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プレ男鮫人って、人魚のこと?

メル美八雲は「西洋の人魚とはほとんど共通点がない」って書いてるよ。しかも男の人なんだって。
日本の妖怪、今回は鮫人(さめびと)です。小泉八雲の『Shadowings』(1900年)に入っている「THE GRATITUDE OF THE SAMEBITO」に出てきます。英語の原文を Project Gutenberg で読みました。題名の「鮫人の恩返し」と、本文中の「」の言葉は、英語の原文から Claude が訳したものです。
プロフィール(八雲「THE GRATITUDE OF THE SAMEBITO」より)
| 名前 | 鮫人(Samebito)。八雲の注では、同じ字は「Kojin」と読むのがふつう |
| 姿 | 体は人に似ているが墨のように黒い。顔は鬼のよう、目はエメラルドのような緑、ひげは竜のよう |
| もとの身分 | 海の八大竜王(Hachi-Dai-Ryu-O)に仕え、竜宮(Ryugu)で下役をしていた |
| ふしぎな力 | 海の者が流す涙は、宝石になる |
| 出典 | 八雲の注では『Kibun-Anbaiyoshi』という本 |
人魚とはちがう「鮫人」
- 八雲の注によると、「鮫人」は文字どおりには「鮫の人」。辞書ではざっと「merman(男の人魚)」「mermaid(人魚)」と訳されるけれど、この話の鮫人は男で、姿を見てもわかるとおり、極東の鮫人は西洋の人魚とはほとんど共通点がない考え方だ、と書いています
- また八雲は、もとの話はとちゅうから、鮫人を化け物としてではなく、心やさしい男性の「人」として語るようになる、と注をつけています
瀬田の長橋にうずくまるもの
- 近江の国、琵琶湖のほとり、名高い石山寺からほど近いところに、Tawaraya Totaro(タワラヤ・トウタロウ)という男が住んでいました。暮らしに困らない身でしたが、29歳になってもまだ独り身。いちばんの望みは、とても美しい人と結婚することでした
- ある日、瀬田の長橋(Seta-no-Naga-Hashi)を渡っていると、欄干のそばに奇妙なものがうずくまっていました。墨のように黒い体、鬼のような顔、緑の目、竜のようなひげ
- はじめは驚いたトウタロウでしたが、緑の目がとてもやさしく見えたので、思いきって話しかけます
- 「わたしは鮫人、海の鮫の人です。ついこのあいだまで、八大竜王に仕えて竜宮で下役をしていました。でも、小さなあやまちをして竜宮を追われ、海からも追放されました。それからはここをさまよい、食べるものも、横になる場所もありません。どうか助けてください」

メル美見た目はこわいのに、目がやさしいから話しかけた、っていうのがいいね。
庭の池で
- 心を動かされたトウタロウは、「わたしの庭に大きくて深い池がある。好きなだけ住んでいい。食べものもたっぷりあげよう」と言い、鮫人を家に連れて帰りました
- 鮫人はその池がとても気に入り、半年近く、トウタロウから海の生きものの好む食べものを毎日もらって暮らしました
恋の病と、血の涙
- その年の7月、トウタロウは大津の三井寺の女人詣で、16歳ほどのとても美しい娘を見かけ、ひと目で恋をします。名前はタマナ。けれど、娘の家は結納の品として「一万の玉」の入った箱を求めている、と知りました
- そんなものは大名でもなければ手に入らない。トウタロウは思いつめて病気になり、医者には「恋の病だけは治せない」と言われてしまいます
- 鮫人は池から出てきて、昼も夜も看病しました。死を覚悟したトウタロウが「わたしが死んだら、だれがあなたの世話をするのか」と別れを告げると、鮫人は悲しみの声をあげて、はげしく泣きだします
- 緑の目から流れたのは、血の涙。床に落ちると、それは固く光り輝く、値のつけようのない宝石——炎のように紅いルビーになりました。「海の者が泣くとき、その涙は宝石になる」のです
「本当に悲しいときしか、泣けない」
- 宝石を見て元気をとりもどしたトウタロウは、わけを話し、「一万にはまだ足りないので、もう少し泣いてほしい」とたのみます
- 鮫人は首をふり、とがめるように答えました。人をだますために涙を流す遊女とはちがって、好きなときに泣くことはできない。「海の者は、本当の悲しみを感じなければ泣けない」。あなたが死ぬと思ったから泣いたけれど、病気がなおったと聞いた今は、もう泣けない、と
- そして提案します。明日、酒と魚を持って瀬田の長橋へ行こう。そこで竜宮のほうをながめ、楽しかった日々を思いだして、ふるさとが恋しくなれば、泣けるかもしれない

鮫人は「海の者は、本当の悲しみを感じなければ泣けない」と言いました。トウタロウが死ぬと思ったときには血の涙を流しましたが、病気がなおったと聞いたあとは、泣くことができませんでした。
橋の上の別れ
- 翌朝、二人は橋の上で酒を飲み、魚を食べました。鮫人は竜宮のほうを見つめ、昔を思ううちに、ふるさとへの思いがこみあげて、たくさん泣きます。紅い涙は宝石の雨になって橋に落ち、トウタロウはそれを拾って、一万まで数えました
- そのとき、湖の遠くから美しい音楽が聞こえ、沖に、雲のような夕日の色の宮殿が、水の中からゆっくりとのぼってきました
- 鮫人は欄干に跳びのり、それを見て喜びの笑い声をあげます。「竜の国で大赦があったにちがいない。王さまたちがわたしを呼んでいる。お別れです。あなたのやさしさに、一度だけでもお返しができてうれしい」
- そう言って橋から跳びこみ、二度と姿を見せませんでした。トウタロウは紅い宝石の箱をタマナの両親にさしだし、タマナと結婚しました
この妖怪の読みどころ
- こわい姿と、やさしい心:墨の体、鬼の顔、竜のひげ。見た目は化け物そのものですが、話のなかで鮫人がするのは、恩人の看病と恩返しだけです
- 涙は、うそをつけない:「本当に悲しいときしか泣けない」という鮫人の言葉は、宝石の涙のふしぎさに、心の正直さを重ねています
- 竜宮とのつながり:鮫人のふるさとは海の底の竜宮。日本神話の浦島子の話とならべて読むと、日本の昔話の「海の向こうの国」が見えてきます
- 水の底の御殿にさそわれる話は、八雲の「忠五郎のはなし」にもあります
まとめ
- 鮫人(さめびと)は、小泉八雲「THE GRATITUDE OF THE SAMEBITO」(『Shadowings』1900年)に出てくる海の者。八雲の注では、ふつうは「Kojin」と読む
- 墨のように黒い体、鬼の顔、緑の目、竜のひげ。竜宮の八大竜王に仕えていたが、あやまちで海を追われた
- 近江の瀬田の長橋で助けられ、庭の池で暮らす
- 恩人が死にかけたとき流した血の涙は、紅い宝石に。「本当の悲しみがなければ泣けない」
- 宝石は一万に達し、竜宮が鮫人を呼びもどす。恩人は宝石を結納にして結婚した
参考文献
- Lafcadio Hearn. Shadowings(Boston: Little, Brown, and Company. Copyright 1900). “The Gratitude of the Samebito”. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/34215 (閲覧日:2026年10月22日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

