HIVと結核:HIVがある人は、ない人より結核になりやすく(WHOによると12倍)、HIVの人の死因の第1位。免疫が下がると、肺以外の結核も増えて見つけにくい。HIVと診断されたら、全員に結核の感染の検査がすすめられている
結核は、HIVとかかわりの深い病気です。WHOによると、HIVのある人はない人より12倍結核を発症しやすく、結核はHIVのある人の死因の第1位で、2024年にはHIVに関連した結核で約15万人が亡くなりました。国立健康危機管理研究機構エイズ治療・研究開発センター(ACC)の手引き(2022年)によると、HIVの人はCD4数にかかわらず結核を発症するリスクが高く、HIVと結核はおたがいに病状を進めます。免疫が下がると、肺以外の結核が増え、見つけにくくなります。HIVと診断されたすべての人に、結核の感染を調べる血液検査(IGRA)がすすめられています。

メル美結核って昔の病気だと思ってたけど、HIVと関係があるの?

プレ男HIVで治療中の人も、結核の検査をするって聞いたことがあるよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、HIVと結核の話です。WHOの結核のファクトシートと、国立健康危機管理研究機構エイズ治療・研究開発センター(ACC)の「抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き」の「結核」(2022年9月29日更新)をもとにまとめました。HIVそのものについてはHIVを見てください。
世界では:HIVの人の死因の第1位
WHOによると、
- 結核は、空気を通してうつる病気で、2024年には世界で約1,070万人が発症し、123万人が亡くなりました(うちHIVのある人が15万人)
- HIVのある人は、ない人より12倍、結核を発症しやすいとされています
- 結核は、HIVのある人の死因の第1位です
- HIVと結核は、おたがいの進行を速める危険な組み合わせです
- HIVのある人など、リスクの高い人は結核の検査(スクリーニング)を受けるようにすすめています
HIVがあると、結核はどうちがう?
ACCの手引きによると、
- HIVのある人は、CD4数にかかわらず、HIVのない人より結核を発症するリスクが高く、HIVと結核はおたがいに病状を進めます
- CD4数が350より多いときは、HIVのない人と同じように、肺の結核が多くみられます
- CD4数が200未満になると、典型的な肺結核の形が見えにくくなり、リンパ節や全身に広がる結核(粟粒結核)、肺以外の結核が多くなります。さらに50未満では、胸膜炎、心膜炎、髄膜炎を起こすこともあります
- 肺以外の結核では、熱や体重減少など、はっきりしない症状のことも多く、診断はとてもむずかしいとされています。ほかの病気(リンパ腫やカポジ肉腫など)と見分けるために、組織をとる検査が必要なことも多いです(カポジ肉腫)

HIVのある人は、結核にかかりやすく、症状もはっきりしないことがあります。熱や体重減少が続くときは、主治医に伝えてください。
HIVと診断されたら、結核の感染も調べる
ACCの手引きによると、
- 結核菌にふれたことがあるかどうかにかかわらず、HIVと診断されたすべての人に、結核の感染を調べる血液検査(IGRA:インターフェロンγ遊離試験)がすすめられています
- IGRAが陽性で、今は発症していない(活動性の結核ではない)ことを確かめられたら、潜在性結核感染症と診断し、発症を防ぐために結核の薬を使います
- ただし、IGRAの陽性は「結核に感染している、または感染したことがある」ことを示すもので、今、結核を発症しているかどうかの診断には使えません。発症しているかどうかは、たんや組織から結核菌を見つけて診断します
治療
ACCの手引きによると、
- 結核の治療は、HIVのない人と大きくは変わりません(いくつかの薬を組み合わせて6〜9か月)
- ただし、結核の薬の一部(リファマイシン系)とHIVの薬の間に飲み合わせの問題が多く、使えない薬や量の調整が必要な薬がたくさんあります
- 抗HIV療法を始める時期は、日本では結核の治療を先に始め、そのあとに抗HIV療法を始めることが多いとされています。海外のガイドラインでは、ほかの日和見感染症を防ぐため、結核の診断から早めに抗HIV療法を始めることがすすめられています(HIVの治療はいつ始める?)
- 抗HIV療法を始めたあと、免疫が回復するときに、熱やリンパ節の腫れが出たり、結核の病変が一時的に悪くなったりすることがあります(免疫再構築症候群)。多くは抗HIV療法を中断せずに対応できるとされています
(更新)研究班の「抗HIV治療ガイドライン」(2026年3月)の結核の章によると、2024年に結核患者でHIV検査を行ったのは637人で、新しく登録された結核患者の6.3%にとどまり、HIV検査がほとんど行われていない実態があるとされています。このうちHIV陽性は29人で、新しく登録された結核患者の0.3%でした。毎年0.2%前後の陽性率です。日本の結核の罹患率は、2024年に人口10万あたり8.1でした。
(更新)厚生労働省の「2025年 結核登録者情報調査年報集計結果」で確認しました。2025年に新しく登録された結核患者のうち、HIV検査を受けたのは531人(5.4%)で、そのうちHIV陽性は21人(新登録結核患者の0.2%)でした。検査を受けた人が少ないため、実際の合併の割合はわかりません
まとめ
- HIVのある人は、結核を12倍発症しやすい(WHO)。結核はHIVの人の死因の第1位
- 免疫が下がると、肺以外の結核が増え、見つけにくい
- HIVと診断されたら、全員に結核の感染の検査(IGRA)
- 感染していても発症していなければ、薬で発症を防ぐ
- 結核の薬とHIVの薬は飲み合わせに注意。主治医と相談しながら治療
参考文献
- World Health Organization. Tuberculosis(Fact sheet). https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/tuberculosis (閲覧日:2026年10月10日)
- 国立健康危機管理研究機構 エイズ治療・研究開発センター(ACC). 抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き:結核(Last updated: 2022-09-29). https://www.acc.jihs.go.jp/medics/treatment/handbook/part2/no25.html (閲覧日:2026年10月10日)
- 厚生労働省. 2025年 結核登録者情報調査年報集計結果について. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000175095_00018.html (閲覧日:2026年10月10日)
- HIV感染症および血友病におけるチーム医療の構築と医療水準の向上を目指した研究班. 抗HIV治療ガイドライン(2026年3月) 結核合併症例での抗HIV療法 要約. https://hiv-guidelines.jp/2026/part11-1.htm (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
