細菌性赤痢:海外旅行の病気と思われがちだけど、性行為でもうつる。10〜100個の菌で感染し、英国では性的な接触による感染が2025年に2,560件。薬が効きにくい菌も
細菌性赤痢は、赤痢菌が口から入ってうつる腸の感染症です。国立健康危機管理研究機構(旧・国立感染症研究所)の資料によると、10〜100個ほどの少ない菌でも感染します。海外旅行のおみやげの病気と思われがちですが、肛門をなめる・肛門性交でふれた手指などを通して、性行為でもうつります。英国では性的な接触で広がったとみられる診断が2025年に2,560件あり、薬が効きにくい菌が増えています。症状、検査と治療、うつさないための注意をまとめました。

プレ男赤痢って、昔の病気か、海外旅行でかかる病気じゃないの?

メル美性行為でうつることもあるって聞いたよ。下痢くらいなら、様子を見てもいいのかな。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は細菌性赤痢(さいきんせいせきり)の話です。「海外でかかる病気」というイメージがありますが、性行為でもうつることがわかっていて、海外では広がりが問題になっています。
どんな病気?
- 赤痢菌(シゲラ)という細菌が口から入って、大腸に炎症を起こす病気です
- 国立健康危機管理研究機構(旧・国立感染症研究所)の資料によると、患者さんや菌を持っている人の便、それに汚れた手指・食べもの・水などを通してうつります
- 赤痢菌は胃酸に強く、10〜100個ほどの少ない菌でも感染します。そのため、人から人へうつりやすいのが特徴です
- 日本では感染症法の3類感染症で、診断した医師はすぐに保健所に届け出ることになっています

メル美100個くらいでうつるなんて、ほんの少しの汚れでも危ないんだね。
性行為でうつるのは、なぜ?
赤痢菌は便の中にいます。そのため、便が口に入る可能性のある行為でうつることがあります。
- 国立健康危機管理研究機構の病原微生物検出情報(IASR、2022年)では、性行為では、肛門をなめることで直接口に入るほか、肛門のまわりや、肛門性交で入れた性器にふれた手指を通して口に入る可能性が考えられています
- 米国CDCは、オーラルセックス、アナルセックス、肛門をなめる・指を入れるなどの直接の接触のほか、セックストイ、使ったコンドーム、洗浄の道具などを通してもうつりうるとしています
- CDCによると、男性と性行為をする男性でかかる人が多いものの、便にふれる可能性のある性行為なら、だれでもリスクがあります
日本と海外の状況
- IASR(2022年)によると、日本の届出は2010〜2021年に計1,970例、平均で年164例。推定感染地は58%が国外で、インド、インドネシア、フィリピンの順に多くなっています
- 一方、国内での感染もあります。2011年には、都内の病院でHIVに感染している男性と性行為をする男性5人に、同じタイプの赤痢菌(ソンネ菌)の感染が見つかりました。同じ時期に全国で、遺伝子の型が同じか似ている菌が39例から見つかっています(うち男性38例)
- 英国保健安全保障庁(UKHSA)の報告(2026年3月)によると、イングランドでは、性的な接触で広がった可能性のある赤痢菌の診断が、2023年2,052件、2024年2,318件、2025年2,560件と増えています

プレ男イギリスでは、毎年2,000件以上も…。旅行に行かなくても、うつることがあるんだ。
症状
- 厚生労働省の届出基準によると、潜伏期は1〜5日(大多数は3日以内)
- 発熱、下痢、腹痛、しぶり腹(便意は強いのに、なかなか出ない)、うみや血の混じった便などが起こります
- ただし近年は、軽い下痢だけだったり、症状がなかったりする人も多いとされています。日本で多いソンネ菌は、症状が軽いことが多いタイプです
- CDCは、症状として血の混じった下痢や、3日以上続く下痢をあげ、こうした症状があって具合がとても悪いときは、医師に相談するようすすめています
血の混じった便は、アメーバ赤痢など、ほかの病気でも起こります。肛門の痛みやうみが中心のときは、直腸炎の記事も見てください。
検査と治療
- 便の検査で、赤痢菌が見つかれば診断がつきます
- 診察のときは、性行為のことも伝えてください。IASRは、医師が性行為について問診し、感染源を確かめることが必要だとしています。言いにくいかもしれませんが、検査や薬を選ぶための大事な情報です
- 治療は、水分をしっかりとることと、抗菌薬です
- 強い下痢止めは使いません(国立健康危機管理研究機構の資料)。CDCも、下痢止めは症状を悪くすることがあるとしています。自己判断で市販の下痢止めを飲む前に、医師に相談しましょう
- CDCによると、軽い場合は抗菌薬なしでも5〜7日でよくなることが多いとされています。どの人に抗菌薬を使うかは、医師が判断します

赤痢菌は、薬が効きにくい菌が世界中で増えています。診察では、性行為のことも遠慮なく伝えてください。
薬が効きにくい菌が増えている
- UKHSAの報告では、2025年、男性と性行為をする男性とみられる人から見つかった菌のうち、ソンネ菌の86%、フレクスナー菌の94%が、複数の薬に耐性でした。ソンネ菌の半分以上は、主に使われる3種類の薬すべてに耐性の目印を持つ「広範囲薬剤耐性(XDR)」でした
- IASR(2022年)も、米国・台湾・オーストラリアの報告から、世界各地の男性と性行為をする男性の間で、複数の薬が効きにくいソンネ菌が広がっている可能性を指摘しています
- そのため、菌を培養して、どの薬が効くかを調べる検査(薬剤感受性検査)をしたうえで、薬を選ぶことが大切です
- 薬を出されたら、よくなっても自己判断でやめず、指示どおりに飲みきりましょう(CDC)
うつさない・うつらないために
CDCは、次のことをすすめています。
- セックスの前後に、手・性器・肛門を洗う
- 下痢をしているときは、セックスをしない
- アナルセックスやオーラルセックス(肛門をなめる行為も)では、コンドームやデンタルダムを使う
赤痢菌に感染していると言われたら:
- 下痢が治まってから、少なくとも2週間はセックスをしない(CDC)
- こまめに手を洗う。とくにトイレのあと、食べものを準備する前
- 具合が悪い間は、ほかの人の食事を作らない。プールで泳がない
- 日本では、細菌性赤痢と診断されると、飲食物に直接ふれる仕事は、菌がいなくなるまで就業制限の対象になります(感染症法、厚生労働省の通知)。仕事のことは、保健所の指示にしたがってください

メル美症状がおさまっても、2週間はお休みなんだね。お互いのために覚えておこう。
同じように、便を通して性行為でうつる病気には、A型肝炎もあります。ワクチンで防げるので、A型肝炎ワクチンの記事も見てください。ほかの性感染症の検査については、性感染症の検査の受け方にまとめています。
まとめ
- 細菌性赤痢は、赤痢菌が口から入ってうつる腸の病気。10〜100個の少ない菌でもうつる
- 海外でかかることが多いが、便が口に入る可能性のある性行為でもうつる。英国では性的な接触による診断が2025年に2,560件
- 症状は発熱、下痢、腹痛、しぶり腹、血やうみの混じった便。軽い下痢だけ、症状なしのことも
- 薬が効きにくい菌が増えている。診察では性行為のことも伝える。強い下痢止めは使わない
- 感染したら、下痢が治まって2週間はセックスをお休み。手洗いを
参考文献
- 国立健康危機管理研究機構. 細菌性赤痢(詳細版)(IDWR 2002年第8号). https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/shigellosis/detail/index.html (閲覧日:2026年10月4日)
- 国立健康危機管理研究機構. 【特集】細菌性赤痢 2010〜2021年. 病原微生物検出情報(IASR) 2022;43(2):25-26. https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/dysentery-m/dysentery-iasrtpc/10975-504t.html (閲覧日:2026年10月4日)
- 白野倫徳. MSM(men who have sex with men)における細菌性赤痢. 病原微生物検出情報(IASR) 2022;43(2):34-35. https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2562-related-articles/related-articles-504/10981-504r06.html (閲覧日:2026年10月4日)
- 厚生労働省. 細菌性赤痢 感染症法に基づく医師及び獣医師の届出. https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-03-02.html (閲覧日:2026年10月4日)
- 厚生労働省. 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における健康診断、就業制限及び入院の取扱いについて」の一部改正について(平成28年4月1日). https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc1830&dataType=1&pageNo=1 (閲覧日:2026年10月4日)
- Centers for Disease Control and Prevention. About Shigella Infection. https://www.cdc.gov/shigella/about/index.html (閲覧日:2026年10月4日)
- Centers for Disease Control and Prevention. Shigella Infection Among Gay, Bisexual, and Other Men Who Have Sex with Men(fact sheet, 2022). https://www.cdc.gov/shigella/pdf/msm-factsheet-508.pdf (閲覧日:2026年10月4日)
- UK Health Security Agency. Sexually transmitted Shigella spp. in England: 2016 to 2025(2026年3月26日公表). https://www.gov.uk/government/publications/non-travel-associated-shigella-infections/sexually-transmitted-shigella-spp-in-england-2016-to-2025 (閲覧日:2026年10月4日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
