
メル美海外で結婚した友だちが、離婚になったら子どもを連れて日本に帰りたいって言ってた。自分の子どもなんだから、連れて帰っていいんだよね?

プレ男相手の国の親からすると、子どもが急にいなくなるってことだよね。国をまたぐと、どの国のルールになるんだろう。
今回は、国際結婚・国際離婚と「ハーグ条約」です。外務省のハーグ条約のページ(条約の概要、国内実施法の概要、子を連れての国境を越えた移動に関する注意点、ファクトシート)、外交青書2026、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(実施法)の条文(e-Gov法令検索)で確かめました。国際結婚の数は国際結婚はどれくらい?にまとめています。
この記事は一般的な解説で、法律相談の代わりにはなりません。ほかの国の法律や手続は国ごとにちがいます。具体的な相談は、外務省領事局ハーグ条約室や弁護士にしてください。
ハーグ条約とは
外務省の説明によると、ハーグ条約は、
- 国境を越えた子の不法な連れ去りや留置をめぐる紛争を解決するための国際的な枠組みとして、元の居住国への子の返還や、国境を越えた親子の交流を実現するための手続、締約国間の協力などを定めた条約です
- 1970年代ごろから、国際結婚の増加などで、一方の親がもう一方の親の同意を得ずに子を自分の母国や第三国に移動させる「子の連れ去り」が問題視され、1980年10月に、ハーグ国際私法会議(HCCH)で採択されました
- 日本は2014年に締結し、2014年4月1日に日本について発効しました。同じ日に実施法(平成25年法律第48号)も施行され、外務大臣(外務省)が日本の中央当局になっています
- 外務省のページの締約国一覧には103か国が載っています(日本を含む。一部の国は日本との間では未発効)

プレ男2014年からなんだ。それまでは、国をまたいだ連れ去りを解決する共通のルールがなかったってことか。
原則は「元の国に返す」
外務省の「子を連れての国境を越えた移動に関する注意点」は、次のように説明しています。
- ハーグ条約では、国境を越えて子が不法に連れ去られた場合には、原則として、子を元の居住国に迅速に返還することになっています(例外的に、返還しなくてもよいと裁判所が判断することもあります)
- 一方の親が、もう一方の親(親権者など監護権を持つ人)の同意を得ることなく国境を越えて子を日本または海外へ連れて行き、もう一方の親が返還を申請した場合には、子は原則として元の居住国に戻されます
日本の裁判所が返還を命じる条件(実施法27条)
日本に連れ去られた子について、家庭裁判所は、次のすべてにあたると認めるときは、子の返還を命じなければなりません。
- 子が16歳に達していないこと
- 子が日本国内にいること
- 元の国(常居所地国)の法令によれば、連れ去りまたは留置が、申立人の子についての監護の権利を侵害するものであること
- 連れ去り・留置の時に、元の国が条約の締約国であったこと
返還しなくてよい場合(実施法28条)
次のどれかがあると認めるときは、裁判所は返還を命じてはなりません(1・2・3・5でも、一切の事情を考えて返還が子の利益になると認めれば、返還を命じることができる)。
| 返還拒否事由(要約) | |
|---|---|
| 1 | 連れ去り・留置から1年を経過したあとに申し立てられ、かつ子が新しい環境に適応している |
| 2 | 申立人が、その時に現実に監護の権利を行使していなかった |
| 3 | 申立人が、連れ去り・留置に同意し、またはあとで承諾した |
| 4 | 返還すると、子の心身に害悪を及ぼすなど、子を耐え難い状況に置く重大な危険がある |
| 5 | 子の年齢・発達の程度から子の意見を考えるのが適当な場合に、子が返還を拒んでいる |
| 6 | 返還が、日本の人権と基本的自由の保護の基本原則で認められない |
- 4の「重大な危険」を判断するときは、元の国で子が申立人から暴力等を受けるおそれ、相手方(連れて来た親)が子に心理的外傷を与えるような暴力等を申立人から受けるおそれ、元の国で子を監護するのが難しい事情の有無などを考慮します(28条2項)
- 子の返還の事件は、子の住所地によって東京家庭裁判所か大阪家庭裁判所が扱います(32条)
- 裁判中、子を国外に出させるおそれがあるときは、出国禁止命令や、子の旅券の外務大臣への提出命令を申し立てることができます(122条)

メル美暴力のおそれがあるかどうかも、ちゃんと考えることになっているんだね。
刑事事件になることも
外務省の注意点のページは、次のようにも説明しています。
- 国によっては、父母の双方が親権を持つ場合に、一方の親がもう一方の親の同意を得ずに子を国外に連れ出すことを刑罰の対象にしていることがあり、居住していた国に再入国したときに子を誘拐した犯罪被疑者として逮捕されたり、ICPOを通じて国際手配されたりする事案も起きています
- ハーグ条約は、子を連れ去った親の刑事訴追については何も定めていません
- DVから逃れるためにやむをえず子を連れて外国に移動しようとする場合でも、刑事訴追などのおそれがあるので十分に注意するよう呼びかけ、国内外でDVについて相談できる窓口(大使館・総領事館や、在外公館が委託契約を結んでいるDV被害者支援団体など)を案内しています
- 子の旅券がもう一方の親の同意なく発給されるのが心配なときは、日本の旅券なら、都道府県旅券事務所または在外公館に、未成年の子の旅券発給に対する不同意書を出すことができます
外務省(中央当局)の援助
実施法と外務省の説明によると、
- 日本に連れ去られた子の返還を求める親は、外務大臣に外国返還援助を申請できます(実施法4条)。日本から外国に連れ去られた子の返還を求める日本国返還援助(11条)、子との交流援助(16条など)の申請もあります
- 外務省は、子の所在の特定、当事者間の連絡の仲介、ADR機関(裁判外紛争解決手続)による話合いの費用負担、弁護士の紹介、親子交流支援団体の紹介と費用負担などをしています(ファクトシート、外交青書2026)
- 子の返還の裁判を申し立てるのは残された親で、外務省の援助決定は申立ての要件ではありません(ファクトシート)

ハーグ条約では、国境を越えて子が不法に連れ去られた場合、原則として子を元の居住国に返還します。日本では2014年4月1日に発効し、外務省が中央当局です。
数字で見る
外交青書2026によると、ハーグ条約の発効から2025年12月末まで(11年9か月)に、
| 外務省が受け付けた援助申請 | 日本にいる子に関する申請 | 外国にいる子に関する申請 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 返還援助申請 | 239件 | 222件 | 461件 |
| 子との交流援助申請 | 159件 | 53件 | 212件 |
- 日本に連れ去られた子の返還が求められた事案のうち、85件で子の返還が実現し、62件で返還しないとの結論に
- 外国に連れ去られた子の返還が求められた事案では、85件で返還が実現し、49件で返還しないとの結論に
- 外務省のファクトシート(2025年4月1日)によると、日本に連れ去られた子について返還援助を決定した195件のうち、結論が出た141件の解決方法は、当事者間の話合い(ADRを含む)40件、裁判内調停46件、裁判所での和解6件、裁判所の決定49件でした
相談先
- 外務省領事局ハーグ条約室:電話 03-3580-3311(代表)、平日9時〜17時(12時30分〜13時30分を除く)。メールの宛先は外務省のハーグ条約のページに載っています
- 国内の離婚・子の監護の手続は、離婚調停や共同親権を深掘りで。結婚・離婚の法律の全体は結婚・離婚・浮気の法律で
- 国内での別居中の子の連れ去りは、別居中に子どもを連れて行かれたらで
- 弁護士の支援は、法テラス(サポートダイヤル 0570-078374)へ
まとめ
- ハーグ条約は、国境を越えた子の不法な連れ去り・留置について、原則として元の居住国へ子を返還する条約。日本では2014年4月1日に発効し、外務省が中央当局
- 日本の裁判所は、子が16歳未満などの事由があれば返還を命じる。1年経過+新しい環境に適応、重大な危険、子の拒否などの拒否事由もある
- 国によっては、同意のない連れ出しが犯罪になり、再入国時の逮捕や国際手配もある
- 2025年12月末までに外務省が受け付けた申請は673件(返還461件・交流212件)
- 相談は外務省ハーグ条約室へ
参考文献
- 外務省. ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約). https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hague/index.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 外務省. ハーグ条約の締結と国内実施法の概要(令和8年6月15日). https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_000843.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 外務省. 子を連れての国境を越えた移動に関する注意点(令和8年6月25日). https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_000852.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 外務省領事局ハーグ条約室. ファクトシート 日本におけるハーグ条約の実施状況(2025年4月1日). https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100643788.pdf (閲覧日:2026年10月22日)
- 外務省. 外交青書2026 第4章第2節4 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)の実施状況. https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/2026/html/chapter4_02_04.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(平成25年法律第48号)第2条、第4条、第11条、第16条、第26条、第27条、第28条、第32条、第122条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/425AC0000000048 (閲覧日:2026年10月22日)
- 厚生労働省. その他の相談先(法テラス・サポートダイヤル). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_sonota.html (閲覧日:2026年10月22日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。