
プレ男先輩が狩猟を始めて、イノシシとシカの肉をもらったんだ。新鮮だから刺身でいけるって言われたんだけど…。

メル美ジビエって、生で食べても大丈夫なのかな。豚のレバ刺しも、昔はお店にあったって聞くけど。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、E型肝炎の話です。厚生労働省の「E型肝炎ウイルスの感染事例・E型肝炎Q&A」と、国立感染症研究所(現・国立健康危機管理研究機構)の病原微生物検出情報(IASR)「特集 E型肝炎 2014〜2021年」(2021年12月)をもとにまとめました。
どんな病気?
- E型肝炎ウイルス(HEV)による急性肝炎で、まれに劇症肝炎になります。慢性化はしません
- 主に口からうつります(汚染された食べもの・水など)。くしゃみや接触で人から人へうつった報告はありませんが、輸血でうつった例はあります
- 豚、シカ、イノシシなどの動物から、ヒトのHEVによく似たウイルスが見つかっていて、人と動物の共通の感染症と考えられています
症状:平均6週間後に、発熱・吐き気・黄疸
- 感染しても症状が出ないことが多いとされています(とくに若い人)
- 肝炎を発症すると、平均6週間(2〜9週間)の潜伏期のあと、発熱、吐き気・腹痛などの胃腸の症状、肝臓のはれ、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などが出ます
- 大半は安静で治りますが、まれに劇症化することがあります
- 妊娠後期の女性がかかると劇症化しやすいという報告があります。また、高齢者ほど重くなりやすいとされています
- 治療は、いまのところ急性期の症状をやわらげる治療だけです。劇症化した場合は、血漿交換や肝移植などの特殊な治療が必要になります
「中高年男性の病気」
- 届出は、2005〜2011年は年100例以下でしたが、2015年以降は年200例超、2018年以降は年400例超に増えています(2014年1月〜2021年9月で2,770例)
- 国内での感染が88%。国内例では40〜70代の男性が、報告全体の57%を占めます
- 推定感染経路が書かれていた国内1,035例では、豚(肉やレバー)の喫食が41%、イノシシが10%、シカが9%でした
- 厚生労働省のQ&Aでも、日本やフランスの調査から、E型肝炎は「中高年男性の病気(平均年齢約50歳、男女比約4対1)」といえるとしています

プレ男年400例以上!しかも中高年の男の人に多いんだ。焼き肉好きの父さんにも伝えなきゃ。
実際にあった例
- 2003年4月、兵庫県で、冷凍保存されていた野生のシカ肉を生で食べた2家族7人のうち4人が、6〜7週間後にE型肝炎を発症しました。患者とシカ肉の残りから見つかったウイルスの遺伝子がほぼ一致し、特定の食べものとE型肝炎の直接の関係が確かめられた世界初の例とされています。シカ肉を食べなかった、またはごく少ししか食べなかった家族は感染しませんでした
- 北海道の食料品店で売られていた包装済みの生の豚レバー363件のうち7件(1.9%)からHEVの遺伝子が見つかったという報告があります(2003年)
- 野生のイノシシでは、地域によって10〜50%に抗体があり、5〜10%の血液や肝臓からHEVの遺伝子が見つかっています。イノシシ肉から人への感染も確かめられています
予防:豚肉もジビエも、中心部まで加熱
- 豚レバーをはじめとする豚肉は、生で食べない。加熱するときは中心部まで火が通るよう十分に
- 十分に加熱すれば、ウイルスが残っていても感染性を失うので、豚由来の食品を食べて感染する危険はないとされています。ハム・ソーセージなどの加熱済みの食品も、加工のときの加熱(63℃で30分と同等以上)で問題ないとされています
- シカやイノシシなどの野生動物の肉(ジビエ)は、生で食べない。野生動物の肉の生食は、E型肝炎のほか、腸管出血性大腸菌感染症、寄生虫の病気(トリヒナ症・肺吸虫症)などの原因にもなっています
- 妊婦、高齢者、B型・C型肝炎ウイルスに持続感染している人は、感染すると劇症肝炎で亡くなる率が高いという研究結果があり、とくに野生動物の肉の生食を避けるべきとされています
- 生の豚肉・豚レバーなどの内臓を売ったり出したりすることは、加熱用を除いて禁止されています(厚生労働省「腸管出血性大腸菌Q&A」)
- 予防には、手洗いと飲食物の加熱が大切です

豚肉やシカ・イノシシなどのジビエは、新鮮でも生で食べず、中心部まで十分に加熱しましょう。妊娠中の人や高齢の人は、とくに注意が必要です。
- 牛肉やハンバーグの加熱不足でうつる細菌はO157など腸管出血性大腸菌、鶏肉はカンピロバクター、性行為でもうつる肝炎はA型肝炎、B型肝炎の記事もどうぞ

プレ男先輩にもらった肉は、しっかり火を通してジビエ鍋にするよ。
まとめ
- E型肝炎は、HEVによる急性肝炎。まれに劇症化。妊婦・高齢者は重くなりやすい
- 届出は2018年以降、年400例超。国内例は40〜70代の男性が多い
- 推定感染経路は、豚(41%)、イノシシ(10%)、シカ(9%)
- 豚肉・豚レバー、ジビエは生で食べない。中心部まで十分に加熱
- 生の豚肉・内臓の提供は禁止されている
参考文献
- 厚生労働省. E型肝炎ウイルスの感染事例・E型肝炎Q&A. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/hepatitis-e-virus_qa.html (閲覧日:2026年10月4日)
- 国立感染症研究所. 病原微生物検出情報(IASR)42(12), 2021【特集】E型肝炎 2014〜2021年(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイトに掲載). https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/hepatitis-e-m/hepatitis-e-iasrtpc/10837-502t.html (閲覧日:2026年10月4日)
- 厚生労働省. 腸管出血性大腸菌Q&A(最終改訂:令和3年12月17日). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177609.html (閲覧日:2026年10月4日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。