
プレ男蠅の怪談?ちょっと想像がつかないなあ。

メル美こわいっていうより、じーんとくる話なんだって。
今回は、小泉八雲『骨董(Kotto)』の「蠅のはなし(STORY OF A FLY)」です。英語の原文(1903年のマクミラン社版)をプロジェクト・グーテンベルクで、日本語訳(大谷正信訳)を青空文庫で読みました。人名・地名は大谷正信訳の漢字をいまの字体にして使い、読みは青空文庫の図書カードによります。
あらすじ1:着物を着ない女中
- 200年ばかり前(八雲が書いた当時から)、京都に飾屋九兵衛という商人がいました。店は、島原道の少し南の寺町通にあります。女中には、若狭の国生まれの玉がいました
- 玉は九兵衛夫婦にやさしくされ、二人を心から好いているようでした。でも、ほかの娘のようにきれいな着物を着ようとはせず、休みの日も、もらった美しい着物を着ないで、仕事着のまま出かけていきます
- つとめて5年ほどたったころ、九兵衛がわけをたずねると、玉は顔を赤らめて答えました
- 「両親が死んだとき、わたしはまだ小さな子どもでした。ほかに子どもがいないので、二人の供養をするのは、わたしのつとめです。そのときはお金がなかったので、お金がたまったら、両親の位牌を常楽寺におさめて、法要をしてもらおうと決めました。そのために、お金も着物も倹約してきたのです」
- 九兵衛は、そのすなおな話に心をうたれ、これからは好きな着物を着てよい、と言って、その親孝行をほめました
あらすじ2:願いをはたして
- まもなく玉は、両親の位牌を常楽寺におさめ、法要をしてもらうことができました。ためたお金のうち70匁をつかい、のこりの30匁を、おかみさんにあずけます
- ところが、その翌年の冬のはじめ、玉は急に病気になり、元禄15年(1702年)正月11日に亡くなりました。九兵衛夫婦は、とても悲しみました
あらすじ3:真冬の大きな蠅
- それから10日ばかりたったころ、とても大きな蠅が家に入ってきて、九兵衛の頭のまわりを飛びはじめました。大寒のさなかには蠅はふつう出てこないし、大きな蠅は暖かい季節でなければめったに見ません
- 信心深い九兵衛は、蠅を傷つけないようにつかまえて外に出しますが、また入ってきます。3度目に入ってきたとき、妻が言いました。「玉じゃないかしら」
- 八雲の注:死んだ人、とくに餓鬼になった人は、ときに虫のすがたでもどってくるといわれます
- 九兵衛は笑って、「しるしをつけてみればわかるだろう」と、はさみで蠅の翅の先を少し切り、遠くへ放しました。翌日、蠅はもどってきます
- まだ疑っていた九兵衛は、こんどは蠅の翅と体に紅をぬって、前よりずっと遠くへ放しました。すると2日後、真っ赤な蠅がもどってきたのです

プレ男赤くぬった蠅がもどってきた!これはもう、玉さんだ!
30匁のゆくえ
- 「玉だと思う。何か欲しいものがあるのだ。何が欲しいのだろう」と九兵衛
- 妻が答えます。「玉のためたお金が、まだ30匁あります。自分の魂の供養のために、そのお金をお寺におさめてほしいのでしょう。玉はいつも、来世のことを気にしていましたから」
- そう話しているうちに、蠅は、とまっていた障子から下へ落ちました。九兵衛が拾いあげると、死んでいたのです
お寺での供養
- 夫婦はすぐにお寺へ行き、玉のお金をおさめることにしました。蠅のなきがらも、小さな箱に入れて持っていきます
- お寺の自空上人は話を聞いて、夫婦は正しいことをした、と言いました。そして、玉の魂のために施餓鬼をおこない、蠅のなきがらに妙典八巻をとなえ、箱をお寺の境内にうめて、その上に卒塔婆を立てたのです

メル美両親を供養した玉さんが、さいごは九兵衛さんたちに供養してもらえたんだね。
英語の原文・訳ともに、玉は「翌冬の初め」に病気になり、「元禄15年正月11日」に亡くなったと書かれています。

小泉八雲の「蠅のはなし」では、九兵衛が翅と体に紅をぬって遠くへ放した蠅が、2日後に真っ赤なまま家にもどってきました。
まとめ
- 「蠅のはなし」は、小泉八雲『骨董』の一編(大谷正信訳)
- 京都の飾屋九兵衛の女中玉は、両親の供養のため、着物も買わずにお金をためた
- 願いをはたした玉は、元禄15年(1702年)正月11日に病気で亡くなる
- 10日後、真冬に大きな蠅。翅に紅をぬって遠くへ放しても、もどってきた
- 玉ののこりの30匁をお寺におさめることにすると、蠅は落ちて死んだ。お寺で供養され、卒塔婆が立てられた
- 『骨董』の話は雉子のはなし、おかめのはなし、死霊、やさしい怪談は乳母桜もどうぞ
参考文献
- Lafcadio Hearn. Kotto: Being Japanese Curios, with Sundry Cobwebs(New York: The Macmillan Company, 1903). “Story of a Fly”. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/55473 (閲覧日:2026年10月10日)
- 小泉八雲(大谷正信訳). 蠅のはなし. 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000258/card59431.html (閲覧日:2026年10月10日)
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