暗号資産の流出事件と「分別管理」:2018年はNEM約580億円相当(約26万人)、2024年は4,502.9BTCが交換業者から流出。法律は、利用者の暗号資産を業者のものと分けて、安全な方法で管理し、監査を受けるよう求めている
暗号資産交換業者からの流出事件と、利用者の資産を守るしくみを、資金決済法63条の11・63条の11の2(e-Gov法令検索)、金融庁「仮想通貨交換業者に対するこれまでの対応等」(2018年4月27日)、関東財務局「株式会社DMM Bitcoinに対する行政処分について」(令和6年9月26日)でまとめました。2018年1月26日、コインチェックでネットに接続された状態で管理していたNEM(580億円相当、被害者約26万人)が流出。2024年5月31日には、DMM Bitcoinから顧客の預かり資産4,502.9BTCが流出し、関東財務局は秘密鍵の単独での署名や一括管理などの重大な問題を指摘して業務改善命令を出しました。資金決済法は、利用者の金銭は信託、暗号資産は自己のものと分別して内閣府令で定める安全な方法で管理し、定期に公認会計士・監査法人の監査を受けることを求めています。

プレ男取引所に預けてたビットコインが、ハッキングで盗まれるなんてことあるの? そうなったら自分のお金はどうなるんだろ…

メル美日本でも大きな流出事件が何度かあったよね。法律ではどう守られてるのか知りたい
今回は、暗号資産の流出事件と、利用者の資産を守る「分別管理」のしくみです。資金決済法(63条の11・63条の11の2)の条文(e-Gov法令検索)、金融庁「仮想通貨交換業者に対するこれまでの対応等」(2018年4月27日)、関東財務局「株式会社DMM Bitcoinに対する行政処分について」(令和6年9月26日)で確認しました。
この記事はしくみと過去の事例の説明です。特定の交換業者や暗号資産をすすめたり、評価したりするものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
日本で起きた大きな流出事件
| コインチェック(2018年) | DMM Bitcoin(2024年) | |
|---|---|---|
| 発生日 | 2018年1月26日 | 2024年5月31日 |
| 流出したもの | NEM(580億円相当) | ビットコイン(4,502.9BTC) |
| 被害者数など | 約26万人 | 顧客からの預かり資産 |
| 当時の状況 | ネットに接続された状態で管理していた | 秘密鍵の扱いなどに重大な問題(下で説明) |
| 行政の対応 | 報告徴求命令(1月26日)、業務改善命令(1月29日・3月8日) | 業務改善命令(2024年9月26日) |
- コインチェックは当時、登録申請中の「みなし業者」でした
行政処分で指摘されたこと(DMM Bitcoin)
関東財務局は、立入検査などの結果、次のような重大な問題を指摘しました。
- 暗号資産を送るときの秘密鍵の署名作業を1人で行い、牽制が働いていなかった
- 秘密鍵を一括で管理するなど、金融庁の事務ガイドラインに反する扱いを、認識しながら続けていた
- 預かり資産が増えているのに、複数のウォレットで分散管理するなどの対応を検討していなかった
- システムを統括する役員がおらず、権限が一部の人に集中し、内部監査も独立していなかった
- 流出時の証拠保全(ログの保存)が適切でなかった

メル美「鍵」を1人で持って、1か所で管理していたのが問題だったんだ。家の合鍵を全部同じ引き出しに入れてたようなもの…
法律が求める「分別管理」(資金決済法)
利用者の金銭(63条の11第1項)
- 暗号資産交換業者は、利用者の金銭を自分の金銭と分けて管理し、信託会社などに信託しなければなりません
利用者の暗号資産(63条の11第2項)
- 利用者の暗号資産を自分の暗号資産と分けて管理しなければなりません
- さらに、利用者の暗号資産は、利用者の保護に欠けるおそれが少ない方法(内閣府令で定める方法)で管理しなければなりません。利便のために、この方法以外で管理してよいものは、内閣府令で要件が決められています
履行保証暗号資産(63条の11の2)
- 上の「この方法以外で管理してよい」利用者の暗号資産と同じ種類・同じ数量の暗号資産を、業者が自分のものとして持ち、ほかの自己の暗号資産と分けて、安全な方法で管理しなければなりません。流出に備えた「弁償用の準備」にあたります
監査(63条の11第3項)
- 分別管理の状況について、定期に公認会計士または監査法人の監査を受けなければなりません
利用者ができること
- 取引する業者が金融庁に登録された暗号資産交換業者か確かめる(→無登録業者の見分け方)
- 業者の分別管理の状況や監査の結果などの開示を確かめる
- 1つの業者に大きな金額を預けっぱなしにしない
- 暗号資産そのもののしくみとリスクは暗号資産のしくみと規制へ
ブロックチェーン上のデジタルトークンのもう1つの形はNFTのしくみと注意点へ。
まとめ
- 日本では、2018年にNEM 580億円相当、2024年に4,502.9BTCが交換業者から流出した
- 2024年の処分では、秘密鍵の単独での署名・一括管理、分散管理の不足などが指摘された
- 法律は、利用者の金銭は信託、暗号資産は分別して安全な方法で管理、同じ量の履行保証暗号資産、定期の監査を求めている
- 登録業者か、分別管理の開示はどうかを確かめ、預けっぱなしにしない
参考文献
- 資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)第63条の11・第63条の11の2(e-Gov法令検索). https://laws.e-gov.go.jp/law/421AC0000000059 (閲覧日:2026年10月10日)
- 金融庁. 仮想通貨交換業者に対するこれまでの対応等(2018年4月27日、仮想通貨交換業等に関する研究会 資料2). https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20180427-2.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 関東財務局. 株式会社DMM Bitcoinに対する行政処分について(令和6年9月26日). https://lfb.mof.go.jp/kantou/kinyuu/pagekthp0270000030.html (閲覧日:2026年10月10日)
- 金融庁. 株式会社DMM Bitcoinに対する行政処分について(令和6年9月26日). https://www.fsa.go.jp/news/r6/sonota/20240926/20240926.html (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。