クリプトスポリジウム症:水のような下痢をおこす原虫。汚れた水やプールのほか、性行為(おしりから口)でもうつる。塩素がききにくい。健康な人は2週間ほどで治るが、HIVで免疫が下がっていると長引いたり重くなったりする
クリプトスポリジウムは、腸に感染して水のような下痢をおこす原虫です。国立健康危機管理研究機構エイズ治療・研究開発センター(ACC)の手引き(2022年)によると、汚れた水や生野菜、手を介して口から入るほか、性行為などで便から口へ(糞口感染)うつることもあります。水道の塩素消毒ではほとんど死なず、プールでの集団感染も報告されています。潜伏期は7〜10日で、健康な人は2週間ほどで自然に治りますが、HIVでCD4数が下がっている人では長引いたり重くなったりします。感染症法で全数届出の病気です。

プレ男水みたいな下痢がなかなか止まらなくて、検査したら「クリプトスポリジウム」って言われた人がいるんだって。聞いたことのない名前……。

メル美ジアルジアやアメーバ赤痢みたいに、性行為でうつる下痢もあるんだよね。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、クリプトスポリジウム症の話です。国立健康危機管理研究機構エイズ治療・研究開発センター(ACC)の「抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き」の「クリプトスポリジウム症」(2022年9月29日更新)をもとにまとめました。
どんな病気?
ACCの手引きによると、
- クリプトスポリジウムという原虫が、腸の粘膜に入りこんでふえる病気です。便の中に、感染する力をもつ「オーシスト」がたくさん出てきます
- 人に多い種類は、牛などの家畜にも感染します(とくに子牛)
- 感染力がとても強く、オーシストを10〜100個口に入れるだけで感染・発症します
- 日本の報告は毎年100件以下ですが、実際より少なく見つもられている可能性があるとされています
どうやってうつる?
ACCの手引きによると、
- おもに、オーシストで汚れた水を飲むことでうつります。生水、生野菜、手を介して口から入ることもあります
- 性行為などで便から口へ(糞口感染)、人から人にうつることもあります
- オーシストは、水道の消毒に使われる塩素ではほとんど死なず、プールを介した集団感染や、療養施設での集団感染も報告されています。死滅させるには、乾燥か70℃以上の加熱が必要です

クリプトスポリジウムは、塩素がききにくく、少しの量でも感染する原虫です。性行為で便から口へうつることもあります。HIVで免疫が下がっている人は重くなることがあるので、下痢が続くときは早めに受診してください。
同じように便から口へうつる病気には、ジアルジア症、アメーバ赤痢、細菌性赤痢、A型肝炎などがあります。
症状
ACCの手引きによると、
- 感染してから7〜10日で症状が出ます(潜伏期)
- 症状がないこともあれば、重い下痢になることもあります。水のような下痢が多く、ふつう血便はありません。腹痛、吐き気、嘔吐、軽い熱が出ることもあります
- 健康な人では、1日10回以上の下痢になることもありますが、2週間ほどで自然に治ります
- HIVのある人、とくにCD4数が低い人では、重くなったり、長引いたりすることがあります。CD4数が200以上なら自然に治る、100未満では長引いて腸以外にも症状が出る、50未満では重くなる可能性を考えるとされています
CD4数については、HIVの「CD4数」でわかることを見てください。
診断と届出
ACCの手引きによると、
- 便の中のオーシストを見つけて診断します。とても小さく、ふつうの検査では見分けにくいため、特別な方法が必要です。疑うときは、検査室にそのことを伝える必要があります
- クリプトスポリジウム症は、感染症法の5類感染症(全数把握)で、診断した医師は7日以内に保健所に届け出ます
治療
ACCの手引きによると、
- 水分の補給など、症状をやわらげる治療が中心で、確立した特別な治療法はありません
- HIVのある人では、抗HIV療法をまだ始めていない人に起こることが多く、抗HIV療法で免疫を回復させることがもっとも期待できる治療で、まず最初に行うべきとされています
予防
ACCの手引きの内容から考えると、
- 生水を飲まない、手をよく洗う
- 下痢があるときは、性行為をひかえる。おしりにふれる性行為のあとは、手や性器を洗う
ことが予防につながります。
まとめ
- クリプトスポリジウムは、水のような下痢をおこす原虫
- 汚れた水・プールのほか、性行為(便から口へ)でもうつる
- 塩素がききにくく、感染力がとても強い
- 健康な人は2週間ほどで自然に治るが、HIVでCD4数が低いと重くなったり長引いたりする
- HIVのある人では、抗HIV療法がいちばんの治療
参考文献
- 国立健康危機管理研究機構 エイズ治療・研究開発センター(ACC). 抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き:クリプトスポリジウム症(Last updated: 2022-09-29). https://www.acc.jihs.go.jp/medics/treatment/handbook/part2/no29.html (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
