仕組債のしくみとリスク:「利率が高い債券」に見えて、中身は株価などのデリバティブ(プットの売り)を組み込んだ商品。金融庁は、EB債の実質コストは年率平均8〜10%程度と推定し、資産形成層向けには課題があると指摘
仕組債のしくみとリスクを、金融庁「顧客本位タスクフォース 事務局説明資料」(2022年9月26日)と「リスク性金融商品の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果(概要版)」(2023年6月30日)でまとめました。仕組債には、株式や株価指数のプットの売りというデリバティブ取引の要素を組み込んだものがあり、損失率の裾野が広くリスクが相応に高いのに、安定して高めの利子が得られる債券と誤認されているとの指摘があります。金融庁は、EB債(他社株転換可能債)の実質コストは投資元本に対して年率平均8〜10%程度と推定し、リスクに見合うリターンとは言えないとしています。早期償還のあと同じ仕組債を勧められノックインした、などの苦情も紹介されています。2023年の報告では、仕組債の販売額は大幅に減少した一方、資産形成層向けの商品性としては課題があるとしました。

メル美銀行で「年8%の利率の債券がありますよ」って勧められたの。債券だから安全だよね?

プレ男預金よりずっと高い利率だね。どんなしくみで利率が高くなるんだろう
今回は、仕組債のしくみとリスクです。金融庁「顧客本位タスクフォース 事務局説明資料」(2022年9月26日)と、金融庁「リスク性金融商品の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果(概要版)」(2023年6月30日)で確認しました。
仕組債は、証券会社や銀行などが販売している金融商品です。この記事では、しくみとリスク、金融庁が指摘しているコストや売り方の課題、買う前に確かめたいポイントを紹介します。特定の商品や金融機関を評価するものではなく、売買をすすめるものでもありません。
仕組債とは
- ふつうの債券に、デリバティブ(金融派生商品)を組み合わせた債券です
- 金融庁は、仕組債には「株式や株価指数のプットの売り」というデリバティブ取引の要素を組み込んだ商品があるとしています
- その結果、損失率の裾野が広く、リスクが相応に高いのに、「安定して高めの利子が得られる債券」と誤認されているという指摘がある、と金融庁は書いています
よくある形(EB債の例)
- EB債(他社株転換可能債)は、ある会社(参照銘柄)の株価に連動する仕組債です
- 金融庁の資料には、早期償還やノックインという言葉が出てきます。ノックインや早期償還の条件は商品ごとに違うので、商品の説明書(契約締結前交付書面など)で確かめる必要があります

メル美高い利率は、株価が大きく下がったときの損を引き受ける「見返り」なんだ
金融庁の指摘(2022年9月)
高いコスト
- 顧客が負担する「販売段階のコスト」と「組成段階のコスト」が大きいのに、とくに組成段階のコストの開示が十分でない
- EB債の実質コストは、投資元本に対して年率換算で平均8〜10%程度に達すると推定
- その高いコストもあって、EB債のリターンの実績は、リスクに見合うほど高いとは言えない
売り方
- 仕組債を提案すべき顧客層は極めて限られるのに、そうした顧客に絞って販売する態勢ができていない事例がある
- 残高に占める販売額の割合が大きく、早期償還に伴う回転売買に似た状況が見られる
寄せられた声(金融庁の資料より)
- 老後の資金なので安定したものを、と頼んだところ、「安全性の高いもの」として仕組債を強く勧められた
- 早期償還で元本が戻ったとき、同じ銘柄の仕組債を「ノックインは確率的に低い」などと勧められたが、ノックインした
その後(2023年6月)
- 仕組債の販売額は、株式市況の低迷や、販売停止・縮小などの動きで、全業態で大幅に減少
- それでも、指数連動債も含めてリスクに見合うリターンが得られないものが多く、資産形成層向けの商品性としては課題がある
- 仕組債を販売する場合は、商品性の見直し、ほかの商品との比較提案、すべての費用の開示などが必要だとしています
勧められたら確かめたいこと
金融庁が求めている「すべての費用の開示」「ほかの商品との比較提案」をふまえた、買う前の確認のポイントです。
- 何に連動していて、いくら下がったら元本割れするのか
- 最悪の場合、いくら戻ってくるのか
- すべての費用(組成段階のコストを含む)はいくらか
- ほかの商品(投資信託や国債など)と比べてどうか(→個人向け国債のしくみ、社債と信用格付けのしくみ)
- 途中で売れるか、売るといくらになるか
まとめ
- 仕組債は、債券にデリバティブ(プットの売りなど)を組み込んだ商品
- 高い利率は、株価などが下がったときの損を引き受ける見返り
- 金融庁は、EB債の実質コストを年率平均8〜10%程度と推定し、リスクに見合うリターンとは言えないとした
- 販売は大きく減ったが、資産形成層向けには課題。勧められたら最悪のケースと全費用を確かめる
参考文献
- 金融庁. 事務局説明資料(金融審議会 顧客本位タスクフォース、2022年9月26日 資料2). https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/kokyakuhoni_tf/siryou/20220926/02.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 金融庁. リスク性金融商品の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果(概要版)(2023年6月30日). https://www.fsa.go.jp/news/r4/kokyakuhoni/fdreport/02.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。