
プレ男天狗って、赤い顔で鼻が長くて、うちわで空を飛ぶ妖怪だよね。

メル美『遠野物語』にも天狗が出てくるんだって。鼻が長いって書いてあるのかな?
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、妖怪天狗です。民俗学者柳田国男の『遠野物語』(明治43年・1910年)を、青空文庫の原文で読んでみました。『遠野物語』の目次(索引)で「天狗」とされているのは、第29話・第62話・第90話の3つです。
登ってはいけない山の三人の大男(第29話)
鶏頭山は早池峰の前面に立てる峻峰なり。(中略)天狗住めりとて、早池峰に登る者もけつしてこの山は掛けず。
- 早池峰山の前にそびえる鶏頭山には天狗が住むといわれ、早池峰に登る人も、けっしてこの山には登らなかった
- ところが、佐々木氏の祖父の幼なじみで、若いころは乱暴者だった男が、賭けをして一人で登った
- 帰ってきて話すには、頂上の大きな岩の上に大男が三人いて、前にたくさんの金銀をひろげていた。男が近づくと、怒ったようにふり返り、その目の光がとても恐ろしかった
- 「早池峰に登るつもりが道に迷った」と言うと、「では送ってやろう」と先に立ち、ふもと近くまで来て「目をふさげ」と言う。しばらく立っていると、たちまち姿が見えなくなった

メル美こわいけど、ちゃんと道案内してくれたんだね。
赤い衣で羽ばたく、僧の姿(第62話)
- 和野村の嘉兵衛爺という猟師が、ある夜、山の中で小屋を作るひまがなく、大木の下で、魔よけの縄を自分と木のまわりに三重にめぐらせて、鉄砲を抱いてうとうとしていた
- 夜ふけに物音がして気づくと、大きな僧の姿の者が、赤い衣を羽のように羽ばたかせて、その木のこずえにおおいかかっていた
- 鉄砲を撃つと、また羽ばたいて空を飛んで帰っていった
- 嘉兵衛爺は、こうしたふしぎに三度あい、そのたびに猟をやめようと誓ったけれど、年をとるまでやめられなかった、とよく人に話していたそうです

天狗をかたどった面(総面)。江戸時代・18世紀。メトロポリタン美術館所蔵(パブリックドメイン)
天狗森の、顔の赤い大男(第90話)
天狗森には天狗多くゐるといふことは昔より人の知る所なり。
- 松崎村に天狗森という山がある。ふもとの桑畑で働いていた村の若者が、眠くなって畑のあぜに腰かけていると、とても大きな、顔のまっ赤な男が出てきた
- 相撲好きで力自慢の若者は、見なれない大男に見下ろされたのが気にくわず、「どこから来た」と聞いたが答えない。突き飛ばしてやろうと飛びかかったとたん、自分のほうが飛ばされて気を失った
- その秋、村人おおぜいと早池峰のふもとへ萩を刈りに行った帰り、この若者だけが見えなくなり、深い谷の奥で亡くなっているのが見つかった、と書かれています
- 『遠野物語』は、これを「今より二、三十年前のこと」で、そのときのことをよく知る老人がいまも生きている、と伝えています

プレ男力自慢で飛びかかったら…。山では、見なれないものに手を出しちゃいけないってことかな。
マジレス:遠野の天狗に「長い鼻」は?
- 3つの話には、「大男」「眼の光きはめて恐ろし」「僧形の者赤き衣を羽のやうに羽ばたき」「顔はまつ赤」とは書かれていますが、「鼻が高い」「うちわを持つ」とは書かれていません
- いずれも、山の奥で、猟師や村人が出会った話です。柳田は、序文でこうした話を、遠野出身の佐々木鏡石から聞いたまま書いたとしています
- 天狗が「本当にいた」かどうかは、この本からはわかりません。ただ、山を恐れ、うやまう気持ちが、こうした話を語りつがせてきたのかもしれません

『遠野物語』の天狗の話には、「大男」「顔はまっ赤」「赤い衣を羽のように羽ばたく」とは書かれていますが、「鼻が高い」とは書かれていません。
まとめ
- 『遠野物語』で天狗とされる話は第29話・第62話・第90話
- 鶏頭山の頂上で金銀をひろげる三人の大男。道案内をして消えた
- 猟師の頭上で、赤い衣を羽のように羽ばたかせる僧の姿
- 天狗森の顔の赤い大男
- 遠野の天狗に「長い鼻」の記述はない
- 遠野のほかの妖怪は、河童、座敷わらしもどうぞ
参考文献
- 柳田国男. 遠野物語(初出:1910年6月14日。底本:新版 遠野物語 付・遠野物語拾遺、角川文庫、1955年). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001566/card52454.html (閲覧日:2026年10月3日)
- The Metropolitan Museum of Art. Mask (Sōmen) Representing a Tengu(18th century, Japanese, 36.25.268a–c, Open Access). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/23997 (閲覧日:2026年10月3日)
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