幽々奇譚A Nocturnal Field Guide

YōkaiNo.185

日本の妖怪孕(はらみ)のジャン高知の浦戸湾、夜半に「ジャーン」と鳴りひびいて海の上を過ぎていく、だれも姿を見たことのないもの。それが通ると魚がさわいで、その夜はもう釣れない——物理学者・寺田寅彦は「地鳴りではないか」と考えた

孕のジャンは、高知の浦戸湾の「孕」と呼ばれる海峡で、夜半に「ジャーン」と鳴りひびいて海の上を過ぎていくとされた、姿の見えない怪異です。高知出身の物理学者・寺田寅彦は随筆「怪異考」(昭和2年)で、鹿持雅澄の筆とされる記述を引き、筑波山の北の柿岡で体験した「地鳴り」と同じものではないか、宝永・安政の大地震のころの地殻のひずみと関係があるのでは、という仮説を書きました。青空文庫の本文で紹介します。

2026年10月22日

目次
  1. プロフィール(寺田寅彦「怪異考」より)
  2. 鹿持雅澄が書いた「ジャン」
  3. 寺田が「これだ」と感じた音
  4. 地殻の「古傷」と大地震
  5. この妖怪の読みどころ
  6. まとめ

メル美「ジャン」って、音の名前なの?それとも妖怪の名前?

プレ男姿はだれも見たことがなくて、音だけが通りすぎていくんだって。

日本の妖怪、今回は孕(はらみ)のジャンです。高知出身の物理学者・寺田寅彦の随筆「怪異考」(昭和2年『思想』)を、青空文庫の本文で読みました。

プロフィール(寺田寅彦「怪異考」より)

名前 孕(はらみ)のジャン
出る所 高知の浦戸湾の「孕」。湾で山なみが切れた両側の突端と、その海峡をあわせた地名
姿 だれも見たことがない
起こること 夜半に「ジャーン」と鳴りひびいて、海の上を過ぎていく。通ると魚がさわいで、その夜はもう釣れない
寺田が聞いた話 ジャンの音とともに「水面にさざ波が立つ」
寺田の見立て 小さな地震である「地鳴り」ではないか

鹿持雅澄が書いた「ジャン」

寺田が「これだ」と感じた音

メル美さざ波と、魚がにげることまで、説明がつながるんだ!

地殻の「古傷」と大地震

寺田寅彦は、高知の孕のジャンを、筑波山の北の柿岡で体験した地鳴りと同じものではないかと考えました。寺田自身、これは多少科学的な考察にもとづいた「空想」だと断り、正しいかどうかは後日を待つほかない、と書いています。

この妖怪の読みどころ

まとめ


参考文献

  1. 寺田寅彦. 怪異考(昭和2年11月『思想』). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/card2344.html (閲覧日:2026年10月22日)

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

Further Reading次に読む

  1. 妖怪ギバ(頽馬・提馬風)夏の日盛り、旋風のようなものが来て、馬のたてがみが一本一本立ち、赤い糸のような光がさしこむと、馬はまもなく倒れる。玉虫色の小さな馬に乗った女が馬の顔に組みつく、とも——寺田寅彦は「空中の放電では」と考えた
  2. 妖怪鎌鼬(かまいたち)道を歩いていると、急に鎌で切ったような傷ができている。血は流れず、痛みも少ない——明治の井上円了は「越後に最も多い」と書き、物理学者の寺田寅彦は「旋風に飛ばされた木や竹のかけらが当たるのでは」と考えた
  3. 妖怪狸の腹鼓(たぬきのはらつづみ)秋の晴れた夜ふけ、どこからか「トントン」と太鼓の音。近づくほど遠くなる——井上円了が記録した山形・庄内の騒ぎの正体は、鍛冶屋のふいごの音だった。柳田國男は、汽車が通れば汽車の音、学校ができれば学校の騒ぎをまねると言われた狸を書いている