
プレ男家に石が降ってくるって、海外のホラー映画みたい!

メル美日本では「天狗のしわざ」って言われてきたんだって。明治の学者がその正体を調べているよ。
日本の妖怪、今回は天狗礫(てんぐつぶて)です。妖怪を研究した井上円了の『おばけの正体』(緒言は大正3年)と『迷信解』(明治37年)で、青空文庫の本文を読みました。円了は、新聞記事や各地からの報告を集めて、妖怪の正体を一つずつ説明しようとしました。
プロフィール(井上円了『おばけの正体』『迷信解』より)
| 名前 | 天狗礫(てんぐつぶて)。「投石の怪事」 |
| すること | 夜中、どこからともなく家に石を投げて、人を驚かす |
| 言い伝えの正体 | 狐狸(狐が後ろ足で石をけとばす)、または天狗が投げる |
| 円了が集めた例の正体 | どれも人のしわざ |
「狐が後ろ足でけとばす」
- 円了は『おばけの正体』の「投石の怪事」の項で、夜中に石を投げて人を驚かす怪しい出来事は昔から伝わっている、と書きます
- それを狐狸のしわざにして「狐が後ろ足で石をけとばすのだ」と言ったり、「天狗礫」とも言って、天狗が石を投げるのだと言ったりする。けれど今日では、まったく人のしわざだとわかってきた、と円了は言います
- 『迷信解』でも、民間では狐が石を投げると言い、実際に見たという人の話では「後ろ足で石をけとばすのだ」とされている、と紹介しています
京都の「小石の雨」
- 円了がまず例にあげるのは、当時の新聞にのった京都の事件です。上京区のある織物職人の家に、ある夜11時ごろから、にわかに小石の雨が降りだし、毎夜同じ時刻に降ってくるようになりました
- 投げている者をさがしても見あたらず、「さては天狗か狐狸のしわざか」と近所の評判になります。警官が調べに来て、その時刻にいつも姿が見えなくなる住みこみの女の人のあとをつけると、近くの竹やぶに入り、小石を拾っては投げはじめました
- 取り調べると、主人から何度もきびしく叱られたのをうらみに思い、最初に小石を投げたとき主人が狐狸のいたずらだと思いこんだので、それに乗って毎夜投げていた、と打ちあけたといいます。警察はさとしたうえで、主人のもとへ帰しました

メル美主人が「狐のしわざだ」って思いこんだから、続いちゃったんだね。
仙台:石を「拾う」人の袂
- 明治27年ごろの『奥羽日日新聞』にも、仙台市内の投石騒ぎの探検の話がのっていました。暑い夜なのに、見物人が細い横町を通りきれないほど集まっていたそうです
- 9時半ごろ、「今、石が降った」と拾いあげた人がいました。その石は、何年も土の中に埋まっていたような、水気をたっぷりふくんだ楕円の石。探検した人がその人のあとをそれとなくつけると、30分ほどして、またその人の近くで「ドシリ」と音がして、その人がまた拾いあげ、珍しそうにみんなに見せています
- 探検者は、人ごみに押されたふりをして、わざとその人にぶつかってみました。すると、左の袂に、かたいものが二、三個入っていたのです
- 探検者のまとめは、二つ。降ってきた石はいつも同じ人に拾いあげられること。そして、その人の袂には石が入っていること
佐賀:天から降った薪
- 佐賀市のある家では、薪が天から降ってきたことがありました。これは、その家に奉公していた男の人が、おもしろ半分に薪を空へ投げあげ、「今、天から薪が降った」と人に言っていたもので、投げるところを見られてすぐにわかった、と円了は書いています
- 円了は、投石の怪で原因が見つかった例は、ほかにもたくさんある、とも書いています
漁師と少年と鮎
- 『迷信解』には、人のいたずらから生まれた「偽怪」の例として、こんな話があります。九州のある地方で、漁師が夜中に川岸に座って鮎を釣っていました。そのあたりには狐がすむという評判がありました
- ひとりの少年が漁師をだまそうと、うしろのやぶに隠れて石を投げると、漁師は狐のしわざだと思い、鮎を一匹うしろへ投げて「これをやるから邪魔をするな」
- 少年はその鮎を拾い、おもしろがってまた石を投げます。漁師は「まだほしいか」と、また一匹。こうして少年は、鮎を何匹も手に入れた——という話です

プレ男漁師さん、狐にやさしすぎる!でも、ちょっと笑っちゃうね。

井上円了が集めた投石の騒ぎでは、京都でも仙台でも佐賀でも、石や薪を投げていたのは人でした。仙台の例では、降ってきた石はいつも同じ人に拾われ、その人の袂には石が入っていました。
この妖怪の読みどころ
- 「天狗のしわざ」が、人の隠れみのになる:京都の例では、主人が狐狸のいたずらだと思いこんだことが、投げつづけるきっかけになりました。妖怪のせいにされると、本当の原因が見えにくくなります
- 見物人の熱気:仙台の例では、細い横町を通りきれないほどの人が集まりました。騒ぎが大きくなるほど、「拾ってみせる人」が注目を集めます
- 探検する人の工夫:石を拾う人のあとをつけ、わざとぶつかって袂をたしかめる。新聞にのった探検者の調べ方は、円了の言う「妖怪の正体」を見つける方法そのものです
- 一か月のあいだ毎晩ちがう怪異が起きた江戸時代の記録は稲生物怪録に。円了が現地で調べた妖怪なら、山梨の口笛の怪声もどうぞ
まとめ
- 天狗礫は、夜中にどこからともなく石が降ってくる怪しい出来事。狐が後ろ足でけとばすとも、天狗が投げるとも言われた
- 井上円了は『おばけの正体』で、京都・仙台・佐賀などの新聞記事を集め、どれも人のしわざだったことを示した
- 仙台の例:降った石はいつも同じ人が拾い、その人の袂には石が入っていた
- 『迷信解』には、狐のしわざと思った漁師から、石を投げて鮎をせしめた少年の話も
- 同じ円了の本にある怪火の話は「狐火」で
参考文献
- 井上円了. おばけの正体「第三八項 投石の怪事」「第三九項 仙台の投石事件」「第四二項 佐賀の怪事」「第四三項 高崎の投石事件」. 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/card49355.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 井上円了. 迷信解「第二段 狐狸のこと 付人狐、犬神のこと」「第三段 狐惑、狐憑きのこと」. 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/card49373.html (閲覧日:2026年10月22日)
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