東京電力ホールディングスの強みとは:首都圏の電気の小売・送配電を担い、福島第一原子力発電所の廃炉と賠償を続ける電力会社。2026年3月期は経常利益4,173億円(+64.0%)の一方、燃料デブリ取り出しの準備費用など災害特別損失9,138億円で当期純損失4,542億円。無配で、業績予想は未定
東京電力ホールディングスを、2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年4月30日、東証の適時開示)で分析しました。売上高6兆3,285億円(−7.1%、販売電力量の減少)、営業利益3,376億円(+44.0%)、経常利益4,173億円(+64.0%、燃料費等調整制度の期ずれ影響の好転など)、親会社株主に帰属する当期純損失4,542億円、自己資本比率21.8%。特別損失に災害特別損失9,138億円(うち福島第一原子力発電所の燃料デブリ取り出し準備の作業費用など9,030億円の見積りの変更)と原子力損害賠償費827億円、特別利益に関係会社株式売却益1,030億円と原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの資金交付金818億円。セグメント利益は、エナジーパートナー(小売)2,550億円、ホールディングス1,290億円、フュエル&パワー(火力発電・燃料)833億円、パワーグリッド(送配電)817億円、リニューアブルパワー404億円。配当は0円、2027年3月期の業績予想は中東情勢などで未定。関西電力・中部電力との比較と、見ておくべき数字も。売買をすすめるものではありません。

プレ男東京電力の決算、経常利益は増えたのに、最終的には大きな赤字になっているね。どうして?

メル美福島第一原子力発電所の廃炉の費用の見積りが増えて、大きな特別損失を出したんだって
企業分析の連載、104社目は東京電力ホールディングスです。2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年4月30日)で確認しました。会社のサイトは今回の確認方法では読めなかったため、東京証券取引所の適時開示に載っている同じ決算短信を使っています。比較には、この連載の関西電力の強みとは・中部電力の強みとはで確認した数字を使っています。
この記事は会社のしくみと数字の解説で、東京電力ホールディングス株の売買をすすめるものではありません。目標株価や「買い時」も書きません。投資判断はご自身の責任でお願いします。原子力発電の是非を論じるものでもありません。
1. ひとことで言うと
首都圏を中心に電気・ガスを売り、送配電網を運営し、福島第一原子力発電所の廃炉と原子力損害の賠償を続ける電力会社
| 項目(日本基準・連結) | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6兆3,285億円 | −7.1% |
| 営業利益 | 3,376億円 | +44.0% |
| 経常利益 | 4,173億円 | +64.0% |
| 親会社株主に帰属する当期純損益 | 4,542億円の損失 | 前期は1,612億円の利益 |
| 自己資本比率 | 21.8% | 前期 25.1% |
| 配当 | 0円 | 前期 0円 |
- 売上高は、販売電力量の減少などで減りました。経常利益は、燃料価格の変動が電気料金に反映されるまでの時間差(期ずれ)の影響が好転したことや、収支の改善で増えました(→中部電力の強みとはでも期ずれを説明しています)
- 最終的な赤字の理由は、次の特別損失です
特別損益の内訳
| 区分 | 項目 | 金額 |
|---|---|---|
| 特別損失 | 災害特別損失 | 9,138億円 |
| 特別損失 | 原子力損害賠償費 | 827億円 |
| 特別利益 | 関係会社株式売却益 | 1,030億円 |
| 特別利益 | 原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの資金交付金 | 818億円 |
- 災害特別損失のうち9,030億円は、2025年7月に原子力損害賠償・廃炉等支援機構の小委員会で、燃料デブリの取り出しの準備にかかる作業のあり方が示されたことを受けて、新たに見込まれる作業費用などを見積もり直したものです
- 会社は、福島第一原子力発電所の廃炉は過去に実例のない取り組みで、今後の費用は変動する可能性があるとしています
2. 何で稼いでいるか
セグメント利益は、経常利益と同じ考え方の利益です。
| セグメント | 中身 | 売上高(セグメント間を含む) | セグメント利益 |
|---|---|---|---|
| エナジーパートナー | 電気・ガスの小売(東京電力エナジーパートナー) | 4兆9,897億円 | 2,550億円 |
| ホールディングス | 経営サポート、グループへの共通サービス、原子力発電など | 8,269億円 | 1,290億円 |
| フュエル&パワー | 火力発電による電力の販売、燃料の調達、燃料事業への投資 | 37億円 | 833億円 |
| パワーグリッド | 送配電 | 2兆2,944億円 | 817億円 |
| リニューアブルパワー | 再生可能エネルギー | 1,892億円 | 404億円 |
- フュエル&パワーは、外部への売上高が小さい一方、セグメント利益は833億円です。連結の持分法投資利益は1,384億円でした
3. 強み
会社の資料にある事実から、この連載で強みと考えた点です。
① 首都圏の大きな顧客基盤
- 小売のエナジーパートナーは、売上高約5兆円、セグメント利益2,550億円です
② 柏崎刈羽原子力発電所6号機
- 会社は、送電を再開した柏崎刈羽原子力発電所6号機の安定運転を続け、特定重大事故等対処施設の工事を安全最優先で進めるとしています。安定的に稼働できない場合は、火力燃料費の増加などで業績が影響を受ける可能性があるとしています
③ 経常利益の改善
- 経常利益は4,173億円(+64.0%)でした
4. 弱み・リスク
① 廃炉と賠償の費用
- 災害損失引当金は、前期末の6,042億円から1兆2,498億円に増えました。廃炉の取り組みが計画以上に長期に及ぶ場合などは、業績に影響する可能性があると会社自身が書いています
② 配当と業績予想
- 配当は0円が続いています。2027年3月期の業績予想は、中東情勢などで燃料価格の見通しが不透明として、売上高・利益とも未定です
③ 財務
- 当期純損失で純資産が減り、自己資本比率は21.8%に下がりました
5. ライバルとの比較
大手電力の関西電力・中部電力と比べます。どちらも日本基準・2026年3月期です。会社によって事業の分け方が違うので、おおまかな比較です。
| 東京電力HD | 関西電力 | 中部電力 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 6兆3,285億円 | 4兆566億円 | 3兆5,460億円 |
| 経常利益 | 4,173億円 | 5,185億円 | 2,910億円 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | −4,542億円 | 3,801億円 | 2,277億円 |
| 配当 | 0円 | 年75円 | 年70円 |
6. 投資プレイヤー的チェックポイント
東京電力HDの決算を見るときに、毎回確かめておきたい数字です(売買の判断基準ではありません)。
| 見ておく数字 | 2026年3月期 | どこに書いてある |
|---|---|---|
| 経常利益 | 4,173億円 | 決算短信のサマリー |
| 災害特別損失・災害損失引当金 | 9,138億円・1兆2,498億円 | 決算短信(連結損益計算書・貸借対照表) |
| 柏崎刈羽原子力発電所の稼働 | 6号機が送電を再開 | 決算短信(事業等のリスク) |
| 会社の業績予想 | 2027年3月期は未定 | 決算短信のサマリー |
| 配当 | 0円、2027年3月期予想0円 | 決算短信 |
- 指標の読み方はPER・PBR・ROE・配当利回りの見方へ

プレ男本業の利益は増えても、廃炉の費用の見積りしだいで最終損益が大きく変わるんだね。業績予想も未定だから、発表を待って確かめよう
まとめ
- 東京電力HDは、首都圏の電気の小売・送配電と、福島第一原子力発電所の廃炉・賠償を担う電力会社
- 2026年3月期は経常利益4,173億円(+64.0%)
- 燃料デブリ取り出しの準備費用などで災害特別損失9,138億円、当期純損失4,542億円
- 配当は0円、2027年3月期の業績予想は未定
- 柏崎刈羽原子力発電所6号機の安定運転が業績に関わる
参考文献
- 東京電力ホールディングス. 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年4月30日). https://www2.jpx.co.jp/disc/95010/140120260427512236.pdf (閲覧日:2026年10月12日)
- 関西電力. 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年4月30日). https://www2.jpx.co.jp/disc/95030/140120260430515040.pdf (閲覧日:2026年10月12日)
- 中部電力. 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年4月28日). https://www.chuden.co.jp/ir/ir_siryo/kessan/__icsFiles/afieldfile/2026/04/28/2025tanshin_4qua_1.pdf (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。