
プレ男別居中の夫婦で、一方の親が保育園から子どもを連れて行っちゃったって話を聞いた。親どうしなら、法律では問題にならないの?

メル美連れて行かれた側は、どうやって子どもを戻してもらえばいいんだろう。いちばん不安なのは子どもだよね。
今回は、別居中の子の連れ去りと法律です。裁判所の手続案内(子の監護者の指定調停、子の引渡し調停)、最高裁判所の決定(裁判所ウェブサイトの判示事項・裁判要旨)、民法・家事事件手続法・刑法の条文(e-Gov法令検索)で確かめました。
この記事は一般的な解説で、法律相談の代わりにはなりません。子の監護をどう決めるかは、子の年齢や生活の状況など、事件ごとの事情で変わります。早めに弁護士や法テラス(0570-078374)に相談してください。
家庭裁判所の2つの手続
子の監護者の指定
裁判所の手続案内によると、
- 別居中(離婚前)の父母や、共同親権として離婚した父母の間などで、子と同居し、子の身上監護全般を単独で決定できる「監護者」を定めることができます
- 共同親権の父母は、原則として、子の身上監護に関する重大な行為(居所の決定、心身に重大な影響を与える医療行為の決定、進学先の選択など)を共同して決める必要がありますが、一方が監護者に指定されると、こうした行為も含めて身上監護全般を単独で決めることができます(財産管理や身分行為の法定代理などは単独ではできません)
- 父母の協議が調わないとき、または協議ができないときは、家庭裁判所の調停または審判を利用できます(民法766条)
- 調停では、申立人が監護者を希望する事情、今までの養育状況、双方の経済力や家庭環境、子の性格、就学の状況、生活環境などを聴き、子の利益を優先した取決めができるよう話合いが進められます。まとまらなければ審判に移り、裁判官が一切の事情を考えて判断します
子の引渡し
- 子の居所を決める親権行使者や監護者に指定された親、離婚時に単独の親権者に指定された親が子と同居していたところ、もう一方の親などが子を連れて行き、戻そうとしないときは、子を戻すために子の引渡しの調停または審判を申し立てられます(裁判所)
- 婚姻中で、子と同居していない親が、監護者などの指定を受けていないまま子の引渡しを求めるときは、原則として、監護者の指定などの申立てをあわせて行う必要があります(裁判所)
- 裁判所は、子の引渡しは子にとって生活の場所が変わることを意味するので、生活の場の変化が子の健全な成長に悪影響を与えないよう留意する必要がある、としています
| 項目 | 子の監護者の指定調停/子の引渡し調停(裁判所の案内) |
|---|---|
| 申し立てる人 | 父、母 |
| 申立先 | 相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所 |
| 費用 | 子ども1人につき収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手 |
| 主な書類 | 申立書とその写し、未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)、進行に関する照会回答書 など |

プレ男「引き渡して」だけじゃなく、「どっちが監護するか」もセットで決めることが多いんだね。
急ぐときは「審判前の保全処分」
- 裁判所の手続案内によると、子に差し迫った危険がある場合など、今の状態を放置していたのでは調停・審判による解決が難しくなる場合には、審判の申立てとは別に保全処分の申立てができます。申立てがあると、家庭裁判所は、申立人に子を仮に引き渡すよう命ずる処分をするかどうかを判断します
- 家事事件手続法157条1項3号は、子の監護に関する処分の審判または調停の申立てがあった場合に、強制執行を保全し、または子その他の利害関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、保全処分を命ずることができると定めています
- 子の監護について仮の地位を定める仮処分を命ずる場合には、原則として、15歳以上の子の陳述も聴かなければなりません(157条2項)
刑事:親でも「未成年者略取罪」になりうる
刑法224条:未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の拘禁刑に処する。
最高裁判所第二小法廷 平成17年12月6日決定(平成16年(あ)第2199号 未成年者略取被告事件、刑集59巻10号1901頁)の判示事項と裁判要旨は、次のとおりです(裁判所ウェブサイト)。
- 判示事項:母の監護下にある2歳の子を、別居中の共同親権者である父が有形力を用いて連れ去った略取行為につき、違法性が阻却されないとされた事例
- 裁判要旨:母の監護下にある2歳の子を有形力を用いて連れ去った略取行為は、別居中の共同親権者である父が行ったとしても、監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情が認められず、行為態様が粗暴で強引なものであるなど判示の事情の下では、違法性が阻却されるものではない
- この決定には補足意見と反対意見があります。参照法条は刑法35条(正当行為)、224条、民法818条、820条です
- 未成年者略取罪は、告訴がなければ公訴を提起できない罪です(刑法229条)

メル美「親だから何をしてもいい」わけじゃないんだね。どう連れて行ったか、本当に必要だったかが見られるんだ。

別居中の父母の間でも、子を連れて行かれて戻されないときは、家庭裁判所に子の監護者の指定や子の引渡しの調停・審判を申し立てられます。子に差し迫った危険があるときは、保全処分の申立てもできます。
DVから避難するときは
- 2026年4月からの共同親権のもとでも、子の利益のため急迫の事情があるときは、父母の一方が親権を行うことができます(民法824条の2第1項3号)。くわしくは共同親権を深掘りで
- DVの保護命令や相談先はDV防止法は2024年4月に改正、避難先の住所を相手に知られないための手続は逃げた先の住所を、元パートナーに知られないためにで
- 国境を越えた子の連れ去りは、国際結婚が終わるとき、子どもを連れて帰国していい?で
相談先
- 調停・審判の申立ては、相手方の住所地の家庭裁判所へ(手続の案内は裁判所のウェブサイト)
- 弁護士の支援は、法テラス(サポートダイヤル 0570-078374)へ
- 離婚の話し合いの進め方は、離婚の話し合いがまとまらないときの「離婚調停」で
まとめ
- 別居中に子を連れて行かれたら、家庭裁判所に子の監護者の指定・子の引渡しの調停・審判(子1人につき収入印紙1,200円分)
- 監護者になると、共同親権のもとでも居所の決定などを含む身上監護全般を単独で決められる
- 子に差し迫った危険があるときなどは、審判前の保全処分で子を仮に引き渡すよう求められる
- 最高裁(平成17年12月6日決定)は、別居中の共同親権者の父でも、母の監護下の2歳の子を有形力を用いて連れ去った行為について、未成年者略取罪の違法性は阻却されないとした
- いちばん大事なのは子の利益。ひとりで抱えず、早めに専門家に相談を
参考文献
- 裁判所. 子の監護者の指定調停. https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_21/index.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 裁判所. 子の引渡し調停. https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_09/index.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 最高裁判所第二小法廷 平成17年12月6日決定(平成16年(あ)第2199号 未成年者略取被告事件). 刑集59巻10号1901頁. 裁判所ウェブサイト. https://www.courts.go.jp/hanrei/50081/detail2/index.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 民法(明治29年法律第89号)第766条、第824条の2. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (閲覧日:2026年10月22日)
- 家事事件手続法(平成23年法律第52号)第105条、第157条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000052 (閲覧日:2026年10月22日)
- 刑法(明治40年法律第45号)第35条、第224条、第229条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045 (閲覧日:2026年10月22日)
- 厚生労働省. その他の相談先(法テラス・サポートダイヤル). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_sonota.html (閲覧日:2026年10月22日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。