
プレ男「わたしが死んでも、再婚しないで」って、ドラマでもありそうなセリフだね。

メル美小泉八雲の「おかめのはなし」は、その約束のあとが、こわいの。
今回は、小泉八雲『骨董(Kotto)』の「おかめのはなし(THE STORY OF O-KAMÉ)」です。英語の原文(1903年のマクミラン社版)をプロジェクト・グーテンベルクで、日本語訳(田部隆次訳)を青空文庫で読みました。人名・地名は田部隆次訳の漢字をいまの字体にして使っています。
あらすじ1:死ぬ前の約束
- 土佐の国・名越の長者権右衛門の娘おかめは、夫の八右衛門を、とても好いていました。おかめは22歳、八右衛門は25歳。あまりに好いているので、やきもちやきだと思われるほどでしたが、二人のあいだで冷たい言葉がかわされたことは、一度もなかったといいます
- けれどもおかめは体が弱く、結婚して2年もたたないうちに、そのころ土佐にはやっていた病気にかかります。いちばんの医者にも治せず、おかめは日に日に弱っていきました
- おかめは、自分が今日死ぬとさとり、夫に言います
- 「病気のあいだ、どんなにやさしくしてくださったか。だからこそ、いまお別れするのがつらいのです。……わたしが死んだら、いつかみんなは、あなたに新しい妻をむかえさせようとするでしょう。約束してくれますか——二度と結婚しないと」
- 八右衛門は答えました。「それだけのことか。心から約束する。だれもおまえのかわりにはならない」
- 「ああ、嬉しい」(英語の原文では「Aa! uréshiya!」)——おかめは床から半分身をおこしてさけび、そのままたおれて息をひきとりました
あらすじ2:やせおとろえる夫
- おかめが死ぬと、八右衛門の体が弱っていきました。はじめは村人も「よほど好いていたのだろう」と言っていましたが、何か月もたつうちに、八右衛門はやせて青ざめ、人というより幽霊のようになってしまいます
- 医者は、知られている病気ではない、何かふつうではない心の悩みのせいかもしれない、と言うばかり。両親が再婚をすすめても、八右衛門は「死んだ者との約束はやぶれない」とことわりました

プレ男約束を守ってるだけなのに、どんどん弱っていくなんて…。
あらすじ3:毎晩、となりに
- とうとう、泣いて問いつめる母に、八右衛門は打ち明けます
- 「おかめは、あの世で休むことができず、供養もききめがないのです。わたしがいっしょに、長い暗い旅に出るまでは、休めないのかもしれません」
- 「葬式の日から毎晩、おかめはもどってきて、わたしのとなりに横になるのです。生きていたときとそっくりで、ただ、ささやき声でしか話しません。そして、来ていることをだれにも言うなと言うのです」
- 「毎晩、眠ろうとするころに来て、夜明けまでいます。お寺の鐘が聞こえると、帰っていきます」
- 母はおどろいて、すぐにお寺の和尚にたのみに行きます。年をとった経験ゆたかな和尚は、おどろかずに聞いて、言いました
- 「こういうことは初めてではない。でも息子さんは本当にあぶない。顔に死の影が見える。おかめがもう一度来たら、二度と朝日を見られないだろう。すぐに両家の親類を集めなさい。おかめの墓をあけねばならぬ」
墓をあけると
- 親類が集まり、和尚のさしずで、墓石をうごかし、墓をほり、棺を出しました。ふたをとると、みんなはおどろきます。おかめは、病気になる前のように美しく、ほほえんですわっていて、死のしるしはどこにもなかったのです
- 和尚は、おかめの体の額・胸・手足に、筆で梵字(ぼんじ)の聖なる文字を書き、施餓鬼の供養をしてから、ふたたび土にもどしました
- それからおかめは、二度と夫のもとに来ませんでした。八右衛門は、しだいに元気をとりもどします
- 八雲はこう結んでいます。「でも、八右衛門がいつまでもあの約束を守ったかどうかは、日本の語り手は語っていない」

メル美最後のひとことで、ちょっとクスッとしちゃう。こわいだけじゃない終わり方だね。

小泉八雲の「おかめのはなし」では、和尚がおかめの体に梵字を書いて施餓鬼の供養をすると、おかめは二度と夫のもとに来なくなり、八右衛門はしだいに元気をとりもどしました。
まとめ
- 「おかめのはなし」は、小泉八雲『骨董』の一編
- 土佐のおかめは、死ぬ前に夫八右衛門へ「二度と結婚しないで」とたのんだ
- 夫は約束を守ったが、毎晩おかめがとなりに来て、夫はやせおとろえていく
- 和尚が墓をあけると、おかめは生きているような美しいすがた。梵字を書いて供養すると、もう来なくなった
- 最後は「約束を守ったかどうかは、語り手は語っていない」
- 亡くなった人が毎晩あらわれる話は葬られたる秘密、死んだ恋人が毎晩会いに来る話は牡丹燈籠、『骨董』の話は蠅のはなし、死霊、生霊もどうぞ
参考文献
- Lafcadio Hearn. Kotto: Being Japanese Curios, with Sundry Cobwebs(New York: The Macmillan Company, 1903). “The Story of O-Kamé”. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/55473 (閲覧日:2026年10月10日)
- 小泉八雲(田部隆次訳). おかめのはなし(底本:『小泉八雲全集第八卷 家庭版』第一書房). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000258/card59425.html (閲覧日:2026年10月10日)
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