目次

プレ男不同意性交等罪のことはこの前読んだけど、「不同意わいせつ罪」って、性交まではいかない行為のこと?

メル美「そんなつもりじゃなかった」って言えば許されるのかも気になる。条文を読んでみよう。
今回は、不同意わいせつ罪です。刑法・刑事訴訟法の条文(e-Gov法令検索)、法務省「性犯罪関係の法改正等 Q&A」、最高裁判所の判例(裁判所ウェブサイトの判決の原文)で確かめました。不同意性交等罪は不同意性交等罪とは?で説明しています。
この記事は一般的な解説で、法律相談の代わりにはなりません。被害にあったときは、ひとりで抱えず、#8891(ワンストップ支援センター)や#8103(警察の性犯罪被害相談電話)に相談してください。
2023年7月13日からの「不同意わいせつ罪」
- 法務省のQ&Aによると、刑法と刑事訴訟法の改正法(令和5年法律第66号)は令和5年6月16日に成立し、一部を除いて同年7月13日から施行されました
- 改正前の「暴行・脅迫」(強制わいせつ罪)や「心神喪失・抗拒不能」(準強制わいせつ罪)という要件は、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」という統一的な要件に改められました
- 法務省は、これは処罰の範囲を広げるものではないが、より明確で、判断にばらつきが生じない規定になったため、本来処罰されるべき行為がより的確に処罰されるようになる、と説明しています
条文:刑法176条
| 項 | どんなとき | 刑 |
|---|---|---|
| 1項 | 8つの行為・事由などにより、同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にさせ、またはその状態に乗じて、わいせつな行為をした | 6月以上10年以下の拘禁刑(婚姻関係の有無にかかわらず) |
| 2項 | 行為がわいせつなものではないと誤信させ、または人違いをさせて(またはその誤信・人違いに乗じて)わいせつな行為をした | 1項と同じ |
| 3項 | 16歳未満の者にわいせつな行為をした(相手が13歳以上16歳未満なら、行為者が5年以上前に生まれた場合) | 1項と同じ |
- 罰金刑はありません
- 未遂も罰せられます(180条)
- 不同意わいせつ(未遂を含む)で人を死傷させれば、無期または3年以上の拘禁刑(181条1項)

プレ男罰金ですむことはないんだ。思っていたよりずっと重い。
8つの行為・事由(176条1項各号)
法務省Q&Aの説明とあわせて整理します。いずれも程度は問いませんが、その結果、相手が「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」になっていることが必要です。
| 号 | 条文 | 法務省Q&Aの説明(要約) |
|---|---|---|
| 1 | 暴行・脅迫を用いる、または受けた | 暴行は身体に向けた不法な有形力の行使、脅迫は畏怖させる害悪の告知 |
| 2 | 心身の障害を生じさせる、またはある | 身体・知的・発達・精神障害。一時的なものを含む |
| 3 | アルコール・薬物を摂取させる、またはその影響がある | 飲酒や、薬物の投与・服用 |
| 4 | 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせる、またはある | 眠っている、もうろうとしている |
| 5 | 同意しない意思を形成・表明・全うするいとまがない | 気づいてから行為までに、考える時間のゆとりがない |
| 6 | 予想と異なる事態に直面させて恐怖・驚愕させる、またはしている | いわゆるフリーズの状態 |
| 7 | 虐待に起因する心理的反応を生じさせる、またはある | 抵抗しても無駄だと考える心理状態など |
| 8 | 経済的・社会的関係上の地位にもとづく影響力による不利益を憂慮させる、またはしている | 家庭・会社・学校などでの関係。自分や親族への不利益を不安に思う |
- 法務省のQ&Aは、「嫌だ」と言ったのに、体を押さえつけられた、やめてくれると思ったのに予想に反してやめてくれず恐怖を覚えた、などで意思のとおりにならなかった場合は、不同意わいせつ罪などが成立し得るとしています
- 夫婦の間でも成立することは、改正で「婚姻関係の有無にかかわらず」と条文に明記されました(確認的な明確化。法務省Q&A)
「そんなつもりじゃなかった」は?(最高裁大法廷 平成29年)
最高裁判所大法廷 平成29年11月29日判決(平成28年(あ)第1731号)は、改正前の強制わいせつ罪(176条)についてですが、昭和45年の判例を変更して、次のように判断しました。
- 裁判要旨:「わいせつな行為」に当たるか否かの判断で、行為者の目的などの主観的事情を判断要素として考慮すべき場合はあり得るが、行為者の性的意図は強制わいせつ罪の成立要件ではない
- 判決の理由は、わいせつな行為かどうかは、行為そのものが持つ性的性質の有無と程度を十分に踏まえ、事案によっては具体的状況などの事情も総合考慮して、社会通念に照らし、その行為に性的な意味があるか、その意味合いの強さを判断する、としています
- そのうえで、今日では、成立要件の解釈では、被害者の受けた性的な被害の有無やその内容、程度にこそ目を向けるべきだ、と述べています

メル美「性的なつもりはなかった」と言っても、行為そのものの意味で判断されるんだね。どんな行為が当たるかは、事件ごとに判断されるみたい。
痴漢は、条例違反?不同意わいせつ?
- 電車などでの痴漢は、各都道府県の迷惑防止条例などで検挙される一方、行為によっては刑法の不同意わいせつ罪として扱われることもあります。検挙の数字は痴漢・盗撮の検挙データで
- しつこいナンパやつきまといの法律は、しつこいナンパは何の罪?で
時効と、裁判での配慮
- 不同意わいせつ罪(未遂を含む)の公訴時効は12年です。被害者が18歳未満のときは、犯罪行為が終わった時から18歳になる日までの期間が加わります(刑事訴訟法250条3項・4項)
- ケガをさせた不同意わいせつ致傷(181条)の公訴時効は20年です(250条3項1号)
- 裁判で証言するときの付添い・遮へい・ビデオリンクや、氏名を秘匿するしくみは、性犯罪の被害者を裁判で守るしくみで

不同意わいせつ罪は6月以上10年以下の拘禁刑で、罰金刑はありません。条文には「婚姻関係の有無にかかわらず」と書かれていて、夫婦の間でも成立します。
被害を受けたら
- 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター #8891(はやくワンストップ)
- 警察の性犯罪被害相談電話 #8103(ハートさん)。危険が迫っていれば110番
- 体を守るためにできること、証拠の残し方は、性暴力の被害にあったらで
まとめ
- 不同意わいせつ罪(刑法176条)は6月以上10年以下の拘禁刑。罰金刑はない。未遂も処罰
- 8つの行為・事由(暴行・脅迫、アルコール・薬物、睡眠、フリーズ、立場の影響力など)で、同意しない意思を示せない状態にして、またはその状態に乗じて行えば成立
- 夫婦でも成立。16歳未満への行為(13〜15歳は5歳以上年上の場合)も同じ
- 「わいせつ」かどうかは行為の性的な意味で判断。性的意図は成立要件ではない(最高裁大法廷 平成29年11月29日)
- 致傷なら無期または3年以上。公訴時効は12年(18歳未満の被害は延長)
- 被害の相談は #8891・#8103
参考文献
- 刑法(明治40年法律第45号)第176条、第180条、第181条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045 (閲覧日:2026年10月22日)
- 刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第250条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 (閲覧日:2026年10月22日)
- 法務省. 性犯罪関係の法改正等 Q&A(令和5年7月). https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 最高裁判所大法廷 平成29年11月29日判決(平成28年(あ)第1731号). 刑集71巻9号467頁. 裁判所ウェブサイト. https://www.courts.go.jp/hanrei/87256/detail2/index.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 内閣府男女共同参画局. 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター. https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 警察庁. 性犯罪被害相談電話全国共通番号「#8103」. https://www.npa.go.jp/higaisya/seihanzai/seihanzai.html (閲覧日:2026年10月22日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。