
プレ男レミングって、増えすぎると列になって崖から海に飛びこむんでしょ?みんながやるから自分もやる、っていうたとえにも使うよね。

メル美動物が自分から集団で死ぬなんて、本当にあるのかな…。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回の都市伝説は、「レミングは集団で崖から海に飛びこんで自殺する」説です。米国アラスカ州の役所、アラスカ州魚類狩猟局の広報誌「Alaska Fish & Wildlife News」の2003年9月号の記事と、レミングの数の増え減りを調べた学術論文をもとにまとめました。州の公式サイトの記事は、いまはこちらから読めなかったため、インターネットアーカイブに保存されたページを読みました。
結論から
- アラスカ州の野生生物学者トーマス・マクドノーの答えは「完全な都市伝説(a complete urban legend)」。アラスカ大学フェアバンクス校の動物学者ゴードン・ジャレルも「本当に自殺するのか?いいえ。答えははっきり、いいえです」
- 広まったのは、1958年のディズニーの記録映画『白い荒野(White Wilderness)』から、とマクドノーは話している
- その映画の場面は作られたものだった、とカナダの放送局の1983年の調査は伝えている
- 本当にあるのは、レミングの数が大きく増えたり減ったりすること。増えたあとに新しい場所へ散らばる途中で、川や湖を泳いでおぼれることはある。でもそれは自殺ではない
レミングってどんな動物?
- 記事によると、レミングはしっぽの短いハタネズミのなかまで、ネズミに似た小さな動物です。ツンドラや開けた草原を好みます
- 北極をとりまく北の地域に約20種がいて、アラスカには3種。そのひとつクビワレミングは、冬に白くなる唯一のげっ歯類です
映画『白い荒野』で何があった?
- 1958年、ウォルト・ディズニーは記録映画のシリーズ「トゥルー・ライフ・アドベンチャー」の1本として『白い荒野』を作りました。その中に、レミングが「ふしぎな衝動にかられて集団自殺する」場面がありました
- ナレーションは、レミングが大移動して、最後の崖で「それでも、彼らは飛びこんでいく」と語り、海に落ちたレミングでいっぱいの場面で終わります。さらに、増えすぎを解消するために7〜10年ごとに飛びこむ、とほのめかしていました
- 記事によると、カナダ放送協会(CBC)のプロデューサー、ブライアン・ヴァレーの1983年の調査で、この場面は作られたものだとわかりました
- 海に飛びこんで「自殺」しているように見えたレミングは、実際には撮影する人たちが崖から投げ落としていた
- 「大移動」は、雪をかぶせた回転台の上を数十匹のレミングに走らせ、編集とカメラの角度で作った
- 撮影は、海のないカナダのアルバータ州で行われた。そこにはレミングがいないので、いくつか州をへだてたマニトバ州で、イヌイットの子どもたちからレミングを買った
- 「海」に見えたのは、じつは川だった

プレ男えっ、自分から飛びこんだんじゃなくて、落とされてたの!?

メル美記録映画だと思って見たら、本当のことだと信じちゃうよね…。
では、もとになった「本当のこと」は?
- マクドノーは、ディズニーは「どこかからこの考えを得たはず」と話しています。ディズニーは「散らばること(分散)」と「移動」を取りちがえ、本当の話を大げさにしたのだろう、と
- レミングの数は、天敵、食べ物、気候などで大きく変わります。条件がよければ、ハタネズミのなかまは1年で10倍にも増えることがあります。食べ物を食べつくすと、ヘラジカやビーバーなど多くの動物と同じように、新しい場所へ散らばります
- レミングは泳げるので、川や湖を渡ることもあります。そのときおぼれることもある。ジャレルは、スカンジナビアの山では、水辺で止まったレミングが岸に集まって、やがて泳いで渡る例が知られていると話しています
- 記事は、散らばることと事故で死ぬことは、映画が描いた「本能による、わざとの集団自殺」とはまったくちがう、と書いています
数の増え減りは、どう調べられている?
- グリーンランドのクビワレミングを調べた研究(『Science』2003年)では、レミングは4種類の天敵(オコジョ、ホッキョクギツネ、シロフクロウ、シロハラトウゾクカモメ)に食べられていました。天敵の反応をもとにしたモデルで、4年ごとの増え減りが再現され、長年の観察と合っていました。この場所では、食べ物やすみかが増え方を止めている様子はなかった、と論文は書いています
- ノルウェーの山のレミングを調べた研究(『Nature』2008年)では、1970〜1997年の増え減りを、冬の天気と雪の状態で説明できました。1994年より後に数のピークが来なくなったことも予測でき、気候の変化がレミングの増え減りに影響している可能性を示しました
- つまり、レミングの数の大きな波は、天敵や雪などの環境で説明されていて、「増えすぎたから自分たちで命を絶つ」というしくみで説明されているわけではありません

レミングは集団自殺しません。アラスカ州の生物学者は「完全な都市伝説」と答えています。数が増えたあとに散らばる途中でおぼれることはあっても、それは事故で、映画の場面は人が作ったものでした。
まとめ
- 「レミングの集団自殺」は、アラスカ州の野生生物学者いわく「完全な都市伝説」
- 広めたのは1958年のディズニーの記録映画『白い荒野』。1983年のCBCの調査では、場面は作られたもの(崖から投げ落とした、回転台で走らせた)
- 本当にあるのは、数の大きな増え減りと、増えたあとの分散。泳いで渡るときにおぼれることはある
- 増え減りは、天敵(グリーンランド)や冬の雪の状態(ノルウェー)で説明されている
- 生きものの都市伝説はネッシーはいる?、雪男(イエティ)の正体は?、みんなが同じまちがいを覚えている話は「マンデラ効果」もどうぞ
参考文献
- Woodford R. Lemming Suicide Myth: Disney Film Faked Bogus Behavior. Alaska Fish & Wildlife News. 2003年9月. Alaska Department of Fish and Game. https://www.adfg.alaska.gov/index.cfm?adfg=wildlifenews.view_article&articles_id=56 (閲覧日:2026年10月22日。公式サイトは閲覧できなかったため、インターネットアーカイブの2014年10月18日の保存版 https://web.archive.org/web/20141018233645/http://www.adfg.alaska.gov/index.cfm?adfg=wildlifenews.view_article&articles_id=56 を読んだ)
- Gilg O, Hanski I, Sittler B. Cyclic dynamics in a simple vertebrate predator-prey community. Science. 2003;302(5646):866-868. doi:10.1126/science.1087509. PubMed. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14593179/ (閲覧日:2026年10月22日)
- Kausrud KL, Mysterud A, Steen H, et al. Linking climate change to lemming cycles. Nature. 2008;456(7218):93-97. doi:10.1038/nature07442. PubMed. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18987742/ (閲覧日:2026年10月22日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。