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プレ男映画の途中に「コーラを飲め」って一瞬だけ映したら、みんなコーラを買いに走ったんでしょ?見えないのに操られるなんてこわい!

メル美それ、わたしも聞いたことある。でも、本当にそんな実験があったの?
こんにちは、Dr. Taro です。 「都市伝説にマジレス」、今回は「サブリミナル広告で、知らないうちに買わされる」説です。2015年に学術誌『Frontiers in Psychology』に載った研究論文と、NHK・日本民間放送連盟(民放連)の放送の基準の原文をもとにまとめました。
結論から
- 有名な「映画館でコーラの売上が上がった」話は、1957年に発表されたもの。論文によると、発表した本人がのちにデータをねつ造したと認めた
- その後の研究では、一瞬映した商品名が選び方に影響することはあった。ただし効果は小さく、「のどがかわいている」「疲れている」など条件がそろったときだけだった
- 日本では、NHKと民放連が、サブリミナル的な表現を放送の基準で禁じている
1957年の「実験」
- 2015年の論文の紹介によると、1957年、米国ニュージャージー州の市場調査の専門家ジェームズ・ヴィカリーが、「ポップコーンを食べろ」「コカ・コーラを飲め」というメッセージを一瞬だけ映すと、売店の売上が上がったと発表しました
- 論文はこの話を、映画館での「コカ・コーラを飲め」の指示で売上が大きく上がった、という主張として紹介しています。この主張は世間をおどろかせ、サブリミナルな伝え方を禁じる法律が作られるきっかけになったと書いています
- そして論文は、ヴィカリーはのちに、データをねつ造したと認めたと書いています

メル美いちばん有名な実験が、作り話だったんだ!
それでも、信じる人は多い
- 同じ論文によると、米国では約75%の人がサブリミナルメッセージのことを聞いたことがあり(1993年の調査)、成人の62%が「自分はいつもサブリミナルメッセージを浴びせられている」と信じていました(1994年の調査)
- 1950年代からずっと、「本人の知らないうちに説得する」ことについての神話が続いてきた、と論文は書いています
まじめな実験では、どうだった?
ヴィカリーの話は作り話でしたが、その後、研究者たちはきちんとした方法で調べてきました。論文の紹介によると、次のような結果です。
- 古い研究をまとめたメタ分析(1996年)では、サブリミナルな説得の効果の大きさはr=0.06ほどで、論文の言葉で「弱い」ものでした
- オランダの研究(カレマンスら、2006年)では、紅茶飲料の商品名「Lipton Ice」を一瞬映すと、その商品を飲みたい気持ちが上がりました。ただし、のどがかわいている人だけでした(実験の前に塩からいものを食べてもらうなど)
- ドイツの研究(2009年)では、パソコンのゲームの中でブドウ糖(デキストロース)の錠剤の商品名を一瞬映すと、その錠剤を多く食べました。ただし、疲れている人だけでした
- 論文は、サブリミナルな刺激が効くのは、その商品が「いま必要としているもの・したいこと」に合っているときだ、という見方を紹介しています

プレ男じゃあ、のどがかわいてないのにコーラを買いに走る、なんてことはないのか。
2015年の実験:「Red Bull」を33ミリ秒
この論文そのものの実験は、次のようなものでした。
- 米国の成人160人を、インターネットの調査サービスで集めました。途中でやめた人などを除き、分析したのは140人です
- 画面の「Q」の列の中に小文字の「q」がいくつあったかを数える課題、と説明しました。じつは、その前に「Red Bull」という文字を33ミリ秒(0.033秒)だけ映していました。くらべるグループには、同じ文字をならべかえた意味のない文字列を映しました。これを30回くり返しました
- そのあと「夜ふかしをしないといけないとしたら、Red Bullを頼む?」を、1(まったく頼まない)〜7(とても頼む)で答えてもらいました
- 結果は、Red Bullを映したグループが平均3.41、くらべるグループが2.57。論文の言葉で「小さいけれど意味のある差」でした
- ただし、この差が出たのは、刺激を求める性格(センセーション・シーキング)の強い人で、その性格の弱い人には効果がありませんでした
- コカ・コーラを飲みたい気持ちには、差は出ませんでした
論文自身が書いている「限界」
- 実験はインターネットで行ったので、参加者のパソコンの環境がばらばらで、文字を映した時間を正確に管理できなかった
- 調べたのは「頼みたいか」という気持ちで、実際に買ったかどうかではない
- 著者たちは、この結果は「予備的なもの」で、一般的な結論を出す前に、さらに研究が必要だと書いています

メル美効くとしても、条件がそろった人に、ちょっとだけ、なんだね。
日本の放送では、禁止されている
効果が小さくても、「見る人が気づかない方法で伝える」こと自体が問題だと考えられています。日本の放送の基準には、こう書かれています。
- NHK「日本放送協会番組基準」(国内番組基準)の第1章 第11項「表現」:「通常知覚できない技法で、潜在意識に働きかける表現はしない。」
- 民放連「放送基準」(2023年5月24日改正、2024年4月1日施行)の8章「表現上の配慮」の(60):「視聴者が通常、感知し得ない方法によって、なんらかのメッセージの伝達を意図する手法(いわゆるサブリミナル的表現手法)は、公正とはいえず、放送に適さない。」

「映画館でコーラの売上が上がった」という1957年の話は、論文によると本人がねつ造を認めたものです。その後の研究でも、効果は小さく、のどがかわいているなどの条件がそろったときだけでした。
まとめ
- 「一瞬映した『コーラを飲め』で売上が上がった」は、1957年のヴィカリーの発表。本人がのちにデータのねつ造を認めた
- その後の研究では、一瞬映した商品名の効果はあっても小さく、のどのかわき・疲れ・性格などの条件がそろったときだけ
- 2015年の実験も、調べたのは「頼みたいか」の気持ちで、著者は「予備的な結果」としている
- 日本では、NHKと民放連の放送の基準が、サブリミナル的な表現を禁じている
- 「知らないうちに」の心のしくみは、こっくりさん(知らないうちに手が動く)や、マンデラ効果(みんなが同じまちがいを覚える)の記事もどうぞ
参考文献
- Bustin GM, Jones DN, Hansenne M, Quoidbach J. Who does Red Bull give wings to? Sensation seeking moderates sensitivity to subliminal advertisement. Front Psychol. 2015;6:825. doi:10.3389/fpsyg.2015.00825. https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2015.00825/full (閲覧日:2026年10月22日)
- Karremans JC, Stroebe W, Claus J. Beyond Vicary’s fantasies: The impact of subliminal priming and brand choice. J Exp Soc Psychol. 2006;42(6):792-798. doi:10.1016/j.jesp.2005.12.002(本文は有料のため、内容は文献1の紹介による). https://doi.org/10.1016/j.jesp.2005.12.002 (閲覧日:2026年10月22日)
- 日本放送協会. 日本放送協会番組基準(国内番組基準). https://www.nhk.or.jp/pr/keiei/kijun/index.htm (閲覧日:2026年10月22日)
- 日本民間放送連盟. 日本民間放送連盟 放送基準(2023年5月24日改正、2024年4月1日施行). https://j-ba.or.jp/category/broadcasting/jba101032 (閲覧日:2026年10月22日)
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