幽々奇譚A Nocturnal Field Guide

YōkaiNo.187

日本の妖怪鎌鼬(かまいたち)道を歩いていると、急に鎌で切ったような傷ができている。血は流れず、痛みも少ない——明治の井上円了は「越後に最も多い」と書き、物理学者の寺田寅彦は「旋風に飛ばされた木や竹のかけらが当たるのでは」と考えた

鎌鼬は、道を歩いているときに、目に見えないものに切られたような傷ができる怪異です。井上円了は『迷信解』と『迷信と宗教』で、鎌鼬を「越後に最も多い」怪事として取りあげ、当時の「空気中に真空ができて皮膚がさける」という説明を紹介しました。物理学者の寺田寅彦は「化け物の進化」で、真空の説には首をかしげ、旋風に飛ばされた木や竹のかけら、砂つぶが当たって皮膚が切れるのだろうと考えました。青空文庫の本文で紹介します。

2026年10月22日

目次
  1. プロフィール(井上円了・寺田寅彦の本より)
  2. 「鎌で切られたような傷」
  3. 円了が紹介した説明:「空気の中に真空ができる」
  4. 寺田寅彦の異論:「真空では足は破裂しない」
  5. 「侍はやられない」のはなぜ?
  6. 「説明できても、神秘は減らない」
  7. この妖怪の読みどころ
  8. まとめ

プレ男かまいたちって、鎌を持ったイタチが風に乗ってきて、人を切る妖怪だよね?

メル美明治の妖怪学者と、昭和の物理学者が、それぞれ正体を考えているんだって。

日本の妖怪、今回は鎌鼬(かまいたち)です。妖怪を研究した井上円了の『迷信解』(明治37年)と『迷信と宗教』(序は大正5年)、物理学者・寺田寅彦の随筆「化け物の進化」(昭和4年)を、青空文庫の本文で読みました。

プロフィール(井上円了・寺田寅彦の本より)

名前 鎌鼬(かまいたち)。西国では「風鎌(かざかま)」とも(寺田が引く『雲萍雑誌』)
姿 形はない。体に風がふれたと感じるだけ(円了『迷信解』)
起こること 道を歩いていると、鎌で切られたような傷が急にできる
多い土地 円了は「越後地方に最も多い」、寺田が引く『伽婢子』は「関東地方」
円了の見立て 理学で説明がつくので妖怪ではない
寺田の見立て 旋風で飛ばされた木や竹のかけら・砂つぶが当たって切れるのだろう

「鎌で切られたような傷」

円了が紹介した説明:「空気の中に真空ができる」

寺田寅彦の異論:「真空では足は破裂しない」

プレ男麦わらが板に刺さるの!?風ってそんなに強いんだ。

「侍はやられない」のはなぜ?

「説明できても、神秘は減らない」

井上円了は鎌鼬を「理学で説明がつくから妖怪ではない」とし、寺田寅彦は「旋風で飛ばされた木や竹のかけらが当たるのでは」と考えました。寺田は、説明がついても現象の神秘は減らず、本当の研究はそこから始まる、と書いています。

この妖怪の読みどころ

まとめ


参考文献

  1. 井上円了. 迷信解「第一二段 怪火、怪音および異物のこと」. 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/card49373.html (閲覧日:2026年10月22日)
  2. 井上円了. 迷信と宗教「第二三段 北陸の迷信」. 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/card49374.html (閲覧日:2026年10月22日)
  3. 寺田寅彦. 化け物の進化(昭和4年). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/card2346.html (閲覧日:2026年10月22日)

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

Further Reading次に読む

  1. 妖怪狐火(きつねび)火のあるはずのない夜の野に、ぽうっと灯る火。狐が人の骨をくわえて息を吐くと火になる?——明治の妖怪学者・井上円了は「はなはだ疑わしい」。箱根の夜道で円了自身が見た「怪火」の正体は、マッチを擦る電報の配達人だった
  2. 妖怪ギバ(頽馬・提馬風)夏の日盛り、旋風のようなものが来て、馬のたてがみが一本一本立ち、赤い糸のような光がさしこむと、馬はまもなく倒れる。玉虫色の小さな馬に乗った女が馬の顔に組みつく、とも——寺田寅彦は「空中の放電では」と考えた
  3. 妖怪天狗礫(てんぐつぶて)夜な夜な、どこからともなく家に小石が降ってくる。狐が後ろ足で石をけとばすのか、天狗が投げるのか——明治の妖怪学者・井上円了が新聞記事を集めて調べた「投石の怪」の正体は、いつも人だった