
プレ男「常識」って題名の怪談?ぜんぜんこわくなさそう。

メル美「ふしぎなもの」を見たときに、どう考えるか、っていう話なんだって。このサイトの「マジレス」にぴったり。
今回は、小泉八雲『骨董(Kotto)』の「常識(COMMON SENSE)」です。英語の原文(1903年のマクミラン社版)をプロジェクト・グーテンベルクで、日本語訳(田部隆次訳)を青空文庫で読みました。本文中の「」の言葉は、田部隆次訳をもとに、わかりやすく言いかえたものです。
あらすじ1:毎晩あらわれる普賢菩薩
- むかし、京都に近い愛宕山に、瞑想とお経に打ちこむ高僧がいました。寺は村から遠くはなれていましたが、信心深い村人たちが、毎月かわるがわる米や野菜をとどけて、僧の暮らしをささえていました
- その中に、ひとりの猟師がいました。ある日、猟師が米をとどけに来ると、僧が言います
- 「ふしぎなことがある。長年お経と瞑想をつづけてきた功徳かもしれないが、毎晩、普賢菩薩が白い象に乗って、この寺へおいでになるのだ。今夜いっしょにいれば、おまえも拝むことができる」
- 猟師はよろこんで寺にとどまりました
あらすじ2:猟師の疑い
- ところが、僧がお経をあげているあいだ、猟師は考えはじめます。「そんなことが、本当にありうるだろうか」。考えるほど、疑いはふくらんでいきました
- 寺の小僧に「あなたも拝んだのですか」と聞くと、「はい、もう6度、うやうやしく拝みました」
- この答えで、猟師の疑いは、ますます強くなりました

プレ男え、小僧さんも見たなら、本物っぽくない?なんで疑いが強くなるの?
あらすじ3:白い象と、一本の矢
- 真夜中少し前、寺の戸があけはなたれ、僧は東を向いてひざまずきます。小僧はその左、猟師は僧のうしろに
- 9月20日の夜でした。さびしく、暗く、風のはげしい夜。長いあいだ待っていると、東の方に、星のような白い光がひとつ。光はどんどん近づき、大きくなり、山の斜面を照らします
- やがてそれは、6本の牙のある雪のように白い象に乗った、菩薩のすがたになりました。象は寺の前に着き、月の光の山のように、高くそびえて立ちます
- 僧と小僧がひれふしてお経を唱えはじめた、そのとき——猟師が二人のうしろで立ちあがり、弓を引きしぼって、光かがやく菩薩に長い矢を射ました。矢は菩薩の胸に、羽根のところまで深くささります
- 雷が落ちたような音とともに、白い光は消え、菩薩のすがたも見えなくなりました
猟師の「常識」
- 僧は泣きながら「なんということをしてくれたのだ」とせめます。でも猟師は、おだやかにこう答えました
- 「聖人さまは、長年の修行とお経の功徳で、菩薩さまを拝めるのだとお考えになりました。それなら菩薩さまは、聖人さまにだけ見えるはずです」
- 「わたしは学のない猟師で、仕事は生きものを殺すこと。仏さまのおきらいなことです。そんなわたしに、どうして菩薩さまが拝めるでしょう。それなのに、わたしにもこの小僧にも、聖人さまと同じものが見えました」
- 「ですから、ごらんになったのは菩薩さまではなく、聖人さまをだまして、もしかすると命をうばおうとした、何かの化けものにちがいありません。夜が明けるまで待ってください」
- 夜が明けて、二人がそのすがたの立っていたところを調べると、うすい血のあとがありました。あとをたどっていくと、数百歩はなれたくぼみで、猟師の矢につらぬかれた大きな動物の死体が見つかったのです
- 八雲はこう結びます。僧は学問があり信心深かったが、たやすくだまされた。猟師は学も信心もなかったが、生まれつきの強い常識をもっていて、その常識だけで、あぶない迷いを見やぶり、退治することができた

メル美「自分にも見えるのはおかしい」って、筋道を立てて考えたんだね。ふしぎなものほど、まず落ちついて考えるのが大事なんだ。
正体の動物は、英語の原文では「badger(アナグマ)」、田部隆次訳では「狸」となっています。この記事では「大きな動物」としました。

小泉八雲の「常識」で、猟師は、生きものを殺すのが仕事の自分にまで菩薩が見えるのはおかしいと考え、その正体を見やぶりました。
まとめ
- 「常識」は、小泉八雲『骨董』の一編
- 愛宕山の高僧のもとに、毎晩白い象に乗った普賢菩薩があらわれる
- いっしょに見た猟師は、「修行をつんだ聖人にだけ見えるはずのものが、自分にも見えるのはおかしい」と考え、矢を射た
- 夜が明けると、血のあとの先に、化けていた動物の死体があった
- 八雲は、学のない猟師の「生まれつきの常識」が、あぶない迷いを見やぶったと結んでいる
- 『骨董』の話は生霊、幽霊滝の伝説、茶碗の中、都市伝説へのマジレスは水晶どくろもどうぞ
参考文献
- Lafcadio Hearn. Kotto: Being Japanese Curios, with Sundry Cobwebs(New York: The Macmillan Company, 1903). “Common Sense”. Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/55473 (閲覧日:2026年10月10日)
- 小泉八雲(田部隆次訳). 常識(底本:『小泉八雲全集第八卷 家庭版』第一書房). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000258/card59428.html (閲覧日:2026年10月10日)
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