梅毒のPCR検査:血液検査がまだ陰性の早い時期でも、しこりやただれから菌の遺伝子を見つけられることがある。ただし実施できる場所は限られ保険外(2026年現在)。受診前に塗り薬や抗菌薬を使うと見つからなくなるので、そのまま受診を
梅毒の診断は血液検査が基本ですが、感染してすぐは血液検査が陰性のことがあります。国立健康危機管理研究機構のIASRの報告(2023年12月)によると、しこりやただれ(皮膚・粘膜の病変)をぬぐって梅毒の菌の遺伝子を調べる「PCR検査」で、血液検査がどちらも陰性の第1期梅毒が見つかった例が、PCR陽性の第1期梅毒の25%ありました。ただし、PCR検査は一部の研究機関で試験的に行われているだけで保険がきかず、陰性でも梅毒でないとは言えません。受診前に塗り薬や抗菌薬を使うと、典型的な病変でもほぼ見つからなくなります。

プレ男陰部に痛くないただれができたんだ。梅毒が心配で血液検査を受けたら「陰性」だったけど、本当に大丈夫なのかな。

メル美うつってすぐだと、血液検査では見つからないことがあるって聞いたよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、梅毒のPCR検査の話です。国立健康危機管理研究機構のIASR「実臨床における梅毒PCR法について」(2023年12月、2024年1月一部改訂)をもとにまとめました。梅毒の血液検査については、梅毒の血液検査の見方を見てください。
梅毒の診断は、血液検査が基本
IASRの報告によると、
- 梅毒には症状のない時期があり、梅毒の菌を試験管で育てる(培養)ことがむずかしいため、診断は血液検査がいちばんの基準とされています
- 2000年代から、世界で、PCR法で梅毒の菌の遺伝子(DNA)を見つける検査が広がっています
- 日本性感染症学会の「梅毒診療ガイド」(2018年)では、治療が必要な梅毒の診断基準に、PCR法での陽性も含まれています
PCR検査とは
- しこりやただれ(皮膚や粘膜の病変)を綿棒でこすって、梅毒の菌の遺伝子があるかどうかを調べます
- ただし、報告の時点(2023年)では、PCR検査は国立感染症研究所や一部の地方衛生研究所などで試験的に行われているだけで、保険はききません
- 2026年現在も、梅毒のPCR検査は保険適用になっていません
血液検査が陰性の、早い梅毒が見つかることも
ある医療機関と国立感染症研究所の共同研究(2012〜2018年、梅毒が疑われ病変から検体をとった257人)では、
- 梅毒と診断された184人のうち、PCRで陽性だったのは132人(感度72%)でした
- PCRで陽性だった第1期梅毒64人のうち16人(25%)は、血液検査(RPRとTP抗体)がどちらも陰性で、PCRが診断の決め手になりました
- 菌が見つかった場所は、口の中(34%)がもっとも多く、陰茎(33%)、肛門(21%)が続きました。皮膚よりも粘膜(とくに口・のど、肛門)の病変のほうが見つかりやすいとされています

メル美血液検査が陰性でも、早い梅毒のことがあるんだね。だから、しばらくしてからもう一度血液検査をするのが大事なんだ。
PCRが陰性でも、梅毒でないとは言えない
報告によると、
- PCRで陽性なら梅毒と考えてよいですが、陰性でも梅毒でないとは限りません
- 血液検査とPCRを組み合わせても診断がつかなかった人もいました。梅毒が疑われるときは、時間をおいて血液検査をくり返すことが大切だとしています
受診の前に、薬を塗ったり飲んだりしない

陰部や口のただれに、自己判断で塗り薬を塗ったり、手持ちの抗菌薬を飲んだりすると、梅毒の診断がむずかしくなります。気になるただれがあるときは、そのまま受診してください。
- 報告によると、抗菌薬を前に使っていると(飲み薬・塗り薬とも)、典型的な梅毒の病変でも、菌の遺伝子はほとんど見つからなくなります
- IASRの別の報告でも、診断の前に抗菌薬を飲むと、口やのどの梅毒の特徴的な見た目が消えて、診断がむずかしくなることがあるとされています(口の中のただれ・白い斑点と性感染症)
- 陰部のただれについては、陰部潰瘍の記事も見てください
まとめ
- 梅毒の診断は血液検査が基本。でも、感染してすぐは陰性のことがある
- PCR検査は、しこりやただれから菌の遺伝子を調べる方法。血液検査が陰性の早い梅毒が見つかることも
- ただし、実施できる場所は限られ、保険外(2026年現在)。陰性でも梅毒でないとは言えない
- 疑わしいときは、時間をおいて血液検査をくり返す
- 受診前に塗り薬や抗菌薬を使わない
参考文献
- 井戸田一朗, 加藤康幸. 実臨床における梅毒PCR法について. IASR 44: 193-194, 2023(2023年12月25日公開、2024年1月4日一部改訂). https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/pathogens/vol44/526/526r04.html (閲覧日:2026年10月10日)
- 余田敬子. 口腔・咽頭梅毒の臨床像と診断のピットフォール. IASR 44: 192-193, 2023. https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/pathogens/vol44/526/526r03.html (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
