出光興産の強みとは:石油製品(燃料油)がセグメント利益の約4分の3。化学品・潤滑油・電力・資源(石油・天然ガス・石炭)も。2026年3月期は売上高8兆1,059億円(−11.8%)・営業利益2,122億円(+30.8%)。原油価格の急騰でプラスのタイムラグ
出光興産を、2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年5月12日)で分析しました。売上高8兆1,059億円(−11.8%、原油価格の下落)、営業利益2,122億円(+30.8%、営業利益率2.6%、燃料油の原油価格急騰によるプラスのタイムラグ影響が資源の石炭市況の下落を上回る)、経常利益2,296億円(+6.9%)、親会社株主に帰属する当期純利益1,719億円(+65.2%)、ROE9.4%、自己資本比率36.0%。セグメント損益(営業損益+持分法投資損益)は、燃料油1,777億円(+45.5%、在庫評価影響除き2,071億円)、資源331億円(−57.2%)、高機能材334億円(+18.5%)、基礎化学品−68億円、電力・再生可能エネルギー−18億円。2027年3月期からIFRSを任意適用し、在庫影響除きの当期利益900億円の予想。年36円の配当、在庫影響除き当期利益に対して総還元性向50%以上と累進配当の方針。ENEOSホールディングスとの比較と、見ておくべき数字も。売買をすすめるものではありません。

メル美原油の値段が上がると、石油の会社はもうかるの?

プレ男出光興産の決算短信を見ると、原油価格が急に上がったことで、燃料油の利益が増えたって書いてあるよ
企業分析の連載、136社目は出光興産です。2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年5月12日)で確認しました。比較には、この連載のENEOSホールディングスの強みとはで確認した数字を使っています。
この記事は会社のしくみと数字の解説で、出光興産株の売買をすすめるものではありません。目標株価や「買い時」も書きません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
1. ひとことで言うと
原油を精製した石油製品(燃料油)の生産・販売を中心に、オレフィンなどの基礎化学品、潤滑油・電子材料などの高機能材、発電・電力販売、原油・天然ガス・石炭の開発と生産も手がける会社
| 項目(日本基準・連結) | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 8兆1,059億円 | −11.8% |
| 営業利益 | 2,122億円 | +30.8% |
| 営業利益率 | 2.6% | 前期 1.8% |
| 経常利益 | 2,296億円 | +6.9% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1,719億円 | +65.2% |
| ROE(自己資本当期純利益率) | 9.4% | 前期 5.9% |
| 自己資本比率 | 36.0% | 前期 36.0% |
| 配当 | 年36円(配当性向25.6%) | 前期 36円 |
- 売上高が減ったのは、燃料油の原油価格の下落などによるものです
- 営業利益が増えたのは、燃料油で原油価格の急騰によるプラスのタイムラグ影響が、資源での石炭市況の下落の影響を上回ったためです
- 特別損益では、負ののれん発生益(84億円)を計上した一方、固定資産の減損損失(181億円)を計上しました
2. 何で稼いでいるか
セグメント損益は、セグメントの営業損益と持分法投資損益の合計です。
| セグメント | 中身(決算短信の記載) | 売上高 | セグメント損益 |
|---|---|---|---|
| 燃料油 | 石油精製製品の生産・販売・輸出入、トレーディング | 6兆7,934億円(−11.7%) | 1,777億円(+45.5%) |
| 高機能材 | 潤滑油、機能化学品、電子材料、機能舗装材、アグリバイオなど | 5,032億円(−0.0%) | 334億円(+18.5%) |
| 資源 | 原油・天然ガス・石炭などの探鉱・開発・生産・販売、地熱 | 2,035億円(−23.3%) | 331億円(−57.2%) |
| 基礎化学品 | オレフィン・アロマ製品 | 4,914億円(−16.3%) | −68億円 |
| 電力・再生可能エネルギー | 火力・太陽光・風力などの発電、電力販売 | 982億円(−23.0%) | −18億円 |
- その他を含むセグメント損益の合計(調整額の前)2,365億円のうち、燃料油が約75%です(計算値)
- 燃料油の在庫評価影響を除いたセグメント損益は2,071億円です
3. 強み
会社の資料にある事実から、この連載で強みと考えた点です。
① 燃料油の規模
- 燃料油の売上高は6兆7,934億円で、売上高の8割超を占めます(計算値)。セグメント損益は、大規模な定期修繕の費用が増えた一方、ホルムズ海峡の封鎖などによる原油価格の上昇のプラスのタイムラグ影響などで+45.5%でした
② 高機能材の伸び
- 高機能材は、潤滑油の海外販売が好調で、アグリライフ事業の新規連結会社の寄与もあり、+18.5%でした
③ 株主還元の方針
- 会社は、2026〜2030年度に在庫影響除き当期利益に対して総還元性向50%以上の株主還元を続け、2026年度の年間配当36円を起点とした累進配当を導入するとしています(→配当方針の読み方)
4. 弱み・リスク
① 原油価格と在庫評価
- 燃料油の利益は、原油価格の動きとタイムラグで大きく変わります。会社は、イラン情勢の悪化やホルムズ海峡の封鎖による原油価格とエネルギー需要の不安定化を挙げています(→原油価格を動かすもの)
② 資源の市況
- 資源のセグメント損益は、石炭市況の下落などで57.2%減りました
③ 赤字の事業
- 基礎化学品は製品マージンが低水準で68億円の損失、電力・再生可能エネルギーも18億円の損失でした
5. ライバルとの比較
石油元売り大手のENEOSホールディングスと比べます。会計基準(出光興産は日本基準、ENEOSはIFRS)と、在庫影響の扱いが違うので、おおまかな比較です。
| 出光興産 | ENEOSホールディングス | |
|---|---|---|
| 売上高 | 8兆1,059億円(−11.8%) | 11兆7,655億円(−4.5%) |
| 営業利益 | 2,122億円(+30.8%) | 4,666億円(+339.8%) |
| 親会社に帰属する当期(純)利益 | 1,719億円(+65.2%) | 2,587億円(+14.4%) |
| ROE | 9.4% | 8.0% |
| 自己資本比率 | 36.0% | 37.1% |
- 規模はENEOSが大きく、ROEは出光興産が上回りました(→ENEOSホールディングスの強みとは)。資源開発の会社はINPEXの強みとはも
6. 投資プレイヤー的チェックポイント
出光興産の決算を見るときに、毎回確かめておきたい数字です(売買の判断基準ではありません)。
| 見ておく数字 | 2026年3月期 | どこに書いてある |
|---|---|---|
| 燃料油の在庫評価影響除きの損益 | 2,071億円 | 決算短信(セグメント別利益) |
| 資源のセグメント損益 | 331億円 | 決算短信(セグメント別利益) |
| 会社の業績予想(IFRS) | 2027年3月期 在庫影響除きの当期利益900億円、当期利益750億円 | 決算短信(連結業績予想) |
| 前提の原油価格・為替 | ドバイ原油81.3ドル/バレル、151.3円/ドル | 決算短信(連結業績予想) |
| 配当 | 年36円、2027年3月期予想36円 | 決算短信 |
- 2027年3月期からIFRSを任意適用するため、来期は数字の見え方が変わります
- 指標の読み方はPER・PBR・ROE・配当利回りの見方へ

メル美原油の値段が動くと、利益も大きく動くのね。在庫の影響を除いた数字も見るようにしよう
まとめ
- 出光興産は、燃料油が中心で、化学品・潤滑油・電力・資源も手がける会社
- 2026年3月期は営業利益2,122億円(+30.8%)
- セグメント利益の約75%が燃料油、原油価格の急騰でプラスのタイムラグ
- 資源は石炭市況の下落で57.2%減
- 2027年3月期からIFRS、在庫影響除きの当期利益900億円の予想
参考文献
- 出光興産. 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年5月12日). https://www.idemitsu.com/jp/news/2026/260512_1.pdf (閲覧日:2026年10月12日)
- ENEOSホールディングス. 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月14日). https://www2.jpx.co.jp/disc/50200/140120260512526455.pdf (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。