
プレ男怪談をしてて、「じゃあ今から心霊スポット行こうぜ!」ってなるの、いまでもあるよね。

メル美小泉八雲の「幽霊滝の伝説」は、まさにそういう話。でも、結末がとてもこわいの。
今回は、小泉八雲『骨董(Kotto)』の「幽霊滝の伝説(THE LEGEND OF YUREI-DAKI)」です。英語の原文(1903年のマクミラン社版)をプロジェクト・グーテンベルクで、日本語訳(田部隆次訳)を青空文庫で読みました。人名・地名は田部隆次訳の漢字を使っています。
※この話の結末には、小さな子どもが命を落とす場面があります。この記事では、くわしい描写はひかえています。
幽霊滝と賽銭箱
- 伯耆の国、黒坂村の近くに、幽霊滝という滝があります。八雲は「なぜそうよばれるのか、わたしは知らない」と書いています
- 滝のそばには、滝大明神という土地の神さまの小さな社があり、その前に小さな賽銭箱があります。物語は、その賽銭箱についての話です
あらすじ1:冬の夜のかけ
- 35年前(八雲が書いた当時から)のある冬の寒い晩、黒坂の麻取場で働く娘や女房たちが、仕事のあと、炉のまわりに集まって怪談に興じていました
- 話が十いくつも出たころには、みんな気味が悪くなっていました。そのこわさをもっと楽しもうと、ひとりの娘が言います。「今夜、ひとりで幽霊滝へ行くなんて、考えてみて!」
- みんなは悲鳴をあげて笑い、「行った人には、今日わたしがつむいだ麻をぜんぶあげる」「わたしも」「みんなで」と言いだしました
- そこで立ちあがったのが、大工の女房の安本お勝です。背中には、2歳のひとり息子が、くるまれて眠っていました
- 「本当に行ったか、どうやってわかるの?」という声に、お婆さんが答えます。「滝大明神の賽銭箱を持って帰ってきてもらえばいい」
- 「持ってくるよ」とお勝はさけび、眠っている子どもを背負ったまま、外へとび出しました

プレ男子どもを背負ったまま行っちゃうの!?
あらすじ2:「おい、お勝」
- 寒いけれど、晴れた夜でした。人通りのない道を、お勝はピチャピチャと走ります。左右は凍った田んぼ、道を照らすのは星だけ
- 30分ほど道をたどり、がけの下のせまい道へ。暗く、けわしくなっていきますが、お勝はよく知っている道です。やがて滝のとどろきが聞こえ、暗やみの中に、白く光る滝が見えてきました
- 社と賽銭箱がぼんやり見えます。お勝はかけよって、手をのばしました——
- 「おい、お勝」。とどろく水の上から、とつぜん、いましめるような声がしました
- お勝はおそろしさに立ちすくみます。「おい、お勝」。ふたたび声がひびきました。こんどは、もっとおどすような調子で
- でもお勝は、もともと大胆な女でした。すぐに我にかえると、賽銭箱をひっつかんで、かけ出しました
あらすじ3:麻取場にもどると
- 息をきらせて、賽銭箱を持ったお勝が麻取場にもどると、みんなは大さわぎ。滝から2度も名前をよんだ声の話に、悲鳴をあげます。「なんて女だろう!」「これなら麻をぜんぶもらう値うちがある!」
- お婆さんが言います。「子どもが冷えたろう。火のそばにつれておいで」。お勝も「おなかがすいたろうね。すぐお乳をあげますよ」
- ところが、子どもをくるんだはんてんを解く手伝いをしていたお婆さんが、「おや、背中がすっかりぬれていますよ」と言い——そして、しゃがれた声でさけびました。「アラッ、血が」
- はんてんの中の子どもは、むごい姿で命を落としていたのです

メル美2回よんだ声は、とめようとしていたのかもしれないね…。ふざけ半分のかけが、いちばん大切なものをうばってしまった話。
八雲は物語の中で、滝の名前の由来は「知らない」と書いています。

小泉八雲の「幽霊滝の伝説」では、お勝が賽銭箱に手をのばしたとき、滝の上から「おい、お勝」と2度、名前をよぶ声がしました。
まとめ
- 「幽霊滝の伝説」は、小泉八雲『骨董』の最初の話
- 伯耆の国・黒坂村の麻取場で、女たちが怪談のあと「ひとりで幽霊滝へ行けたら、麻をぜんぶあげる」とかけをした
- 大工の女房お勝は、2歳の息子を背負ったまま、証拠に滝大明神の賽銭箱を取りに行った
- 賽銭箱に手をのばすと、「おい、お勝」と2度、声がした
- 帰ってみると、背中の子どもは命を落としていた
- 心霊スポットに行くときのルールとマナーは八王子城跡などの記事も。『骨董』の話は茶碗の中、常識、『怪談』はかけひきもどうぞ
参考文献
- Lafcadio Hearn. Kotto: Being Japanese Curios, with Sundry Cobwebs(New York: The Macmillan Company, 1903). “The Legend of Yurei-Daki”. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/55473 (閲覧日:2026年10月10日)
- 小泉八雲(田部隆次訳). 幽霊滝の伝説(底本:『小泉八雲全集第八卷 家庭版』第一書房). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000258/card59432.html (閲覧日:2026年10月10日)
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