
プレ男「振袖火事」って、江戸の大火事のことだよね?なんで振袖なの?

メル美ひとりの娘さんの恋から始まる言い伝えがあるんだって。八雲が書いているよ。
今回は、小泉八雲の『In Ghostly Japan』に入っている「FURISODÉ(振袖)」です。英語の原文を Project Gutenberg で読みました。本文中の「」の言葉は、英語の原文から Claude が訳したものです。
どんな話?
| 題名 | FURISODÉ(振袖) |
| 作者 | 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン) |
| 収録 | 『In Ghostly Japan』 |
| きっかけ | 古道具屋の店先にかかっていた、紫(むらさき)の振袖 |
| 伝説の舞台 | 将軍のいる江戸。八雲は「250年近く前」と書いている |
古道具屋の紫の振袖
- 八雲は、古道具屋の多い小さな通りで、店先にかかった振袖に目をとめます。徳川の時代に身分の高い女性が着ていたような、濃い紫の振袖でした
- 五つの紋を見ているうちに、八雲は、同じような振袖が江戸を焼きほろぼしたという言い伝えを思い出しました
名も知らぬ若侍への恋
- 将軍の町・江戸の、裕福な商家の娘が、お寺のお祭りの人ごみのなかで、とても美しい若侍を見かけ、ひと目で恋をしました
- けれど、付きの者に名前や家を調べさせる前に、若侍は人ごみに消えてしまいます。娘の心には、その姿が、着物のこまかいところまで焼きついていました
- 当時の若侍の晴れ着は、娘たちの着物に負けないほどはなやかでした。同じ色・同じ質の着物に同じ紋をつけて着ていれば、いつか目にとめてもらえるかもしれない——娘はそう考えます
振袖に思いをこめて
- 娘は、当時の流行どおり袖のとても長い振袖を仕立て、出かけるときはいつも着ました。家では部屋につるして、その中に恋しい人の姿を思いうかべます
- 何時間も振袖の前で夢を見たり泣いたりし、神さま仏さまに祈り、日蓮宗のお題目「南無妙法蓮華経」をくり返し唱えました
- けれど、若侍に二度と会うことはありませんでした。娘は恋いこがれて病み、亡くなり、葬られました

メル美名前も知らない人を思いつづけて…。せつないね。
振袖を買った娘たち
- 亡くなった人の着物をお寺に納めるのは、古いならわしです。娘の振袖も、家の菩提寺に納められました
- 住職は、その振袖をよい値で売ることができました。高価な絹で、流された涙のあとはどこにも残っていなかったからです
- 買ったのは、亡くなった娘と同じくらいの年の娘でした。たった一日着ただけで病気になり、「美しい若い男の姿につきまとわれている。その人を恋して死ぬ」とさけぶようになり、まもなく亡くなります。振袖はふたたびお寺へ
- 住職がまた売ると、また若い娘が一度だけ着て、病み、「美しい影」のことを口にして亡くなりました。三度目、そして四度目も同じことが起こります
炎の文字
- さすがに住職も、何か悪い力がはたらいていると確信し、境内で火をたいて振袖を焼くよう、弟子たちに言いつけました
- 絹が燃えはじめたとき、その上に、目もくらむような炎の文字があらわれました。お題目「南無妙法蓮華経」です。文字は一つずつ、大きな火の粉のように寺の屋根へ跳びあがり、お寺が燃えだしました
- 火の粉は近所の屋根へ、海からの風が吹いて、火は通りから通りへ、町から町へ。江戸の町のほとんどが焼けてしまいました
- 八雲は、この大火は東京で今も「振袖火事」として記憶されている、と書いています

八雲の書く言い伝えでは、住職が振袖を焼こうとしたとき、絹の上に「南無妙法蓮華経」の炎の文字があらわれ、それが寺の屋根へ跳びあがって大火になります。
八雲が書きそえたこと
- 八雲は、この大火を「明暦元年の1月18日(1655年)」と書いています。ただ、明暦の大火で亡くなった人々を弔うために開かれた両国の回向院の公式サイトでは、「振袖火事」の名で知られる明暦の大火は、回向院が開かれた明暦3年(1657年)のこととされています
- 八雲によると、『Kibun-Daijin』という読み物では、振袖を仕立てた娘の名は「おさめ」で、麻布の酒屋の娘、「麻布小町」と呼ばれたこと、お寺は本郷の日蓮宗の寺「Hon-myoji」、振袖の紋は桔梗だったことになっているそうです
- けれど八雲は、この話にはいろいろな言い伝えがあると言い、『Kibun-Daijin』は「美しい若侍は本当は人間ではなく、上野の不忍池にすむ竜(水蛇)が化けたものだ」としているので信用しない、と書いています
読みどころ
- 恋の物語が、町の大火になる:ひとりの娘の、名も知らぬ人への思いが、振袖を通して次の娘たちへ、そして最後には江戸じゅうへ広がっていきます
- だれも悪くない:娘は恋をしただけ、住職はならわしどおりに着物を売っただけ、買った娘たちはきれいな振袖を着ただけ。それなのに次々に命が失われる、という不条理がこわさになっています
- 八雲の距離のとりかた:古道具屋の店先から話を始め、最後には「いろいろな言い伝えがある」「この本は信用しない」と、伝説との距離をはっきり示しています
- 回向院と明暦の大火については、東京上級デートの両国の回向院の記事にもくわしく書いています
まとめ
- 「FURISODÉ」は、小泉八雲『In Ghostly Japan』の一編
- お祭りで見かけた若侍に恋をした商家の娘が、同じ紋の振袖を仕立て、思いつづけて亡くなる
- お寺に納められた振袖を買った娘たちが、一度着ただけで次々に病んで亡くなる
- 住職が振袖を焼くと、お題目の炎の文字が屋根へ跳び、江戸の大半を焼く大火に——「振袖火事」
- 八雲は1655年と書くが、回向院の公式サイトでは明暦の大火は明暦3年(1657年)
- お皿をめぐる江戸の怪談なら、岡本綺堂の番町皿屋敷もどうぞ
参考文献
- Lafcadio Hearn. In Ghostly Japan. “Furisodé”. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/8128 (閲覧日:2026年10月22日)
- 回向院. 開創. https://www.ekoin.or.jp/history/ (閲覧日:2026年10月22日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。