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プレ男団三郎って、人の名前みたいだけど妖怪なの?

メル美佐渡のムジナの親分で、神社にまつられているんだって。明治の妖怪学者が、すみかの岩屋まで行ってるよ。
日本の妖怪、今回は団三郎狢(だんざぶろうむじな)です。妖怪を研究した井上円了の『迷信と宗教』(序は大正5年)の「佐渡の迷信」の段を、青空文庫の本文で読みました。円了は本文で「二岩団三郎(にのいわだんざぶろう)」と書いています。
プロフィール(井上円了『迷信と宗教』より)
| 名前 | 二岩団三郎(円了の表記)。いまは「二ツ岩大明神」としてまつられる |
| 正体 | ムジナ(貉)の親分。円了は「貉の巨魁(きょかい)」と書く |
| すみか | 佐渡・相川から半里(約2km)ほどの山頂の岩屋 |
| 得意わざ | 月夜の腹鼓、人そっくりに化けること |
| まつり方 | 岩屋に参る人が赤飯や餅をそなえる(円了の記録) |
佐渡は「ムジナの島」
- 円了は、佐渡には一種特別の迷信があるとして、項目を別に立てています。それが「貉つきの妖怪」です。円了はこれを「家系を有するのではない」と断ったうえで、各地に有名な旧跡がある、と書きます
- そのなかで、いちばん評判が知れわたっているのが二岩団三郎。すでに二岩神社としてまつられている
- 円了も、佐渡に滞在したときにたずねていました。相川から半里ばかりはなれた山頂に天然の岩屋があり、その中に、団三郎というムジナの親分が住んでいる、という言い伝えです
- 佐渡にはムジナの怪談がたくさんあり、二岩だけでなく、加茂湖のほとりの湖鏡庵、赤泊の東光寺にも有名なムジナの話がある、と円了は書いています
石を投げた男と、もうひとりの「自分」
- 円了が「歴史的怪談」のひとつとして紹介するのは、明和年間(1764〜72年)の話です
- ある男が遠くから帰ってきて、月夜にその嶺をこえようとすると、はるかに鼓の音が聞こえる。近づいてみると、一頭の年をとったムジナが、月に向かって腹鼓を鳴らしていた
- 男がすぐに石をひろって投げると、石はみごとにムジナの背中に当たり、ムジナはひと声さけんで逃げていった。男は「痛快だ」と、得意になって相川の町の家へ帰ります
- ところが家に着くと、家の者が出てきてとまどっている。「ご主人はさっきもう帰ってきて、いま座敷で食事をしておられるのに、また主人が帰ってきた。どちらが本当のご主人か」
- 男が座敷へ行ってみると、自分と寸分ちがわない男が食事をしている。化け物にちがいないと刀を抜いて斬ろうとすると、その者は言いました
- 「われは二岩団三郎である。さっき石を打ちつけられた仕返しに来て、食事をいただいたのである。もうごちそうはたくさんいただいたから、これで十分」——そう言うと、たちまち姿が消えてしまった、という話です

メル美仕返しが「ごはんを食べて帰る」だけって、ちょっとかわいい親分だね。
なぜ佐渡にはムジナの話が多い?
- 円了は、佐渡にはもともと狐も狸も一頭もいない、と書きます
- ただ鉱山があるので、昔は鞴(ふいご)にムジナの皮を使うために、わざわざ本土からムジナを連れてきて山林に放ち、ふやした。そのあとムジナがたくさんいるようになり、本土で「狐にだまされた」「狐がついた」と言う話のかわりに、ムジナの迷信がはやったのだ——これが円了の説明です
- 狸とムジナの名前の関係は、柳田國男の「狸とムジナ」も参考になります
岩屋のおそなえと、円了の注意
- 円了の記録では、団三郎がすむという岩屋には参詣する人がたえず、赤飯や餅などをそなえていた
- あるとき、相川の若者2、3人がやってきて、石の上のつきたての餅を食べつくし、さらに岩屋の中へ小便をして「本当に団三郎がいるなら罰をあたえてください」とためした者がいた、と円了は聞いています
- 迷信を打ちやぶることに熱心だった円了ですが、この若者たちについては、いかに団三郎の怪談が迷信から起こったものだとしても「あまり乱暴の挙動である」と書いています
いまの二ツ岩大明神
- 新潟県フィルムコミッションの「にいがたロケーションガイド」によると、二ツ岩大明神は佐渡市相川下戸村にあり、祭神の「団三郎」は、この地に伝わる伝承に由来します
- 同じガイドは、願いがかなうと鳥居を奉納する習慣があるようで、約100mの参道には奉納された鳥居が並んでいる、と紹介しています
- 訪ねるときは、神社への参拝のマナーを守り、円了が書いた若者たちのようなことは、もちろんしないようにしましょう

井上円了は、佐渡にはもともと狐も狸もおらず、鉱山の鞴に使う皮のためにムジナが持ちこまれてふえたので、狐の話のかわりにムジナの怪談がはやった、と書いています。その円了も、団三郎の岩屋のそなえものを食べて小便をした若者たちを「あまり乱暴」と書きとめました。
この妖怪の読みどころ
- こわいより、ちゃっかり:石を投げられた団三郎の仕返しは、男に化けてごはんを食べて帰ることでした。佐渡のムジナには、人をこらしめても、どこか憎めない話が残っています
- 島の暮らしと妖怪:円了は、鉱山の鞴とムジナの皮をむすびつけて、佐渡の妖怪を説明しました。土地の産業が、その土地の妖怪の顔ぶれを変えることもあります
- 迷信を笑うことと、信じる人をばかにすることはちがう:迷信と戦った円了が、そなえものを荒らした若者を「乱暴」と書いたのは、心に残る一行です
- 月夜の腹鼓の正体を円了が調べた話は「狸の腹鼓」、田中貢太郎の「狐と狸」もどうぞ
まとめ
- 団三郎狢は、佐渡・相川の山頂の岩屋に住むというムジナの親分で、二ツ岩大明神としてまつられている
- 井上円了は佐渡で岩屋をたずね、『迷信と宗教』に佐渡はムジナの怪談が多いことを記録した
- 明和年間の話では、腹鼓をうつムジナに石を投げた男の家に、男とそっくりの団三郎があらわれ、食事をして消えた
- 円了は、佐渡にはもともと狐も狸もおらず、鉱山の鞴に使う皮のために持ちこまれたムジナがふえたので、ムジナの迷信がはやったと説明した
- そなえものを荒らした若者を、円了は「あまり乱暴の挙動」と書いた
参考文献
- 井上円了. 迷信と宗教「第二四段 佐渡の迷信」. 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/card49374.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 新潟県フィルムコミッション「にいがたロケーションガイド」. 二ツ岩大明神. https://niigata-kankou.or.jp/location/site/detail_43724.html (閲覧日:2026年10月22日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

