幽々奇譚A Nocturnal Field Guide

YōkaiNo.189

日本の妖怪狸の腹鼓(たぬきのはらつづみ)秋の晴れた夜ふけ、どこからか「トントン」と太鼓の音。近づくほど遠くなる——井上円了が記録した山形・庄内の騒ぎの正体は、鍛冶屋のふいごの音だった。柳田國男は、汽車が通れば汽車の音、学校ができれば学校の騒ぎをまねると言われた狸を書いている

狸の腹鼓は、夜ふけにどこからともなく聞こえる太鼓のような音を、狸が腹をたたいているのだとする言い伝えです。井上円了は『おばけの正体』や『迷信解』で、山形・庄内で評判になった腹鼓の正体が鍛冶屋のふいごの音だったことや、神社の森の怪音の正体がふくろうやみみずくの声だったことを記録しました。柳田國男は『山の人生』所収の「山人考」で、東京の「テケテン」という深夜の囃子や、汽車や学校の音までまねると言われた狸の話を書いています。

2026年10月22日

大きくふくらんだおなかの狸の根付
根付「狸の腹鼓(Tanuki no Hara Tsutsumi)」18世紀、木彫。メトロポリタン美術館所蔵(10.211.2014、パブリックドメイン)
目次
  1. プロフィール(井上円了・柳田國男の本より)
  2. 庄内の「トントン」の正体
  3. 神社の森の「太鼓」と、ふくろう
  4. 柳田國男:汽車の音もまねる狸
  5. この妖怪の読みどころ
  6. まとめ

プレ男狸がおなかをポンポコたたくやつだ!童謡でもあるよね。

メル美明治には、本当に「腹鼓が聞こえる」って町じゅうで評判になったことがあるんだって。

日本の妖怪、今回は狸の腹鼓(たぬきのはらつづみ)です。妖怪を研究した井上円了の『おばけの正体』(緒言は大正3年)、『迷信解』(明治37年)、『迷信と宗教』(序は大正5年)と、民俗学者・柳田國男の『山の人生』(大正15年)に収められた「山人考」を、青空文庫の本文で読みました。

プロフィール(井上円了・柳田國男の本より)

名前 狸の腹鼓。深夜の太鼓や囃子の音は、遠州では「狸の神楽」とも(柳田)
聞こえるとき 夜ふけ。庄内の例では、秋の晴れた夜の3時ごろから5時ごろまで
音 「トントン」と太鼓のような音。遠くなったり近くなったりする
言い伝え 狸が腹をたたいている。物まねが得意な狸は、汽車の音や学校の騒ぎまでまねる(柳田)
円了の見立て 夜ふけには遠くの音が近くに聞こえる。鍛冶屋のふいご、山寺の木魚、ふくろうの声などのまちがい

大きくふくらんだおなかの狸の根付

根付「狸の腹鼓(Tanuki no Hara Tsutsumi)」18世紀、木彫。メトロポリタン美術館所蔵(10.211.2014、パブリックドメイン)

庄内の「トントン」の正体

プレ男朝2時半から働く鍛冶屋さんの音だったんだ。狸じゃなくて、働き者の音!

神社の森の「太鼓」と、ふくろう

柳田國男:汽車の音もまねる狸

井上円了が記録した庄内の狸の腹鼓の正体は、毎朝2時半から吹きはじめる鍛冶屋のふいごの音でした。柳田國男は、狸のしわざとする根拠は「みながそう信ずる」ということ以上には何もなかった、と書いています。

この妖怪の読みどころ

まとめ


参考文献

  1. 井上円了. おばけの正体「第一〇九項 狸の腹鼓」. 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/card49355.html (閲覧日:2026年10月22日)
  2. 井上円了. 迷信解「第二段 狐狸のこと」. 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/card49373.html (閲覧日:2026年10月22日)
  3. 井上円了. 迷信と宗教「第四三段 迷信の利害 二(無害無利)」「第四八段 迷信の原因 二(経験)」. 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/card49374.html (閲覧日:2026年10月22日)
  4. 柳田國男. 山の人生(大正15年)所収「山人考」. 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001566/card52505.html (閲覧日:2026年10月22日)
  5. The Metropolitan Museum of Art. Netsuke: Tanuki no Hara Tsutsumi, 18th century(10.211.2014、Open Access/パブリックドメイン). https://www.metmuseum.org/art/collection/search/59232 (閲覧日:2026年10月22日)

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

Further Reading次に読む

  1. 妖怪狸(たぬき)とムジナは同じ?ちがう?人を化かす2つの獣の名前をめぐって、柳田國男は「中部のタヌキは関東のムジナ」。ムジナには穴熊も入っていた——柳田國男「狸とムジナ」を原文で読む
  2. 妖怪団三郎狢(だんざぶろうむじな)佐渡・相川の山の岩屋に住むという、ムジナの親分。石を投げつけた男が家に帰ると、自分とそっくりの男がもう座敷で食事をしていた——井上円了が佐渡で聞き、岩屋をたずねて書き残した話
  3. 怪談田中貢太郎「狐と狸」千年を生きた狐と狸が、少年の書生に化けて、物知りで知られる張華に議論をいどむ。「やめてくれ」と止めた墓の鳥居の神。猟犬を見ても平気な二人の正体をあばいたのは、千年の神木の火だった