
メル美子どものころの性被害を、大人になってやっと人に話せたっていう人がいた。何年もたってからでも、訴えることはできるのかな。

プレ男「時効」があるんだよね。警察に届けるのと、お金を請求するのとで、ちがうのかな。
今回は、性被害と時効です。刑事訴訟法・民法の条文と改正法の附則(e-Gov法令検索)、法務省「性犯罪関係の法改正等 Q&A」と改正法の概要、令和7年版犯罪白書で確かめました。
この記事は一般的な解説で、法律相談の代わりにはなりません。時効がいつ完成するかは、事件ごとの事情で変わります。「もう遅いかも」と思っても、まずは #8891(ワンストップ支援センター)や #8103(警察の性犯罪被害相談電話)、弁護士に相談してください。
2つの時効:刑事と民事
| 刑事(罪に問う) | 民事(損害賠償を求める) | |
|---|---|---|
| 何の時効? | 公訴時効:検察官が起訴できる期限 | 消滅時効:加害者に賠償を請求できる期限 |
| 決まり | 刑事訴訟法250条 | 民法724条・724条の2 |
| だれが動く? | 警察・検察(被害者は被害届・告訴などで申告する) | 被害者本人(弁護士に依頼することもできる) |
被害届と告訴のちがいは、「被害届」と「告訴」はどうちがう?で。
刑事:性犯罪の公訴時効は5年延びた
刑事訴訟法250条3項は、性犯罪について、ほかの罪より長い公訴時効を定めています。
| 罪 | 公訴時効 | 改正前 |
|---|---|---|
| 不同意わいせつ等致傷(人を負傷させたとき)、強盗・不同意性交等 など | 20年 | 15年 |
| 不同意性交等、監護者性交等(未遂を含む) | 15年 | 10年 |
| 不同意わいせつ、監護者わいせつ(未遂を含む)、児童福祉法60条1項の罪(自己を相手方として淫行をさせる行為) | 12年 | 7年 |
(改正前の年数は、法務省の改正法の概要による)
- 法務省のQ&A(Q13)は、性犯罪は、恥ずかしいという感情や自分が悪いという感情で被害申告が難しいこと、周りの人も被害に気づきにくいことから、ほかの犯罪と比べて被害が表に出にくく、刑事訴追が事実上可能になる前に公訴時効が完成してしまうことがある、と延長の理由を説明しています
- 延長の幅を5年にしたのは、内閣府の調査で、無理やり性交等をされて誰かに相談した人が、被害から相談までにかかった期間をふまえたものです(Q14)
- 令和7年版犯罪白書によると、この延長は2023年6月23日に施行されました

プレ男話せるようになるまで時間がかかるから、時効を延ばしたんだね。
被害のとき18歳未満なら、さらに延びる
刑事訴訟法250条4項:被害者が犯罪行為が終わった時に18歳未満である場合、時効は、250条3項の期間に、犯罪行為が終わった時から被害者が18歳に達する日までの期間を加えた期間で完成する。
- 法務省の例:12歳のときに不同意性交等罪の被害にあった人は、15年に、18歳になる日までの期間(6年)が加わり、公訴時効はその人が33歳に達する日(33歳の誕生日の前日)まで完成しません(Q13、改正法の概要)
改正前の事件はどうなる?
- 改正法(令和5年法律第66号)の附則5条は、延長後の規定は、施行の際すでに公訴時効が完成している罪には適用しない一方、施行の際公訴時効が完成していない罪にも適用すると定めています
- つまり、2023年6月23日の時点でまだ時効が完成していなかった事件は、延びた期間が使われます

メル美改正より前の被害でも、その時点で時効が来ていなければ、延びた期間になるんだ。
告訴がなくても起訴できる(2017年から)
- 法務省「刑法の一部を改正する法律の概要(平成29年7月13日施行)」によると、2017年の改正で、強姦罪・準強姦罪・強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪を親告罪とする規定が削除され、非親告罪になりました。わいせつ目的・結婚目的の略取・誘拐罪なども非親告罪になりました
- 令和7年版犯罪白書は、監護者わいせつ・監護者性交等も、改正時に非親告罪とされたと説明しています
- 親告罪は、被害者などの告訴がなければ起訴できない罪です。いまの性犯罪は、告訴がなくても起訴できます
- 刑事裁判で被害者を守るしくみ(ついたて、ビデオリンク、氏名の秘匿など)は、性犯罪の被害を届けたら、裁判で何が起きる?で
民事:損害賠償を請求できる期間
加害者に慰謝料などの損害賠償を求めるのは、刑事とは別の、民事の手続です。
| 条文 | 時効 |
|---|---|
| 民法724条1号 | 被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき |
| 民法724条の2 | 人の生命又は身体を害する不法行為の場合、上の3年は5年になる |
| 民法724条2号 | 不法行為の時から20年間行使しないとき |
- 民法159条:夫婦の一方が他の一方に対して持つ権利は、婚姻の解消の時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しません
- 民法158条2項:未成年者が、その財産を管理する父・母などに対して権利を持つときは、その未成年者が行為能力者となった時(成年になった時)などから6か月を経過するまでの間は、時効は完成しません
- 自分のケースがどの条文にあたり、いつ時効になるかは、事情によって変わります。弁護士に相談してください

性犯罪の公訴時効は、不同意性交等罪で15年、不同意わいせつ罪で12年です。被害のときに18歳未満だった場合は、18歳になるまでの期間が加わります。
刑事裁判の中で賠償を求める方法も
- 不同意性交等・不同意わいせつ・監護者性交等などの事件では、刑事裁判をしている裁判所に、損害賠償命令を申し立てることができます(申立手数料2,000円。法務省)。くわしくは刑事裁判の中で、加害者に損害賠償を求める「損害賠償命令」で
- 医療費などを国が給付する制度は、犯罪被害給付制度と、警察の公費負担で
相談先
- 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター #8891(内閣府男女共同参画局)
- 警察の性犯罪被害相談電話 #8103(警察庁)
- 弁護士の支援は、法テラス(サポートダイヤル 0570-078374)へ。性犯罪などの被害者が、法テラスの費用負担で弁護士の継続的な援助を受けられる「犯罪被害者等支援弁護士制度」もあります(法務省)
まとめ
- 性犯罪の公訴時効は2023年6月23日に5年延長:不同意性交等・監護者性交等は15年、不同意わいせつ・監護者わいせつは12年、致傷などは20年
- 被害時18歳未満なら、18歳になるまでの期間を加算(12歳の被害なら33歳に達する日まで)
- 施行の時点で時効が完成していなかった事件にも、延びた期間が使われる
- 2017年から性犯罪は非親告罪。告訴がなくても起訴できる
- 民事の損害賠償は、知った時から3年(生命・身体の侵害は5年)、不法行為の時から20年
参考文献
- 刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第250条、附則(令和5年6月23日法律第66号)第1条・第5条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 (閲覧日:2026年10月22日)
- 民法(明治29年法律第89号)第158条、第159条、第724条、第724条の2. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (閲覧日:2026年10月22日)
- 法務省. 性犯罪関係の法改正等 Q&A(Q13・Q14). https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 法務省. 改正法等の概要(詳細版). https://www.moj.go.jp/content/001417852.pdf (閲覧日:2026年10月22日)
- 法務省. 刑法の一部を改正する法律の概要(平成29年7月13日施行). https://www.moj.go.jp/content/001323985.pdf (閲覧日:2026年10月22日)
- 法務省. 令和7年版犯罪白書 第2編第1章1. https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/72/nfm/n72_2_2_1_0_1.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 法務省. 令和7年版犯罪白書 第1編第1章第2節4. https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/72/nfm/n72_2_1_1_2_4.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 法務省. 犯罪被害者の方々へ 5.公判段階での被害者支援. https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji11-4.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 法務省. 犯罪被害者等支援弁護士制度. https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji07_00049.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 内閣府男女共同参画局. 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター. https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 警察庁. 性犯罪被害相談電話全国共通番号「#8103」. https://www.npa.go.jp/higaisya/seihanzai/seihanzai.html (閲覧日:2026年10月22日)
- 厚生労働省. その他の相談先(法テラス・サポートダイヤル). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_sonota.html (閲覧日:2026年10月22日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。