
プレ男ネットで「性病をうつしたら傷害罪で逮捕される」って書いてあるのを見て、こわくなった。症状がなくても、うつしてたら犯罪なの?

メル美反対に、うつされた側は、相手に何か言えるのかな。
今回は、性感染症をうつすことと法律です。最高裁判所の判例(裁判所ウェブサイトの判決の原文)と、刑法・民法・感染症法の条文(e-Gov法令検索)で確かめました。
この記事は一般的な解説で、法律相談の代わりにはなりません。どんな場合に罪や賠償の責任になるかは、事件ごとの事情で判断されます。この記事は、だれかを責めるためのものではありません。
傷害罪の条文
| 罪 | 条文 | 罰則 |
|---|---|---|
| 傷害罪 | 刑法204条「人の身体を傷害した者」 | 15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
- 条文には「暴行によって」という言葉はありません
最高裁(昭和27年):病気をうつすことも「傷害」
最高裁判所第二小法廷 昭和27年6月6日判決(昭和25年(あ)第1441号 傷害、性病予防法違反被告事件)。
- 判示事項:「傷害罪が暴行を手段としないで成立する一事例」
- 裁判要旨:「性病を感染させる懸念のあることを認識しながら婦女子に対し詐言を弄して性交し、その結果病毒を感染させた場合、傷害罪が成立する」
判決の理由は、おおよそ次のとおりです。
- 傷害罪は、他人の身体の生理的機能を毀損するものである以上、その手段が何であるかを問わない
- 本件のように、暴行によらずに病毒を他人に感染させる場合にも成立する
- 性病を感染させる懸念があることを認識して本件の行為に及び、他人に病毒を感染させた以上、当然傷害罪は成立する

プレ男殴ったりしなくても、病気をうつすことが「傷害」になるんだ。

メル美ただこの事件は、うつすおそれを「知りながら」「うそを言って」性交した、という事件なんだね。知らずにうつした場合まで同じとは書いていないよ。
- 判決が示しているのは、感染させる懸念を認識しながら、うそを言って性交し、感染させたという事件での判断です
- 気づいていなかった場合や、伝えたうえでの場合などがどう扱われるかは、この判決からは決まりません。この記事では、そうした場合の当てはめまでは扱いません
この事件のころは「性病予防法」もあった
- この事件では、傷害罪とあわせて性病予防法違反も問われていました(事件名)
- 性病予防法(昭和23年法律第167号)は、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)の附則3条により廃止されました。感染症法の施行は平成11年(1999年)4月1日です
うつされた側は:民法の損害賠償
- 民法709条は、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者は、生じた損害を賠償する責任を負うと定めています。710条は、身体などを害した場合、財産以外の損害(精神的な苦痛)も賠償の対象としています
- 実際に賠償が認められるかどうかや金額は、事件ごとの事情で判断されます。この記事では個別の当てはめは扱いません
検査と治療、伝え方
- 病気ごとの症状や検査・治療は、性感染症ノートの淋菌感染症などの記事で説明しています
- 診断されたときに、パートナーにどう伝えるかは、パートナーへの伝え方の記事で
- 同意のない性行為はそれ自体が犯罪です。不同意性交等罪の記事もどうぞ

最高裁は、性病を感染させる懸念を認識しながら、うそを言って性交し、感染させた事件で、傷害罪が成立すると判断しています。
相談先
- 被害を受けた、相手とトラブルになっているときは、警察相談専用電話 #9110(発信地を管轄する警察本部などの総合窓口)
- 性的な被害は、性犯罪被害相談電話 #8103(ハートさん)、または性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター #8891
- 賠償など法的なことは、弁護士や法テラス(サポートダイヤル 0570-078374)へ
まとめ
- 傷害罪(刑法204条)は15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。条文に「暴行によって」という限定はない
- 最高裁 昭和27年6月6日:性病を感染させる懸念を認識しながら、うそを言って性交し、感染させた事件で、傷害罪が成立
- 傷害罪は、手段を問わず、暴行によらず病毒を感染させる場合にも成立する(同判決)
- 当時の性病予防法は、1999年4月1日施行の感染症法で廃止
- うつされた側は、民法709条・710条の損害賠償を求める方法も。検査と治療は性感染症ノートで
参考文献
- 最高裁判所第二小法廷 昭和27年6月6日判決(昭和25年(あ)第1441号 傷害、性病予防法違反被告事件). 刑集6巻6号795頁. 裁判所ウェブサイト. https://www.courts.go.jp/hanrei/54383/detail2/index.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 刑法(明治40年法律第45号)第204条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045 (閲覧日:2026年10月22日)
- 民法(明治29年法律第89号)第709条、第710条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (閲覧日:2026年10月22日)
- 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)附則第1条、第3条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000114 (閲覧日:2026年10月22日)
- 警察庁. 令和2年版 警察白書 第2章第3節 第3項 相談業務の充実強化(警察相談専用電話「#9110」). https://www.npa.go.jp/hakusyo/r02/honbun/html/w2233000.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 警察庁. 性犯罪被害相談電話全国共通番号「#8103」. https://www.npa.go.jp/higaisya/seihanzai/seihanzai.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 内閣府男女共同参画局. 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター. https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 厚生労働省. その他の相談先(法テラス・サポートダイヤル). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_sonota.html (閲覧日:2026年10月22日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。