまは街の灯りなど

この海の火が、昔の天皇の舟を岸へみちびいたという「火の国」の伝説は、火の国と霧の国の記事で紹介しています。

井上円了の「正体さがし」(1914年)

海へこぎ出した小学校長

プレ男近づいてみたら、人が明かりを持って働いていた。わかってみると、こわくないね。

「潮が打ち合って光る」説

令和の高校生の観測

熊本県立宇土高校の生徒たちは、何年もかけて実際に不知火を観測し、日本気象学会のジュニアセッションで発表しています。公開されている予稿(2020年・2021年の2本)から紹介します。

まずは「知らない」から

観測でわかったこと

正体は「光の屈折」

メル美遠くの灯りが、空気のレンズで曲がって、分かれたり並んだりして見えるんだ。それを高校生が自分たちで観測したって、すごい!

宇土高校の観測では、不知火は八朔のころの深夜、ゆらいで明滅する光が2列に並んで見え、気温の異なる空気による光の屈折現象だとまとめられています。光源はいまは街の灯りなどです。

昔と今、何がちがった?

見に行くときは

まとめ


参考文献

  1. 井上円了. おばけの正体 第18項「不知火の探検」・第19項「不知火の説明」(緒言は大正3年6月). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/card49355.html (閲覧日:2026年10月22日)
  2. 熊本県立宇土高等学校(小澤琳、迫田裕太). 知らない現象(不知火現象)を科学する(講演番号PJ20-23). 日本気象学会. https://www.metsoc.jp/default/wp-content/uploads/2020/05/PJ20-23.pdf (閲覧日:2026年10月22日)
  3. 熊本県立宇土高校 科学部地学班. 知らない現象(不知火現象)を科学する3(講演番号JS1-15). 日本気象学会. https://www.metsoc.jp/default/wp-content/uploads/2021/05/JS1-15.pdf (閲覧日:2026年10月22日)

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

Further Reading次に読む

  1. 妖怪姿のない「口笛の怪声」明治27年(1894年)、山梨の山あいの村で、空中から口笛のような声が人の問いに答え、年齢を言い当て、機の糸を断ち切った。妖怪を研究した井上円了が現地で調べた報告書を、原文で読む
  2. 日本神話火の国と霧の国夜空から火がひとりでにもえておりてきた山。夜の海で、だれがともしたのかわからない火の光を目あてに、天皇の舟は岸にたどりついた。「この火は、人の火ではない」。『肥前国風土記』の、国の名のはじまりと、秋に白くにごる泉
  3. 都市伝説にマジレス「地震雲が出たから大地震が来る」?気象庁は「雲は大気、地震は大地の現象。科学的な説明はされていない」。日時と場所を特定した地震予知は「デマ」